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異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
番外編 脇役に光を!

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エルフの聖女と優しい死神 前編

 

~マグドレア教会 懺悔室~


ティファニア・コーラルside


 私、ティファニア・コーラルは義理姉さん達が冒険者業で休暇中の間は、町外れの教会のお手伝いをしています。


 私と同じ境遇の親のいない子達の親代わりに文字を教えたり、食事を作ったり、一緒に遊んだり、光の精霊様に祈ったり、懺悔室で人々の悩みを聴いたりしています。


 今日は、そんな悩める子羊達の懺悔を聞いているのですが……


「私にいつも祈ってくれるのは嬉しいんだがね? 寄付も無し、努力も無しで願いを叶えてもらおうとか虫が良すぎるというか……まぁ、それはそれで置いておいて、今は私の懺悔というか、頼みを聞いて欲しいんだが? 私の所で力になってくれないかな?」


 ……迷える羊ではなく、羊飼いが来室しました。


 と、いいますか懺悔室の中で、件の女神さま信者に対して愚痴を言ったり、私をご自分の組織に勧誘してきます。


 ……本来、懺悔室は神様に許しを請うたり、相談したりするんですが……女神さま自身が懺悔室に来て愚痴を零したり、懺悔室を面接室?のように使うのはどうなのでしょう?


「いえ、ルー様。私は義姉様達やこの子達の日々を過ごすだけで十分幸せですから……貴方様のお兄様や旦那様の事、こうして上手くいくことを陰ながら祈らせてもらいますね。」

「……ふ~わかった。 これ以上の愚痴や勧誘は旧友(マグドレア家)悪友(リン)に睨まれかねないからな… 気が変わったらいつでも来てくれ、私は何時でも貴方を歓迎するから。」


 精霊様は少し、残念そうに肩を竦めつつ、懺悔室を退室し、中庭にいるにした。


「ベル~ そろそろ帰るよ、 あ、またね~クレアちゃん。」

「分かったよ、 そ、それじゃ、またな クレア。」

「うん、またね~ベル君、女神さま。」



 教会の中庭で後ろ髪引かれるように帰っていく、気高き王の末裔(ベルゼ君)精霊様(ルー様)が帰っていく、どうやらベルゼくんは教会の神父さんのご息女、クレアちゃんにご執心みたいで、ルー様はその付き添いのついでに私に愚痴を零したり勧誘しているみたいですね。


 ノエル義姉さんに誘われて山奥から都会に来た私に待っていたのは見たこともない、世界と、精霊の女神様が人里に降りて楽しそうに暮らしているという信じられない光景でした。


 彼女は自分の最も大切な人達との約束を果たし、再会する為に日夜、頑張っているようです。


 早くお会いできるといいですね。


 ━━━━ガチャ


「あ、コーラルさん。 教会の窓ふき終わりましたよ。」


「ありがとうございます。 アキラさん。それと、申し訳ありません懺悔室を開けれずに、お掃除のご負担をかけてしまって。」


「いや、俺より若いのに、人の悩みを解決できるコーラルさんの方が、懺悔を聞いたほうがいいでしょう。 その間、掃除や子供たちの世話をしたほうが、皆のためですし、お気になさらずに。」


 最近、よくお手伝いに来るギルドの新人さんで私の後輩に当たる彼、街で話題の黒髪の執事さん?のおかげで仕事が早く済んで助かります。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇


トゥールーズ酒場


 週末には義姉さん達と飲み会…カサンドラ義姉さんは女子会って呼んでますけど、その集まりで仲間内で楽しむ日だそうです。


「ん? 男!? リンの紹介とはいえ、神父以外に男が教会の職場にいるのか?」

「ノエルは心配性だな、リンが送り出したのなら人格や能力に問題はないだろう。 

これが蛇女の尻尾の様な奴らなら私の魔術で灰に変えてやるところだが…」


 オフ期間中にお手伝いしている教会のお話になったので、最近入った新人の方がよく来ると話したらノエル義姉さんが興味を持ちました。


 妹分の私を心配してくれているのでしょうけど、それは杞憂でしょう。

 初めは猛禽類かと思わせる目鼻立ちに、少し、驚いてしまいましたけど、害位は全くない人ですし、半分とはいえ邪念に敏いエルフの血が彼は危険では無いと教えてくれます。それどころか彼の周りには精霊達が懐かしそうに嬉しそうに飛んでいましたし、子供達も彼に懐いています。


 あれはルー様と似たような雰囲気を持つ人でしたから、少なくとも悪人では無いでしょう。


「あ、あのアキラさんは紳士ですし、他の殿方と違って邪な視線を感じませんから━━━━!!??」

「胸か? そんなけしからんサイズの胸があるからそんな言葉が出るのか? それが強者のゆとり(巨乳の谷間)か? 何だこのワガママボディは!?」

 

 カサンドラ義姉さんが、イキナリ私の胸を揉みしだいて取り乱しはじめました!?

 

 や、止めてください、私はそんなつもりは!!


「大体、何を食べたらこんなに育つ!? 私が日々どれだけこのスレンダーな体系を維持するのに労力を払い、どれだけ豊胸の研究をしていると思っている!! 天然か!?」


「し、知りません!? 私は特に何も……」


「ん 適度な運動ではないか? 私もテファ程では無いが肉付きはいいほうだしな。」


 ノエル義姉さん、火に油を注がないで~!


