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異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
番外編 脇役に光を!

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178/238

受付嬢だってヒロインです! 1

時系列は

アキラが召喚される前から始まります。


20:40 修正


 ~リィーン視点~


「出会いを求めてギルド受付嬢になるのは間違いでは無いと思います。」


『はぁ?』



 私の宣言に妹たちが頭を傾げます。

 しかし、この言葉で真意を把握し、理解できぬようでは、戦場では死にますよ?


 事の始まりは、私が18の誕生日を迎えた日の夜です。


 ガリア王家、外戚

 公爵家の令嬢

 王立士官学校 飛び級進学 首席卒業。

 特務諜報機関 通称暗部。 長官就任。

 才色兼備、眉目秀麗の才媛。


 華々しい経歴を持つ私、リィーン・ド・マイヤール(18)ですが…

 一つ足りないものあります。




 ……恋人がいません。 

 ……彼氏がいません。

 ……婚約者がいません。



 私、リィーン・ド・マイヤールは齢18にして男がいません!


 ガリア王家の外戚にして、

 公爵家の令嬢という大貴族の生まれであるにも関わらずです!!



 本来、公爵家の娘は婚約者の一人でもいるのでしょうが、親バカな父が自分より強い男は認めん!!

 という、貴族にあるまじき宣言をしたのも原因です。

 当時、存命だった母が、せめて娘に勝てる程度と妥協させたのですが、

 それでも懲りない父が私たち三人の娘に簡単に負けないように、

 軍人として最高の英才教育を施すという真似をしでかしました。


 結果、私は士官学校を十歳という若さで飛び級。

 しかも首席で卒業。


 花の青春時代の半分を暗部で過ごす羽目になりました。


 妹達にはそんな道を歩んで欲しくない私は、アリシアは王女様の傍仕えにさせるべく飛び級で進学させず、適切な年齢で士官学校へと入学できるように取り計らいました。


 末の妹のエイリアスは何故か私と同じ道を歩むと聞かず、

 同じく主席で士官学校を卒業。

 私の後進として名を轟かせました。


 この為、王都ではマイヤール三姉妹の雷名、特に私とエイリアスの名が轟いてしまい、交際したくても、皆、気後れしてしまい、縁談が来ません。



 その結果、貴族達にとって、次女のアリシアが狙い目になるのですが、

 王女の側仕えでもある為、中々、手出しできない状態になりました。


 しかも長女と三女は泣く子も黙る暗部に所属している為、男が近寄らない。


 幸い、公爵家である為、相手は選べる立場でもあるのでしょうが、

 ガリア王家の親戚筋たる私たちは事情が少し違います。

 とある理由でクルトの民か、霊力の高い者を家に入れなければならないという義務があるのです。


 これ、詰んでいるのでは?

 只でさえ、婚活が厳しいのに、絶対数の少ない霊力持ちという条件を婚活に組み込まないといけないとか!!


 しかも現在確認されている合格ラインの高い霊力を持つ、賢者や魔女、クルトの民が全員女性!!

 条件が厳しすぎます!!



 ですが、その条件さえクリアすれば、身分や人格は問わないという言質を取りました。

 まぁ、後で調教でも洗脳でもする腹積もりでしょう。


 この条件をクリアする為、

 霊力を育てる事が出来る我が国のダンジョンに挑む探索者から掘り出し物を探すという突破口を見出しました。


 勿論、出会いや恋愛という経験もしたいという気持ちはゼロではありません。

 心の何処かで、勇者様や王子様を求めたりするものです。


 きっとその中にはお忍びの某国の王子様や勇者様がダンジョンに修行に来たりする筈です!

 妥協しても英雄譚に出てくるような、

 難攻不落のダンジョンを攻略する

 最強の冒険者という響きにも憧れます!!


 あ、これで行きましょう!! 今のところ、これが最も現実的ですね。


 その運命の人を見つける為にギルドマスターか、受付嬢に異動する事にしたのです。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 そして、冒頭のやりとりに戻るのです。



「あ、姉上ってそういう願望があったのですね。てっきり任務の鬼かと…」

「これが暗部の元・長官とは世も末じゃの。これからは、妾達がしっかりせねば…」


 妹達に共感を得ようと話したのですが、理解を得られませんでした…

 あ、あれ? 姉妹の中でこの願望を持つのは私だけ?


 彼女たちは、王子派?それとも勇者派?



