明確な
固有スキル『旗製作』
運命や因果律を操作する勇者に許された固有スキル。
ルーが持つ短剣『回答者』と同じ系統の能力である。
このスキルが俺の幻聴の正体であり、勇者側が俺に起したアクションだ。
新手のスタンド使いの攻撃かよ。
ルー曰く、勇者は強力な運命に守られている。
そして他人の運命を変え、歴史を変える力を持つのが本質らしい。
本来、死すべき運命にある命を救ったりも出来るらしい。
人類は魔族に滅ぼされるという運命があれば、勇者が出現、召喚される。
結果、魔王の敗北と人類が生存するという運命に改竄される力。
総じて運命を変える為の条件が満たされる事を俺達の世界では『フラグが立つ』という。
月やお子様ランチに旗を立てるのとは意味合いが異なる。
この場合、特定の動作をさせる為の条件付けを指すコンピュータ用語だろう。
またそれから派生した発生条件が確定した時の言葉。
たとえばギャルゲーをした時、A子が登場するという条件を満たすとハッピーエンド
A子が登場しないと条件を満たせず、バッドエンドと未来が分岐する。
『物語の複線』『お約束』『お決まりのパターン』『使い古されたストーリー展開』
生存フラグ、死亡フラグ、恋愛フラグが立つという用語はゲーム攻略において業界では有名な熟語だ。
俺の言動がフラグを立てる条件を満たしたらしい。
つまり授業での俺の発言を振り返ると。
フラグ1『第二の裏技は見聞きするだけでは習得できないと発言する。』
フラグ2『クレア(黒)に暗に俺には勝てないと勝利宣言をする。』
この二つのどちらかである。
成功と失敗 勝利と敗北
しかしこの世界は現実だ。
決まりきった未来など存在しない。
そして、ゲームと違ってNPCは存在しない。
全員、魂を持ち、相談する事が出来る。
そう、俺には頼れる仲間が――
『――フラグが立ちました。』
……うるさいな、この幻聴。
……そうそうに折るか。
◆◆◆◆◆
「運命とは自身の手で切り開く事だ。」
「野球拳の時に私に協力を申し出た男の台詞とは思えんな。」
学校ではクール、プライベートではデレのルーの言葉が痛い。
「いや、あれは緊急避難だから。」
あの夏、勝たねば成らない戦いがあったのだ。
でも、分が悪いから話を変えよう。
「それで勇者の事だけど……」
「前にも言ったが勇者は運命を改竄する存在だ。
条件さえ揃えば、強固な運命に守られたアキラを殺す事も出来る。」
「……よく二度も勝てたな俺」
「運命の改竄や不死身と言われても生存率が僅かでもあれば生き残るという事だ。回避不可能な死は回避できない。」
「……へぇ」
「それで解呪はしなくて良いのか?」
「必要無いよ、それよりどうやって俺を攻略するつもりなのか?が楽しみなだけ。」
そう言ってる間に授業の準備が終わる。
次の午前、最後の授業は体術訓練。
昼食前なので本格的には動かないが、事故で俺を殺せるのかどうかが楽しみだ。
直接、戦争しかけたら自国が危ない。
ならば、刺客か事故死で殺すという間接的な行動に出る。
そういう意味では俺の言動から死亡フラグを立たせ、事故死を演出させるならこれほど有効な手は無いだろう。
労せずにガリアの英雄を脱落させ、千年前のやり直しが出来るというい訳だろう。
◆◆◆◆◆
~グラウンド~
「さぁ アキラさん?早く、始めましょう? 鮮血と焔が舞う死亡遊戯を~♪」
狐の面を被り、準備体操を終えた生徒が俺に手を振っている。
傾国を超えて覇道の道を突き進む歩く死亡フラグが俺の前に立ちふさがっていた。
あぁ、戦闘民族使う訳ね?
