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異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
ヴァルキュリア帝国

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アキラの葛藤

シリアスです。

 昔の俺ならフェンリルの契約に関してそれほど、執着していなかったろう。


 破魔能力はクルトの魔剣があるし、ナミとルー、そしてこの夢の様で死を身近に感じる世界で友好を深めた仲間や未来を担う子共達がいる。


  

 ……だけどこの世界で遣るべき目的が出来た。


 ……力を求めるに足る理由も


 魔改造を使う度に心身ともに摩耗していくのを感じつつも力を求める理由が今の俺には、あった。


 


 ◆◆◆◆


 一年半前、俺は何も知らず、この世界で少し浮かれていた。


 

 生きるために、帰る目的を達成するための手段として力を手に入れた。


 現実には帰れないのでは無いかという不安を打ち消す為にゲーム脳を使って効率のいいレベリングや討伐方法を考え、神父の元で修行する時も心を麻痺させ、無心で鍛え上げた。


 まるで思い出すかの様にこの世界の戦い方を吸収し上達し、果ては千年前の技法【源呼吸】を再現した自分に疑問を抱きながらも強さが手に入り、帰郷への道がまた一歩進めたと思った。



 そこからはトントン拍子で話が進み、ナミと出会い、死の運命にあった王女を救い、嘗ての自分と同じ境遇の女騎士を鍛え上げ、世話になったガリアの為に死都を開放した。

 

 そうして、名声を手に入れる一方、自分の過ぎた力【魔改造】と【精霊化】に飲み込まれない様に自戒し自重して自分自身を鍛え上げ、名声欲が起きないように【アキレウス・ブラック】と名前を替えて過ごす。


 今思えば、渡辺・アキラという人間が元いた世界へ帰れる様に……、ここは現実では無くゲームの様な異世界なんだと、無意識で言い聞かせていたのかもしれない。


 

 転機が起きたのは、俺のこの国での基盤が出来上がった時だった。


 

 俺と同じ境遇の人間が他に6人いるらしいということを田中・ヨシツグが人形を通して俺に伝えてきたのだ。


 

 他の五人はそれぞれ他国で国家に取り込まれ、戦争の日々を送っている事、俺だけが、戦争にかかわらずに生きている事を知ってショックを受けた。


 

 目の前でしゃべっている人形の主の真意も見えなかったが、それ以上にこの世界にいる事に強い忌避感が生まれ始め、俺たちを召喚した黒幕の存在が見え隠れしだした。



 帰る方法を探る為、既に最強クラスの力を得たににも関らず、アレだけ忌避していた【過ぎた力】の大精霊を探し求め、その一方、帰る手段を模索するために俺はガリアを離れ、世界を巡った。

 

 

 そして、海の古代都市に眠っていた遺跡の碑文を【魔改造】で解読し歴史書を読み終えた時、俺は蒼白になった。


 

 


 俺たち【異世界人】が戦争の為に呼び出された駒である事を知った。




 

 異世界人


 戦争を呼び寄せる強大な力を持つ人型兵器……時には英雄、時には戦犯者、魔物として千年周期で人類を滅ぼす異世界に召喚される悪魔【異世界人】またの名を【地球人】。


 千年前を境に、異世界人通しが潰し合い、全滅させた英雄がアースに現れる。


 

 自らの肉体に精霊や悪魔の力を宿して戦うクルト民族、逆に武具に力を封じて戦うロマリア人。


 

 精霊の力を使い、異世界人の半数を召喚者の支配から解き放ち、互いに争わせ疲弊した隙を突き、平和を取り戻した二人の英雄。


 だが……術の影響が自らの肉体に現れるクルト民族の戦士は人に戻れず、精霊化、悪魔化の状態が固定され馴染んでしまった為、いつしか世界を救った英雄は、異形の姿から魔物、魔族と呼ばれ、その代表であるクルトの英雄の片割れは魔王と呼ばれ、遂には共に戦ったもう片方の英雄の手でその生涯を閉じる。


 

 そしてこの碑文を書いた人物の名が最後に記されていた。


 この世界に残った最後の異世界人 マリア・マグドレア



 その碑文を読み終わった時、俺は知らずに涙を流していた。


 何故、俺が古代の英雄が使っていた【源呼吸】を理論だて、再現できたかを…


 何故、クレアという少女が規格外の【固有スキル・神眼】を有していた理由を…


 何故、マグドレア教会に足繁く通うかを…


 何故、見ず知らずのリッチの正体が義兄で親友だった事、笑顔で消えていった訳を…


 何故、イザナミが俺に対して愛情を持っていたかを…


 何故、ガリア王家に関わり合い、親身になったかを…


 

 そしてこの碑文が【魔改造】【精神同調】其れを掛け合わせた【神眼】という固有スキル以外で解読出来ない暗号化された魔法文字で書かれていた事、そのスキルの所有者の正体を俺は知った。


 死んで、生まれ変わるか、若しくは自分たちの遠い子孫が再び災厄に襲われた時の為に監視が届かず、住人が滅んで尚、その姿を残す古代人の遺跡、海底都市、空中都市に世界の真実を記した碑文を遺した。


 真逆、異世界で生まれ変わり、召喚されるとは夢にも思わなかっただろうがな。


 

 この下らない、戦いに終止符を打ってやる。


 

 戦争なぞ、起こさせるか。


 殺し合いで全滅して尚、再び召喚されるなら今度は元凶も叩いてやる。


 

 英雄と持て囃され、人殺しを厭わない人間には同郷とて容赦はしない。


 ナミとも距離を取り、次代の未来を託す子共達、若手を育成し、もう一つの故郷を守る。


 


 その過程で、また俺の中の何かが揺らぐ出来事が起きる。


 

 


 戦乱の世でありながら、俺の遺志を受け継ぎ国を守ったクルトの民の末裔 【ガリア王家】。


 昔と今の俺と同じ、大精霊の力を得て召喚者とこの世界に抗う、【戦女神】との出会い。


 夫、兄、義妹の遺志と無念を受け継ぎ、嘗ての妻【光の女神】との再会。


 過去に囚われず、今世の人生を謳歌する為に望郷を望む嘗ての同胞【悪魔使い】


 そして、突き放し、距離をとり始めた俺に兄の面影と思い出では無く、俺個人を認めてくれた【闇の女神】



 過去に縛られる者、未来を見て、明日へと歩き出す人たちを見て、揺らぎ始める。


 俺は正しい道を歩んでいるのか?



 『俺はアキラであってアキレウスでは無い』


 ナミとルーにいった言葉、そして俺に言い聞かせた言葉。

 


 だがフェンリルの言葉が突き刺さる。


 俺は嘗ての仇敵と同じ悪魔となっていると。


 ……力を求め、自分の為に召喚獣の力を得ようとしている俺は【召喚者】と同類では無いか?


 

 そんな事を考えながら、俺はフェンリルとの契約者を決める決戦の日を迎える事になった。

いろいろ伏線を回収。

次回は一転楽しい?ジャンケンです。

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