「この場合、鬼の目にも涙というより、鬼の胸にも乙女心でしょうか?」

「下姉様も上手い事、いうの…

 あれじゃな、上姉様はメルヘン趣味とか、高望みで婚期を逃す典型じゃな。」


 ……イラッ!!


 ****しばらくお待ちください****



 ……私の可愛い妹達(アリシアとエイリアス)、も応援してくれます。


「は、はえうえ、ほっへはひはひへふ」

 *訳( あ、姉上、ほっぺが痛いです。)


「ふぁ、ふぁらふぁほっへは~」

 *訳( わ、妾の頬っぺが~) 


 それに、ダンジョンの出会いは夢物語では無く、現実味があります。

 現実でも成功例が身近にあるではありませんか!!


 父と伯父である国王陛下のご友人達が、その成功例です。


 若い頃、ガリアでお父様達と肩を並べた冒険者の英雄


 ガリアの双璧『撲殺神父・グレアム』と『蛇女の尻尾の女首領 アデーレ』


 この二人はそれぞれダンジョンで運命の出会いを果たし、生涯の伴侶を見つけています。


 グレアム神父はロマリアからのマグドレアの聖女と……

 アデーレ婦人もゲルマニアからの行商人……


 この良縁からもダンジョンとは出会いの地であろうことは間違いありません!!


 縁起も最高です!!


 更に!

 出会いの確率を上げる為、婚活の成功率を高める為、

 ギルドの受付嬢というポストに付きます!!


 ギルド職員ならギルドメンバーと接する機会も多く、めぼしい男を見つけた時、情報も簡単に手に入ります。


 完璧……完璧な職場……いえ、最高の婚活環境です。

 簡単な任務を受ける見習い冒険者という若いツバメにツバを付けて助言や恩を与え、理想の相手に洗の…ゴホン… 教育することも可能です。


「あ、姉上? それって公私混同では……」

「上姉様? 真逆、そんな理由で妾に暗部の長官の席を譲ったのではなかろうな?」 


 頬を摩りながら、詰問する可愛い妹達。


「……さて、なんのことでしょうか?」


 貴女たちもいずれ経験することですよ?

 寛大な私は、生暖かい目で可愛い妹達を見ます。


「マイヤールの者は障害に背を向けません。」

「いや、こんな時に我が家の家訓を出されても……」

「必死じゃのぉ…まだ上姉さまは、婚期を焦る年齢ではなかろうに…」


「と、ともかく運命の人や王子様、勇者様を待つお姫様ではなく、

 自分からダンジョンに挑む冒険者と運命的な出会いをするんです!!」


『え、えぇ~~~?』


 微妙な表情で私を見ない!



 ・

 ・

 ・


 こうして、私は大貴族の娘である事を知る者がいない土地。

 地方都市にして出会いと別れの冒険者の街『トゥールーズ』


 そのギルドのギルマス兼、受付嬢として働くことになりました。


 表向きは主に、クルトの民ないし、霊気を持つ優秀な人材を探す事。

 そして、しかる後スカウトする為!


 真の目的は私の運命の人を探す事!


 こうして私の恋物語は始まったのです!!


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ~トゥールーズギルド 応接室~ 




 どうやら、運命の女神様は私の事が嫌いなようです。



「こういう運命の出会いは望んでいません。」

「アッハッハッハ 女神様に出会えるのだから幸運でしょう?」


 知り合いがいない辺境に婚活に来たのに、ギルドに就任してそうそう、知り合いに出会いました。

 それも、光の大精霊にして、ロマリアの太陽神 女神ルー。


 精霊を信仰するガリア、ブリタニアでは彼女は七柱の大精霊の一柱として数えられ、『光の大精霊』として信仰されています。


 しかし千年前の悲しい戦争の末、一柱の女神として独立。


 ロマリアの十字教という宗教の女神となった過去がある複雑な女神です。


 以来、ロマリアとガリアの仲は険悪なものです。


 私も暗部時代、ロマリアの暗部である異端審問官や当滅者と交戦した事もあります。


 彼女自身はそう言った自分の為に争われる事を何より嫌う性格なのですが

 千年前の悲劇に心に深い傷を負った為、長年神殿に引きこもり…

 気づけば今の敵対関係になっていたそうです。


 私としては彼女に思うところは少なくともありません。


 何が悪いかといえば、千年前の出来事の間が悪かったというか、

 運が悪かったとしか言えません。


 現在は争いも小康状態な為、

 戦ったと行っても小競り合いというレベルです。


 彼女との関係も互いに認め合ったライバルのような……

 悪友の様な、立場場、信仰する神の一人でもあり、

 敵でもあるというなんとも複雑かつ微妙な関係ですね。



 そんな彼女が何故か、ルーテシア・コリンズという偽名で使ってちゃっかりガリアに国籍まで作っていました。


 この国の暗部は何をしているのですか!!


