生徒思い×学校思い×淡い想い。
2話更新してます。
異世界攻略のススメの雰囲気、忘れかけてました。(汗)
次回から会話多めで行きましょう。
~王立学園 理事長室〜
生徒が講義を受けている中、経理書類を相手に仕事をする一室。
理事長室の中に二人の男女がいた。
女性の名はリィーン・ド・マイヤール。
20代前半の若さでガリア王家縁の家系で俺の職場である学園の理事長を勤める才媛だ。
若さ故か、職務上備わる、威厳は余り無く、ギルドの受付嬢の様に向日葵の様な笑顔で職務に励んでいる。
一方は男の方は、猛禽類の様な鋭い目を持ち、泣いた子供が更に泣き出すような容姿をしている。
彼の年も女性と同じか、少し上くらいなのだが、その相貌の所為か若干ふけて見える。
傍から見れば若く学園経営者の女性と借金の取立て人だろう。
実際は理事長と講師という上司関係だしプライベートでの関係もそんなブラックなものでは無い。
自分を客観的にみても泣けてくるな。
この考えはよそう。
俺の目の前で理事長室の机にリィーンが腰掛け、俺が持ってきた企画書を向日葵の様な笑顔で目を通す。
内容は王立学園ダンジョンに配置する新しい魔物の配置、既存の魔物の弱点の変更、通路の変更、ボスの変更などだ。
「学園のダンジョンの更新ですか。」
「はい、そろそろ生徒達もあの鬼畜仕様にも慣れてきた頃ですから。」
ダンジョンとは俺がこの学園の地下に作った訓練用ダンジョンの事だ。
魔物や罠、宝箱の設置をし、勿論その中でもレベルが上がるように地下は魔素が充溢させている。
転移魔法陣と治癒魔法陣を到る箇所に貼り付けている為、生徒が致死量のダメージを受けたら瞬時に回復、出口に飛ばす安全設計だ。
レベルも上がり、ダンジョン内で手に入れたものは入り口の購買で換金もできる。
魔力の補給もダンジョンで訓練する学生から徴収できているし、地脈から魔力を汲み上げてもいるので暫く枯渇する事もない。
「あ、鬼畜仕様なのは、ご自覚されてたんですね。」
「人の気持ちになって作ったからこそ、あの出来です。」
そう……魔王と教師の気持ちになって作った力作のダンジョンだ。
ダンジョンの魔物や罠の情報が知れ渡ると魔素の供給が間に合わなくなるし、生徒の成長に偏りがでてしまう。
その為に『ハメ殺し!精神的苦痛!!疑心暗鬼!!!』をコンセプトにした難易度が鬼畜なダンジョンが完成した。
だって死なないからって安全にダンジョンに挑めるなんて幻想
ぶち壊すに決まってるジャン?
大体攻略前提のダンジョンはダメでしょ。
天然のダンジョンは人や魔物をアイテムや魔素でおびき寄せて捕食するのが常。
人が攻略を諦めず、人が物見遊山で集まりつつ魔力や生命力を集めるギリギリの境界線を狙って作らなくてはいけなかったのだ。
だから反省も後悔もしてない。
結果、幻想を打ち砕かれた生徒達はダンジョン攻略に燃えに燃えた。
そして一皮むけて成長した生徒たちは一致団結。
ダンジョンの情報を共有して攻略していった。
生徒達は大人の階段を上れたのだ。
成長してうれしい限りだ。
でもいいことばかりでもない。
中層まで攻略できる生徒が数人出てくるほど成長したのはうれしいが、上層で経験値と小遣い稼ぎを行なっている怠けた生徒が多数出てきている。
これはよろしくない。
そして俺はそんな怠けの幻想も打ち砕く。
この考えはリィーンも同意してくれた。
「ダンジョンの運営はこの学園の運営費にも当てていますから私としては協力を惜しみませんよ。」
「ありがとうございます。理事長」
答えの知ってる問題集を何度やっても、成長はしない。
多種多様な問題を解いていってこそ成績は向上する。
くっくっく。
生徒達よ、初心に強制的に返してくれるわ。
