報告書
―――新学期に入り、俺の異世界攻略活動を一度、見直す事から始めようと思う。
復習は大事だと生徒に教えている手前、教師がやらないわけにはいかないからな。
えふん、えふん……俺の名前は渡辺・アキラ。
異世界でも教師をやっているナイスガイだ。
何故、異世界にいるかというと酔って意識が朦朧としている内にこの世界に召喚されたからだ。
この異世界アースは現代の地球と地理的に符合する点が多い、時代は15~6世紀の中世だろうか。
当然、そんな時代にはテレビもないネットもないコンビ二もない、車も走ってない。
これだけならタイムスリップと思った。(それも異常事態に変わらないし如何し様も無いと思うが)
この世界は魔法という物理法則や航空力学に喧嘩を売るようなトンでも要素がある世界だった。
いわば中世ファンタジー。
剣と魔法のファンタジーな世界だった。
しかも、どっちかというとゲームよりな世界だ。
魔法だけでも頭が痛いのに、レベルというゲームの様な概念があるのだ。
このレベルの仕組みなのだが、RPGゲーム同様、魔物を倒すなり、修行するなりすると能力が向上する。
ゲームでいう経験値に相当する魔素と呼ばれる魔法を使う為に必要な未知の元素を体内に蓄える事でレベルが上がる。
体内に取り込んだ魔素を魔力、気力というエナジーに変換し結果身体能力が強化できるのだ。
食物や大気に含まれる魔素を吸収するだけでも成長と共に身体能力は向上するが、他の命から奪う行為に比べると微々たる物だ。
このレベルに応じてギルドではランク分けもされている。
Bランクまでが冒険者、兵士のレベルで平均レベル100前後
B+ランクだと騎士として叙勲され、レベルも150~180と精鋭揃い。
Aランクにもなるとレベル200前後の実力者でまさしく一騎当千の様な戦闘力を保持している。
難点は魔素は資源と同じく有限である為、200越えの高レベルの人間などそう居ない。
この世界の住人と比べスタートから出遅れた俺だが、この世界で生き抜いた。
そして故郷の帰還方法を探る為に、この世界の理に乗っかりレベル上げと期間方法の研究に勤しんだ。
ほぼ、この世界の理の裏を斯く様な手段を用いた結果、この世界で3ヶ月も経たない内にレベル250まで上がった。
帰還方法である転移魔法、召喚魔法のメカニズムも把握できた。
自分でもやりすぎだと思う。
反省もしなければ、後悔もしてないが。
ただ、問題もあった。
俺以外にもこの世界に召喚され、短期間でレベルを限界まで引き上げた奴等が居た。
しかも戦争の引き金に成りかねない存在になった奴らが俺以外に七人もいた。
何時しか俺たちは最強の七人、【七英雄】としてこの世界で名前を轟かせている。(八人目の男は世間的に知られてない。)
そんでもってその八人を使って世界大戦を目論でいるラスボスみたいな奴等がいて、そいつ等が俺達を召喚した黒幕だ。
俺の異世界攻略活動という獅子奮迅の働きで他の七英雄を撃退し結果的に世界大戦を未然に防ぐ事に成功したが、攻略という名の世界平和を成功して面白くないのが黒幕達、通称【召喚者】だ。
こいつらは俺を殺せる可能性を持つ七英雄(+1)を刺客にして来やがった!!
だが、俺もその【死神】の七英雄と呼ばれる程の猛者に成長した。
何人か返り討ちにしたり仲間に引き入れたり、対抗手段も万全だ。
それでも七英雄でもガチでヤバイのが未だ2名程いる。
一人は伊藤・カグヤ。
年は二十歳の女子大生、黒い髪に白い肌と整った顔にスタイル抜群、文武両道。
正に絶滅危惧種の大和撫子で、同じホモサピエンスか如何かを疑うレベルだ。
しかし綺麗な花には棘があるという言葉があるが、彼女の棘は鋭すぎる。
彼女の美貌を見て求婚してきたり、権力や力で彼女をモノにしようとしてきた貴族や国王達は数多い。
彼女は求婚を全て拒否。
激怒した愚かな貴族、王を全て返り討ち。
更に正当防衛という大義名分を手にした彼女は持ち前の武力とカリスマで次々攻め落とした。
結果、この世界の大陸の七割近くを支配する帝国にまで発展させた女傑だ。
格好も三国志に出てくる武将の装備で武器も倭刀と方天画戟。
正に中華風戦女神だな。
彼女とは何度かガチで殺し合いを演じた色々因縁ある仲なのだが……
戦闘民族の血でも入ってるのか、俺の遺伝子や強さに惹かれるのか、命含めて、彼女には今でも色々狙われている。
カグヤは普段はいい娘で大和撫子って感じで俺のタイプでもあるのだが……ヤンデレの気がある。
いつか俺は背中を刺されて死にそうで笑えないな。
あらゆる意味で俺の命が危うくなる女である。
ホント誰か、助けてくれよ。
もう一人は山本・シュウ
職業がなんと勇者!!
冗談みたいだが、マジの勇者である。
ロマリアの総本山にある勇者しか抜けないといわれるいかにもな【神剣】を抜き放った英雄なのだ。
マジで選ばれた存在だな。
カグヤは大陸の七割を支配した。
対して勇者は暗黒大陸と呼ばれる魔族の本拠地にたった四人でカチコミを掛けて魔王討伐をやってのける偉業を成し遂げる。
魔王は後、三人いるらしいので暗黒大陸の皆様が本土に侵略して来ないか、今後のロマリアが心配だ。
ロマリアという国は宗教的な理由で俺の命を狙っている国だ。
そんな宗教国家を本拠地にしている七英雄なのだが、完全な駒という訳でもないらしい。
あの国では風当たりの強い、獣人や魔女など異端者の地位改善の為に動いているし、問答無用で襲い掛かるという訳でもないし人々の信頼も厚い。
話を聞く限り、良い奴だ。
さすが勇者。 そこに痺れる憧れ……はしない。
何故なら勇者様は現在、俺の命を狙っているから。
彼は召喚者の差し金で洗脳されたのか記憶を奪われたのか傀儡の様な状態らしい。
刺客として俺の職場である学校に仲間を引き連れて編入して来た。
七英雄の中でも次元の違う強さを持つ【戦女神】カグヤと【神剣勇者】シュウの二人。
現状、俺を殺せる実力を持ち、話が通じないという共通項を持つ二人に日々、命を狙われる日々を俺は過ごしている。
カグヤの方は餌をやる感じであしらっているし。
今のところ同盟というか停戦協定を結んでいるので問題は無い。(戦闘が絡まなければ本当に良い娘だから。)
問題は勇者君。
仲間と相談した結果、結局俺が彼を相手にする事になる。(なんでだ!?)
可能なら洗脳だか呪いだかを解除して戦争の芽を完全に潰し、表舞台に黒幕の召喚者を引きずりだしたい所だ。
全ては世界平和の為に、今日も頑張りたいと思います。
あれ? 作文!?
次回、10月7日0時 更新します。