 ……私でした!!


 うぅ……これでは、エイリアスに後任を任せたのは正解だったかも知れません。

 まさか、私が暗部に所属していた時、

 敵対したり、時に共闘したりと色々個人的にも国家的にも因縁がある相手に出会うなんて……。


「それで何故、貴女がガリアにいるのですか?」

「男探し…」

「帰りなさい!!」


 飛んだ伏兵ですよ!!

 馬に蹴らせて月まで飛ばしますよ!?


 恋物語が始まったばかりなのに、出会いすら潰す気ですか!!


「一応、今の私はガリア国民なんだが?」

「ロマリアにも男はいるでしょう!!」

「ヘタレばっかだがな?男は権力争いが好きで、実力はへっぽこ…

 使える異端審問官や神殿騎士も女性ばかりだがな。

 本国のコーラル家は女系家族、マグドレア本家も同様だ。」


 …どこも似たような事情なんですね。

 ロマリア、ガリア共に、男性陣にはもっと頑張ってもらいたい所です。


 しかし、結構、重大な国家機密をサラッと述べる彼女ですが、

 私にとって聞き捨てならない情報を話してくれました。


 人材発掘は冤罪を掛けられた者が狙い目だというのです。


 ロマリアではすぐ、魔女裁判やら、宗教裁判で処刑ですから、

 隣国で十字教の影響の無いガリアに来たそうです。


「冤罪を掛けられる者は総じて有能な者が多いからな。

 国という大きな権力に屈しない程に芯も持っている。」


 た、確かに目の付け所は悪く有りません。


 こ、これが女神の知恵!?

 仮にも陰謀渦巻く、ロマリアで象徴とはいえ、頂点に影で君臨してきたのは伊達ではありませんね。


 し、しかも冤罪を晴らして幸せになるとか、物語でもよくある王道!


 ルー…恐ろしい(めがみ)!!


 こ、これでは私の出会いが少なくなる!!

 聞けば、既にレベルの高い美男美女に加え、年齢も幅広い布陣という……

 で、出遅れました。


「後はショタっ子が入れば、完璧なんだけがな……いつか入れたいものだ。」

「この上、未だ欲しがるのですか? というか犯罪ですよ、ソレ。

 しょっぴきますよ?」


 自分の事を棚に上げて、糾弾してしまいました。


「女神を罰するって罰当たりな事を言うわね?」

「霊斬剣の錆にして上げましょうか?」

「処刑に変わったわよ!? 

 ちょ、神殺しの(クルトの)魔剣は止めて!!」


 その割には余裕ですね? 

 今ならレプリカの霊斬剣でも、私の怒りと嫉妬に呼応して神すら殺せる魔剣と化すでしょう。


「フフフ、冗談、冗談。それに、私の運命の人はもういないしな。」

「……そうでしたね」


 ルーのその言葉に怒りが霧散してしまいました。


 彼女は遠い過去に夫も、兄も義妹も一度に失いました。


 せめて封印されているであろう兄と夫の妹だけでも救おうと十字軍を結成したのですが…


 ロマリア軍の十字軍遠征という名の『黄泉の入口』攻略は尽く失敗。

 これ以上の十字教の権威の失墜を避けるため教皇は攻略を断念。


 その為、彼女は機会を待ちました。

 世代を重ね、強力な魔素と霊力を備えた子孫に掛けたそうです。


 てっきり諦めたのかと思ったのですが、千年経っても諦めないとは……

 やはり、人間とは時間感覚がズレてますね。


 ですが、この時期、この場所で人材発掘は止めて欲しいです。


「フフフ、そ、それにしても、運命の出会いの為に受付嬢に就任するとか……」

「放っておいて下さい!!」


 ツボに入ったのか、その日はケラケラ笑いながらルーは帰って行きましたが、

 私がいたのがそんなに面白かったのか、

 彼女は王都を拠点にしているにも関らず、それからもギルドに顔を出しに来るようになったのは余計な話ですね。


 就任(婚活)初日に出鼻を挫かれました……


 ハァ、先行きが不安です。

 こんな調子で私の運命の人に出会えるのでしょうか?

彼女は一応、メインヒロインなので、レギュラー化します。

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