三人目の刺客?
新年明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。
新年、初投稿です。
2015/6/30修正
前話と小説本文が何故か、被るバグ?が発生した為、修正しました。
ご迷惑おかけしました。
「……失礼。シュウ君は選定された勇者では?」
源呼吸を使い配膳した食事を取りながら逸る気持ちを抑える。
未だ必要な情報は揃っていない。
確証も無い。
……先ずは情報を共有し、勇者の情報を聞き出す。
「ええ、召喚魔法陣によって選定された勇者です。」
サラサ嬢は事もなしに語る。
ロマリアが召喚した…と。
いや、源呼吸で平静な状態を保てているが淡々と怒りが沸き腸が煮えくり返る。
頭だけが驚くほど冷静だ。
落ち着け……この人が召喚した訳では無い。
ロマリアの勇者が千年前と選定方法も異なっている。
本来、敵として召喚される異世界人の枠から味方になる可能性の高い人材を狙って召喚する。
そう考えるなら悪い手では無い。
どの道、召喚され好き勝手に暴れて世界を混乱されるのなら、召喚魔法で此方の自陣に奪い。
権力の保護下に起き、制御、管理した方が未だマシだ。
惜しむらくは、その座標を伝えた人間が黒幕の一派の者という疑惑がある事だ。
現に勇者は心神喪失状態で俺の敵となって襲ってきている。
俺に遠まわしに接触をはかりに来たこの女性は敵では無い……筈だ。
「ゼンという神官は何故、座標を知っていたのですか?」
「本人は長い研究の末、偶然に発見できたと言っています。
ですが彼の経歴からは召喚魔法に精通する知識や技術があるとは思えません。
始めは遺跡から偶然古文書かマジックアイテムを発掘したか誰かの研究内容を奪ったと思うのですが……恐らくは。」
やはり限りなく黒に近いグレーと。
古文書や遺跡から発掘できるならマリアか俺がとっくの昔に見つけている。
俺とマリアは文字が読めなくても遺跡、遺品に込められた情報を完全に読み取る事ができる。
転移魔法で世界中探し回り海底の古代遺跡の石碑にも記されていなかったのだ。
マリアもブリタニアは愚か大陸を相当虱潰しに探し回った。
結果、召喚と転移に関する技術、魔法の習得はできた。
だが送還、転移先の位置を示す座標は終ぞ手に入らなかった。
それを偶然見つけたとか言ってるそいつの証言は明らかに嘘だ。
異世界人からは座標を手に入れられない。
黒幕がそんな座標をこの世に残す真似はしない。
偶然に見せかけるか、お告げや天啓、預言や傀儡を使って伝えるはずだ。
ゼンなる召喚者が傀儡か本人かは知らんが、
偶然を装ってでも召喚魔法の座標を知らせたかったのだろう。
だけど何故、態々名乗って召喚する?
自国を疑わない勇者と秘密主義に鉄の教義を守るロマリアなら大丈夫だと慢心したのか?
他の異世界人は誰々が召喚したと名乗る奴はいない。
他の召喚士も自分たちの手がかりになる様な愚を冒す奴を放置はしないだろう。
いや、とりあえず座標が記されているのだ。
なら一度、ゼンという神官を捕らえるか、魔法陣を押さえる必要があるな。
「勇者召喚魔法陣の概要は?」
「術式は召喚対象の勇者としての条件にあう者を検索、召喚するといったものですね。」
ふむ……普通の召喚魔法と変わらない。
通常の召喚魔法も召喚するだけなら召喚対象は術者の力量に関係ない。
条件を指定したり生贄、触媒を揃えば召喚は可能だ。
自分より魔力の高い者は本来召喚出来ないが、
魔獣や悪魔は人間の肉や魂を求めて態と召喚に応じて術者を喰らに来たり魂を奪いに来る。
魔力を餌に誘き出す、釣りの様な者だ。
故に召喚フィッシュしてから契約出来る釣り上げる為の実力がなければいけない。
契約方法も屈服、支配、和解など手段は多種多様だ。
武を示して屈服したり
朝チュンしたり……
魔道書グリモアを使って弱みを握ったり。
神殿の入り口を塞いで兵糧攻めにして脅迫したり…
野球拳したり。
因みにマリアは能力上グリモアも要らずで弱みを握れる。
悪魔や魔獣のコミュニケーションも取れる。
屈服させるだけの術者だ。
悪魔使いの称号は伊達では無い。
「何分、異世界ですから名指しで指定する事が出来ませんし触媒も殆ど使えません。
その分、容姿、性格、能力、魔力量など細かい選定基準がありますね。