「よしノエル!! お前も敵だ!!」


「な、泣かないでください、カサンドラ義姉さん。」


「泣いていない!! これは魂の汗だ!!」


 そう言いながらグイっと蒸留酒を飲み干す下義姉さん。

 

 そ、そのお悩みなら今度、懺悔室でお聞きしましょうか?


「はぁ はぁ ……というかアキラといったか? それって雑務クエストで料理人や薬師、吟遊詩人とか、何をしたいのかよく分からない例の黒執事の事か?」


「え、ええ巷ではそう呼ばれているみたいです。」


「ん… まぁ粗野な奴ではないし、最近では試作品だった果汁ポーションや携帯食料でギルドにも貢献している彼か、アニがえらく気に入っていたな。」


 そう、探索、討伐や護衛など、戦闘能力が問われる仕事にはつかない代わりに殆ど、私か新人、見習いだけが受けていた教会のお手伝いや治療院での補充員といった雑務クエストを一手に引き受けた事、猛禽類を思わせる表情、貴族に縁のあると思わせる黒い執事服に黒髪という事でこの街の名物になりつつある好青年です。


 多種多様な仕事を受ける為、街の便利屋として名が売れてきてますし、

 一部の心無い人は彼を小遣い稼ぎとか小銭漁りなど揶揄していますけど、彼が提供したポーションや携帯食料は私たちを含め、上位、中位の冒険者や騎士団にも広まって、生存率、任務成功率も上がっていますので、その功績は多大なものになりつつあります。


 私たちは何時も、朝方に仕事を受け、夕方か夜遅くに終了報告をギルドに知らせ、市場ではなく信頼のあるギルドでの試供品で装備を整える事が多いため、あまり彼と出会う機会は無かったが、それでも噂は耳に入ってくる。


 その人物が等々、私が専門?にしていた教会での雑務クエストに手を伸ばしてきたので、こうして皆さんと女子会をする時間も増えたので、私たちも助かっているのですけど。


「まぁ、そ、そのむ、胸を見て欲情しないのは男としてどうかと思うが、そいつなら大丈夫なのか…?」

「ん~ だから、カサンドラは心配しすぎではないか? あとしつこい。 ギルドからも信頼を得ている奴なら問題はあるまい…ただ、悪い狼と化したらテファ 遠慮はいらんぞ?」


 お酒が入っているのかいつもより饒舌なノエル義姉さんがカサンドラ義姉さんを窘めてくれます。

 

 もう、お義姉さまは何時までたっても私を子供扱いして…

 

 でも、それだけ私のことを心配してくれているんですね。


 おふたりのその優しさに何時も救われます。


「それはそれとして、その胸はどうやって育てたの?」


「だ、だから!そ、育ててませんってば!!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 マグドレア教会 中庭


 翌週、再びマグドレア教会で働く日、私は神父さんが言った言葉に長く尖った耳を疑った。


「暫くの間、アキラ君を住み込みで修行してもらうことになった 何でも白魔法と黒魔法を同時に習得し、英雄の御技を再現するらしい。」


 この教会の責任者にして、元Aランク冒険者の【撲殺神父】マグドレア神父がとんでもないことを言い出した。


 魔法の修行は分かる。 

 この教会は白魔法や一部の黒魔法を教えるために過去、禁書として収集された魔道書や魔石も存在する。

 

 だけど問題はそこではない。


「そ、それって魔法使いの最高位【賢者】の称号を一から目指すということですか? 彼はその困難さを知っているのですか?」

 この世界には大まかに分けて2種類の魔法に大別されます。


 体外の魔力、魔の力を操る 黒魔法 その上位魔法 召喚魔法


 体内の魔力 気の力を操る 白魔法 その上位魔法 精霊魔法

 


しかし、体外の魔力、体内の魔力は水と油の様に反発し、黒魔法、白魔法を両方行使しm使いこなすことが出来る者は殆どいません。


 伝説や神話に出てくる英雄かその子孫にのみ同時に行使出来る者がいるくらいで、現在は黒魔法、白魔法を同時に使いこなせれば無尽蔵の魔力と無詠唱、複合魔法を使えるようになる為、その奥義に至った者は敬意を評して【賢者】と呼ばれます。


 因みにカサンドラ姉さんは黒魔法、白魔法、精霊魔法を行使できますが、これらのスキルを未だ使えない為、賢者ではありません。


 アニさんは…どうでしょう? 彼女は賢者と言われても違和感を感じませんが、自分のことをあまり話したり、実力を誇示する人では無いので分かりません。



 話がそれました。


 つまり、歴史上の偉人やその子孫、一部の天才のみが到れる魔法使いの最高位を伝説の存在の域に足を踏み入れるということです。


「それは、また大きい目標ですが……完成するまで教会で修行を? 長期滞在するのですか?」


「いや、多分だけどひと月も掛からないんじゃ無いかな?」


 その言葉を聞いて、私はアキラさんは、一ヶ月で諦めるか、基本だけ学ぶのだとばかり思っていました。




 彼はギルドマスターのリンさんが認めた人材だという事実を私は失念したことを


 後に思い知るとも知らずに……



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