野球拳 後半
改稿しました。
感想、評価ありがとうございます。
駆け足での投稿ですので遂行していません。
マリアside
まるで、天馬な流れ星的な技を繰り出すのではないかという、挙動で互いの必殺の拳を繰り出そうと先生とラスボスが真剣な表情で付け込む隙を虎視眈々と狙っているッス。
……ただ、お二人がやっているのが野球拳で、ほとんど半裸に近い恰好で行っているのを除けばっすけど。
アキラさんはパンツ一枚に革靴、見事に鍛えられた筋肉を恥ずかしげもなく晒し、カグヤさんは肌襦袢と足袋で、うす布一枚からでも美しい肢体、肉付きが浮き出て、暑さで汗ばんで要ればより、色っぽくなって、同性である私ですら可笑しくなりそうな色気を出すんでしょうが、火の大精霊さんの加護の為、全くかかないッス。
「「あいこでしょ! あいこでしょ!」」
「いや~なかなか勝負がつかないッスね~」
「く、立場上陛下が勝つのを望まねばならないのに、アキラが勝つことを心の片隅で望む自分がいる…、わ、私はどうすれば……!」
「………」
わかる、わかるッスよ? アリアさん。
実害がない分には同性愛には理解がある方っス。 でも、同性なんだから風呂とか、着替えの時にでも見れる機会があるのに、何故葛藤するんすか?
野球拳をする際に発生する独特な空気に呑まれているんすか?
アリアさんが、ご自分の世界に突入しているのでボッチな私は先生の残り香がするローブに包まれつつ、戦況を見守るッス。
先生の勝利宣言から五分五分まで持ち込んだ先生の秘策。
精神系スキル持ちの私は直ぐに挑発のスキルを応用しているか魔改造でブーストしているのかと思ったんすけど……違うッス。
先生の連勝には種があるッス。でも精神系スキルではない。
いったいどんな種が?
マリアside end
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺は精神系等のスキルをそんなに持ち合わせていない。
カリスマはカグヤや勇者には及ばず、【挑発】汎用性が高いが効果は一瞬で、相手が冷静になれば効果は永続しないという欠点がある。
だが、この世界においてステータスやレベル、スキル、装備、魔力=強さという方式は成り立たない。
知識や知恵、経験は時にそれらを凌駕するからだ。
俺がカグヤ相手にここまで圧倒している種はこの頬にある頬と右手にある。
カグヤに貼られた紅葉は嫌でもパーが脳裏に刻まれ、野球拳特有の為の間に光魔法、闇魔法の同時行使で虚像を投影し俺に重ねる。
普段は是れを不可視化だけに使うが今回は虚像を投影する【幻術】だ。
マリアのそれとは違い、瞬間的に右手の像を重ねて投影して、瞬時に解除しているのも味噌だ。
カグヤに直接幻術を掛けているわけでは無いので防ぎづらいしな。
カグヤの目には俺がチョキを出しているように見えているのだろうが、投影した虚像の右手には実際には本物の俺はパーを出して勝つというからくりだ。
これに【挑発】の思考誘導を加えれば負けは無い。
これに挑発を加えて精神防壁に揺さ振りを欠ければ、結果は……
「俺の勝ちって訳だ。」
「くぅ~~~~~」
悔しそうに涙目で唸るカグヤは現在、肌襦袢一枚だ。
対して俺はパンツ一枚に革靴とまだまだ余裕だ。
つまり勝負は決したが、カグヤの服を剥ぐ度にだんだんと俺のテンションとモチベーションは下がっていった。
たかがジャンケンに何をマジにやっているんだ俺?
お前は自分のことを好きと言ってくれ肌まで重ねた女性を公衆の面前で服を剥ぐのか?
鍛えに鍛えた技術が泣くぞ?
俺の良心が活性化していき、次第に自分を客観的に見ることで、だんだんと頭が冷えてきた。
反面、会場は大盛り上がりだが……
肌が見えていないがいいのか?
「ワイ等には想像力がある!」
……そうらしい。
云われてみれば、カグヤは下着をつけずに肌襦袢をつけるという、色気も何もない手段で勝負に挑んでいる。
普通ならブーイングものだが、下手な全裸よろ、体型、肉付きがうす布一枚越しゆえに、形が浮き出ている。
これはこれでエロいのかもしれん。
いや、煩悩に流されるな、彼女の意図を読め。
三度の飯より戦いが好きという彼女が部下の懇願とはいえ、野球拳などという回りくどい真似はしない。
俺と床をともにしたいと思い立てば、転移結晶で飛んできて、俺にボディーブローをかまして、悶絶した俺をベッドに放り投げて事に及ぶし、戦いと思い立てば、授業や実習に乱入して俺に襲い掛かるか拉致するのが彼女だ。
…なんで俺は彼女のことがすきになったんだろ?
ある意味、男らしすぎる性格を持つカグヤだが、こんな茶番をした意図。
それは俺が今、召喚者や七英雄、ロマリアとの水面下での戦いも今の茶番の様に馬鹿馬鹿しいことだといっているのだ。
目的の力を得るために、大精霊や召喚獣を求めて争うこの冷戦。
確かに茶番だ。
となれば、俺の次に紡ぎだす言葉はきまっている。
「……召喚獣フェンリルは契約通り、俺が支配下に置くけど……本体を連れていくつもりはない。ただ、カグヤ……彼女を守ってくれ。」
その言葉にカグヤの表情から悔しさ、恥ずかしさが消え、暖かな表情が浮かぶ。
「少しはガス抜きが出来ました?」
どうやら、当たりらしい。
まったく、彼女にはかなわない。
召喚士や召喚獣、暗殺者に七英雄の半数との敵対。この所、俺は好戦的になりつつあった。 どうかしている。
ヨッシーと会ったとき、俺は戦争が嫌いで、戦争の駒になるのを防ぐために動いていたのに、いつのまにか、力を力で押さえつけるやり方に変わっていた。
こんなばかばかしい方法で主を決めるなんてことにならなければ本当に召喚士の駒になっていた。
まるで、離婚で言い争う夫婦に幼子がどうでもいい理由で水を差して和解させるような手段だ。
シリアスとかそんなものを微塵も残さずにシッチャカメッチャにされてしまったな。
「ああ、戦争を止めるために俺たちの日常を犠牲にし過ぎてたな……」
「ふふ、せっかくの休暇ですから、当初の目的通り、ゆっくり羽を休めてくださいね?」
こうして、俺は試合に勝ち、フェンリルの主になったが、勝負には負けた。
だが、つかの間とはいえ、平穏な日々を過ごす余裕と初心に帰るという、それ以上のものをこの日、俺はカグヤのおかげで取り戻せた。
後、2話程(花嫁衣裳、コミケ?)投稿した後、帝国編で帝国編を占め、依然の投票で行った脇役たちの番外編を始めます。




