氷結の魔女 1
天然食欲魔女対天然暴走賢女
序章なので短めです。
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アニ・スコールハート
年齢不明
Aランク
賢者
ガリア王国義勇軍駐屯兵団(通称 探索者ギルド・トゥールーズ支部)主力【銀狼の牙】に所属。
精霊魔法と魔物使役を司るクルトの民を思わせる濃紺の色のショートヘアの少女。
ガリア王国に相方にして幼馴染のイェーガー兄弟と三人で来るまでの来歴は一切不明。
二つ名は【氷結の魔女】
僅か、一年でCランクからAランクへと急成長した術師。
薬学、調理学、魔法学に優れた才媛。
霊力が確認され、黒魔法、白魔法を使い、無詠唱魔法の使い手から【賢者】の可能性が高い。
先日、七英雄が一人【死神】を捕縛するの貢献した事から実力は六将軍クラスとされる。
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この報告書を読んだ時、帝国の六将軍「知の戦乙女」エレノアはアニの来訪を楽しみにしていた。
カグヤがお忍びで隣国を偵察に行った時は
アキラを模した人形に呪詛の念を込めて拳をねじ込ませる程だったが、
代わりに食客として招く事になった人物が自分と同じ【賢者】だといことに怒りが収まった。
自身と同性、同年齢の才媛、何よりアキラに一矢報いれるどころか捕縛するのに一役買うほどの実力者だ。
話が合うだろうと心が踊った。
だが、心待ちにした人物とは会話できなかった。
何故なら件の食客は食べてばかりで会話できなかったからだ。
「……以前、住んでいた国の料理はお世辞にも美味しい料理ではなかったので帝国の料理は幾らでも入りますね。」
そんな事を喋りながらも食事の手を休めない。
小柄な女性の体のどこに入るのか帝国名物【満漢全席】を一人で平らげている。
少女の体積的に何処に入るのか疑問に思う。
(まさか、食べた食物を魔力に変換できる体質? だとすれば、有事の際は飛んでもない魔力量に…)
そんな、疑問や推測をしながら、何とか自分の職務の合間にアニに会いに食堂に通うのだが、
中々、魔法談義ができずにいた。
「……食べます?」
「……食べません」
視線を感じたのか、ガコライやアキラが見れば、信じられない事に、
デザートの杏仁豆腐を差し出すアニ。
その友好の?証に気づかず
エレノアは咄嗟にそんな言葉しか出ず、折角のチャンスを不意にしてしまう。
「……そうですか。」
何だか、悲しそうに残念そうな表情になるアニ。
(し、失敗でしたわ… こ、こうなったら彼女の食事に付き合うために、今日の夕食と明日の朝食を抜いて来ないと!!)
少々ずれた決意をする天然娘だった。