だが、生徒の成長の事も理由の一つだが目的はもう一つある。
むしろこっちが本命。
「それに勇者君の件もあるから……修練者もいる事だし他の生徒達より早くに最下層までたどり着けるでしょう。」
「アキラさん。やはり勇者と対決するのですか?」
心配そうに俺を見上げるリィーン女史。
うん、抱きしめたい。
「対決とは少し違いますよ。」
「は?」
うん、糸目の様に細めていたリィーンさんの目が少し開く。
「この学園に入学した以上、彼も守り導く筈の生徒でしょ。」
俺は教師だ。
生徒の相談にも乗るし、訓練にも付き合う。
今回もその延長上に過ぎない。
ちょっと悪巧みというか、そんな作戦もあるが使わないに越した事はない。
リィーンはその言葉に目から鱗が出た様な面持ちになる。
そして、再び向日葵の様な笑顔を俺に向けた。
「本当にアキラさんは勇者みたいな人ですね。」
「似合わないだろ?」
なんせ顔は明らかに魔王面だ。
最近は生徒達も馴れたが、最初はよく勘違いされた。
「いいえ、アキラさんは教師という聖職者で勇者です。 私は貴方がこの学校で教鞭を振るってくれてとても嬉しいですよ。」
「ありがとうリィーンさん。」
さて、許可も貰ったし早速改装に取り掛かるか。
未来ある子供達の笑顔んも為にな!!
◆◆◆◆◆
おまけ1
「……ところで何故、私と話す時に敬語を使うのですか? いつもはもっとフランクでしょう?」
「いや、公私を分けないと。俺は雇われ教師で貴女は理事長ですから。」
いつもは俺は彼女をリンと呼んで結構、いい仲だ。
彼女の妹のアリシアと師弟関係でもある為、よくそのことで話をしたりお茶したりもしてる。
「解雇していいですか?」
「なんで!?」
あ、なんか頬が少し膨らんでる。
え?他人行儀だった。
社会人としてのケジメだったんだけど彼女のお気に召さなかったらしい。
「いやだったら、私と二人きりの時はリンと呼びなさい。理事長命令です。」
「あ、ああ。リンがいいならそう呼ぶけど。」
この響きは実に君にあっているとは口が裂けてもいえない。
恥ずかしいから。
「ふふ はい♪アキラさん。」
「なんだリン?」
「呼んで見ただけで~す。」
「さよけ」
うん、砂糖吐きそうなやり取りだ。
だが、彼女相手なら悪くないな。
もう俺の周りの女性はデッド・オア・アライブな感じのが多いからな。
アリシア、リン、クラリスの三人は癒されるわ~。
ガリア王家はほんま俺の癒しやで~
「所でさっきから何の書類を見てるの?」
「アニさんが食堂の料理を食べつくした為、食材の供給が間に合わなくて……」
「そ、そうか。」
やべぇ……
こっちも早く何とかしないと食の魔王に学園が滅ぼされる。
◆◆◆◆◆
おまけ2
~食堂~
「今、アキラさんの周りに雌狐がいます!!」
「……理事長の所で仕事だと思う」
「それが不味いんですよ!!アニさん!! 彼女絶対アキラさん狙ってます!!」
「……正妻を気取るなら余裕も大切。」
「うぐ……でも、殿方を独占するこの純粋な気持ちは、私の気持ちは!!」
「……アキラはナミの事を大事にしてるから安心して」
「本当ですかそれ!? 最近、蔑ろにされてませんか私!?」
「……大丈夫、大丈夫、でもここのデザートを奢って来れるなら秘策を伝授する。」
「!!!! おじ様!! このメニューに載ってるデザート全て持ってきてください!!」
「ナミの嬢ちゃんは一途だな~。 というか、そんだけ食べてアニの嬢ちゃんは未だ入るのか?」
「……デザートは別腹。」
テーブルに山の様に詰まれた食器や皿を積み上げ、魔女は舌を出して笑う。
王立学園の食堂に現われた食の魔王を討伐する勇者は未だ来ない。
次回は10/13 19時更新予定。