性格に難が無く能力が高い勇者としての適正が高い人間を召喚したそうです。」
「へぇ……その集大成が彼だと?」
「ええ、結果から見ればヤマモト殿は神剣に選定され、勇者となりました。」
ただでさえ強力な異世界人が勇者化して更に強力な存在になったと。
しかも性格はいたって温厚で扱い易い。
なるほど、勇者は他の七英雄に比べて好戦的では無い。
一度、ガリアにやって来て俺の事を調査に来て敵対する必要は無いと判断し撤退したそうだ。
良心もあるし、モラルも高い。
正に勇者なのだろう。
現在も学校での授業も真面目に受けているし、心身に異常をきたしているようだが、表面上は問題無い様にも見える。
「実力だけ見れば、死神や戦女神も候補に挙がったのでしょうけど……」
「ああ…俺の場合、悪役顔ですもんね」
言葉を濁すサラサ嬢に言いにくい理由をズバッと言う。
自分の事だしね。
闇の勇者という括りらしいが、魔王と云われた方がピンと来ると自分でも思っている。
「魔王召喚ならアキラさんが召喚されてましたね」
「あっはっはっは」
自虐ネタなのにリンが止めを刺しに来る。
それ以上はいけない。
くそぉ……
全てが終わったらその魔法陣、絶対に処分してやる。
でもシュウ、ルーやイザナミ、カグヤ、クレア、サラサ嬢も容姿は整っている。
性格はともかく、能力もある為、勇者と謂われれば納得する印象がある。
勇者にとっては必要な要素なのだろう。
俺は容姿以外に疑い深い所があるし、扱いにくいと判断されたのだろう。
そう思い込むことにする。
カグヤ?
あれは御し切れない性格だったからだろ。
制御できる奴がいたら、そいつこそ勇者だな。
あれ?
じゃあ帝国の宰相ユイファンって勇者か?
◆◆◆◆◆
勇者の適正とかは、どうでもいい。
交渉のお時間です。
「今回の騒動と密約を交わす為の情報は伝えました。
アキラ様からも話していただけません?」
「確かに女性だけに話させるもの……どうかと思いますしね。」
リンさん?
貴女はさっきから誰の味方なんですか?
まぁいいけど。
確かに彼女達の密約、同盟に加え、召喚者の情報の対価は大きい。
正におつりが来る情報だった。
切り札を序盤から二枚も切るだけはある。
この札がブラフの可能性もある。
確証を得ようにもこの二人は【精神感応】と【絶対防御】という七英雄に匹敵する固有スキルを持つ。
能力の字面からもマリアとヨッシーの思念派や読心は通じないだろう。
彼女達が召喚者の支配が及んでいない事がそれを裏付けている。
故にこの場にあの二人がいても確証は取れない。
クレアの『神眼』は規格外だから読めるだろうけど…
彼女達に関わらせる気は無い。
俺が相対し、判断せねばなるまい。
冒険しないと宝も手に入らない。
難問から逃げても人任せばかりでは駄目だ。
「何が望みですか?」
その言葉に笑みを深くする羊飼いサラサ
傍からみたら見蕩れる笑顔だ。
だがこの世界に来て俺もこの手の女性の笑顔は見てきた。
眼前の女性が子羊の様な純朴な者ではない。
あれは獲物を目の前にした捕食者か暗殺者の笑みだ。
殺意や欲望を隠す笑顔の仮面。
彼女の来歴と背景からも後者だとわかる。
本当にロマリアは聖人や勇者の選定基準を改めるべきだな。
でも裏世界で伸し上ったルーを女神として基準にした宗教だからなぁ
彼女みたいなのが量産されてしまってるのは仕方ない事だな。
「そうですね~幽霊に会いたいというのもいいですが、
元気そうなので是は止めておきます。」
やはりセイラが生きている事は知っているか。
流石はロマリアの暗部の長だけはある。
でも彼女を帰せとは言わないようだ。
てっきりセイラと勇者を扱うものとばかりと思ったんだが。
何だ?
何が狙いだ?
「私と結婚してもらいましょうか♪」
・・・・世界が停止したかと思った。
―――はっ!?
どうやら悪い夢を見たようだ。
そうだな最近フラグやら何やらで疲れてたんだ。
これも勇者君の所為だな。
元いた世界に帰ってもギャルゲーには二度と手を出すまい。
「子作りでもいいですよ? 認知はして下さいね。」
ぎゃああああ 夢じゃない!!
眼前で頬を染めた羊飼いの聖女がいるーーー!!
ちょっと待って初対面の女性にフラグを立てた覚えは無いぞ!?
いや、確かに何か一本フラグが新たに立ってたけど!!
これか?
これの事だったのか?