そういや、いたな。
俺を殺せる可能性を持つ奴が一人。
おっけ。そういうことね。
だったら今、この場でフラグをぶち折る。
運命なんて簡単に変える事ができると勇者様に教えてやる。
「ふ、面白い。教えてやるよ。この授業が終わったら―俺たちが結婚するという事をな!!」
その瞬間、世界は確かに静止した。
そして時は動き出す。
「へぇ~?」
その言葉を聴いた時の俺の知人たちのコメントを此処に追記する。
「死に急ぐな!アキ!!」
「馬鹿な!なべやん、死ぬ気か!?」
「うぇぇ!? 死ぬなら私を帰すという遣り残した事があるっすよね!?」
「あらら~、アキラったら……アトデオハナシガアリマス」
「勿論、私の事だろうな?アキラ?」
「師匠! 未だ教わりたい事が山ほどあるのに!!」
心配してくれたのが男友達二名と弟子一名という事実に泣きそうだ。
時間が動き出したと同時に慌てたような声が俺の脳内で叫びだす。
【―フラグが立ちました。】
【―フラグが立ちました。】
【―フラグが立ちました。】
【―フラグが立ちました。】
【―フラグが立ちました。】
【―フラグが立ちました。】
大音量で警告音の如く、アナウンスが起きる。
立ったフラグは死亡フラグ、僅かに恋愛フラグ。
しかし、死亡フラグには回避方法が存在する。
「行くぞ、大和撫子包丁の備えは十分か?」
「うふふ~アキラは私のモノです。ダレニモワタシマセンヨ~~」
殺気と熱気が交じり合う闘気を噴出する生徒。
「俺は不死身だ! 俺が欲しければ、恐れずして掛かって来い!!」
「イキマスヨ~?」
カグヤが空高く、飛び上がる。
そして、回転し、右足を此方に向けて物理法則を完全に無視し、赤熱しながら襲い掛かる。
この角度、狙う場所はお察しだ。
【―フラグが立ちました。――フラグフラグフラグフラグフラフラフラフラフラフラフフフフフフフフフフ―】
回避は不可能。
通常、俺の速度ではカグヤの攻撃は回避できない。
武器があれば別だが今は無手。
筋力、耐久、敏捷、魔力、運、全てを上回る相手に俺ができるのは覚悟を決める事。
【■■■■■■■■■―――――――――!!!】
フラグが立ちましたと不吉に囁く音声は何時しか壊れたテレビの様にノイズへと変わる。
もしフラグが視覚かすれば、それこそ無限の様に墓標の様に突き立っている事だろう。
しかしフラグは回収したり、回避するだけでは無い。
いや、見える。
幻覚だろうか
―おぞましくも黒い瘴気を放つ髑髏印の黒い旗が俺に何本も突き立っている。
そして死そのものが、俺の股間めがけて飛んで来る。
死を逃れても男の死は必定。
これが運命。
因果応報。
避けられない死。
【伊藤流・一夫多妻去せ―――】
後、一秒。
俺が男でいられるのは後、一秒。
しかし、刹那の時間があるだけでも俺には十分だ!!
【フラグクラッシャーァァァァ!!!!】
叫ぶ、そして変身する。
物理的に、男として、死ぬというのなら、そのフラグを先ずはぶち壊す!!
零秒
【精霊化ァァァァァァァァ!!!!】
カグヤの唸りを上げて天から与えられた罰の如き、蹴り。
しかしその蹴りは宝玉を捕らえ巣ことなく素通りする。
一瞬で俺の男の象徴は消え去り、物理攻撃力を無効化する霊体に体が置き換わる。
そしてすり抜け、大爆発が起こる。
グラウンドにクレーターが出来、生徒達の避難が終えた瞬間、確かに俺はその声を聞いた。
【――死亡フラグが全て破壊されました。】
そう、明確な死亡フラグはわざと立てる事で生存フラグへと変換できるのだ。
「あの夏、死亡フラグを全て叩き折ったもっとも長い一日に比べたら、温すぎるな。」
クレーターを覗き、戦慄している勇者一行を見て、俺はそう宣言した。
反撃は此処からだ。
◆◆◆◆◆
死亡フラグ
代表的なフラグで、このキャラは後に死亡するであろうというフラグ。
代表的な例として『この中に犯罪者がいるかもしれないのに一緒に寝れるか!俺は自分の部屋に戻るぞ!』など。
生存フラグ
死亡フラグに対するフラグ。
代表的な例として『間違ったら大勢の人が死ぬような状況での、時限爆弾の解体シーン』など。
恋愛フラグ
ゲームなどで相手の異性キャラと恋愛状態になる、ギャルゲーなどではそのままその相手とのエンディングとなるフラグ。○○ルートに入った、などということもある。ギャルゲーやエロゲーではこれを立てられないとバッドエンドとなる場合が多い。
代表的な例として『ひょんなことからの2人きりでの買い物』など。
フラグクラッシャー(フラグブレイカー)
立ったと思われるフラグを平気で無視するキャラがいた場合、フラグクラッシャーと呼ばれる。ゲームの主人公など死なないことが前提になっているキャラには基本的に使われない。
死亡フラグ→無効化
恋愛フラグ→女体化の為、一時的に無効化
生存フラグ→確立。