判るかボケェェ!!初見殺しにも程があるわ!!
「ぶふーーーっ!?」
隣にいた護衛のタバサが時間差で飲んでいたワインを噴出した。
時がやっと動き出したのだろうか?
「へぇ?」
俺の隣のリンが鈴が鳴ったような声音を出す。
怖くて隣を振り向けません。
「確かアキラ様は戦争を回避するよう動いているのですね?」
「……そうですが…何故、俺が」
言葉を紡ぎ反論を試みるが畳み掛けるようにサラサは喋る。
「ガリアの王子は消息不明とお聞きしていますが?」
そうだった!!
あの放蕩王子は内乱の際にそういう扱いを受けて内々にルーが始末したんだ!!
でも、彼らを生かす訳にもいかなかったらしい。
いやそこはいい。
問題はガリアを実質支配してる王家、公爵家、クラリスやアリシアの実家には嫡男が居ない。
加えて世界的に同姓婚の法律が認められていない。
そんで何かと世界の為に火消しを行ないつつ
騒動の中心人物且つガリア王家とは一定の距離を保つ方針をとり、
ガリアの英雄である俺に白羽の矢(但し血塗れ)ならぬフラグが立った訳ですか?
何とか恐怖と殺気とプレッシャーに耐えながらもその解答に到るほど思考が加速する。
なんだかこんな時に限って過去最高速度で頭が回転する事に複雑な思いをする反面、
今日まで生き残ってきた俺の経験からこの調子でこの最悪の状況を打破する手を思いつこうと悪あがきを続ける。
諦めたら、詰む!!
「戦争を回避する最も有効な手と思いますし……ロマリアと戦わずに済む解決策でしょう? 正に無血の道ですよ。」
いや、血を見るから!!
その道はバージンロードじゃねえ!!
主に俺の血で真っ赤に塗れた道だから!!
行き先は勿論墓場だ。
二重の意味で!!
確かに戦争程、被害は無いけどさぁ!!
被害が全部、俺に行くよね!?
「子供達の笑顔を守れますし、大戦の大儀は失われます。異議を申し立てる者も居るでしょうが、ロマリアの方は内々で処分します。]
処分って。
ロマリアの闇も怖いっす。
宗教、怖い。
「他の女性方も丸々囲えば問題ないかと……ここは妻の器の見せ所かと…必要な時はお力をお借りしますけど。」
やばい、もうこの女、良妻気取りだ。
彼女を見てると、心臓がバクバク音を立てる。
動悸が激しい。
もしかしてこれは……恋?
いいえ、これは恐怖です。
「丁度、個室ですからベッドもありますし……何なら今からでも?」
「それ以上はいけない」
俺の隣と斜向かいから兇悪な殺気が向けられる。
タバサはブツブツと「殺す、やはり殺す」と呪詛を発している。
それでいいのか神官!?
リンは笑みを浮かべたまま何も言わないが、それが余計に恐怖心を煽る。
この状況では貴女の素敵な笑顔は凶器ですね。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴ
カタカタと机の上の食器が揺れだす。
グラスの中のワインにも波紋が出来てる。
何故か外の黄泉の入り口に転移した部屋全体
いや、ダンジョン全体が震えている。
あるぇ~可笑しいなぁ
地震なんて起きない異空間なのに振動が来ていますよ?
まるで主の怒りを表すように震えてらっしゃいますよ?
突然の爆弾投下に俺も思考が追いつかない。
何故こんな事に?
密約とか同盟を交わしに来たんだよね。
世界平和の為に協力しようと場所を設けたんだよね。
何で婚約の話?
ラブ&ピースな結末だから?
世界という十の為に俺という一が犠牲になるの?
言葉にすると劇的だが、内容は最悪だ。
世界の為に痴情の縺れで死ぬとか泣けてくる。
それとも彼女こそ三人目の刺客なのか?
召喚者の罠か!!
この上なく効果的だと宣言して置こう!!
――だから落ち着け。源呼吸が乱れてる。
「………フゥーーー」
深く息を吐き、呼吸を整える。
何故かこの女には終始、自分のペースを乱される。
カグヤに通じる危険な何かを感じる。
俺の全スキル、全感覚が最大音量で警告音を鳴らしている。
【フラグが立ちました。】
挙句だ。
本来、俺を殺す為に掛けられた筈の敵性スキル【旗製作】まで俺に死の警告をする為に起動する始末。
その時、俺は思った。
――もうフラグはうんざりだ。
同時に覚悟も決めた。
このフラグ、全力で叩き折らねばなるまい!!
俺の明日の為に!!
据え膳食わねば?
毒を食らわば皿までの間違いだろう?
アキラ
現在フラグ数……3




