モフモフ
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フェンリルを完全に拘束、無力化できたのを確認してから地上に降り、魔改造した掃除機【だいそ~ん】で折れた爪、牙を指定して吸い込んで回収する。
パックに回収された牙、爪の破片は大元であるフェンリルに近い為か反応してか青白く光っていた為魔改造で強化された俺の眼力の【鑑定眼】で調べる。
◆神狼の牙(成獣)
特性
破魔効果 (大)
精霊吸収 (大)
土属性強化(大)
超回復 (中)
◆神狼の爪(成獣)
特性
破魔効果 (中)
精霊吸収 (中)
土属性強化 (小)
斬撃強化 (小)
超回復 (小)
…………少し、マズイな。
超越者は臨界者よりレベルが高いからステータスを完全に読み取る事はできなかったが(使ったスキル等は読み取れる)体から離れた肉体の一部からは多少、読み取れる。
破魔と土属性は推測できたが超回復なんて項目がある。
第一、爪って皮膚が変形したモノだった筈。
混沌の沼から出かねないので、ナミとの経路を開いて強化して念入りに生命力と魔力を奪わないと気を抜いたら再生能力、超回復の類で生えてくるかもしれない。
真面に戦っていたら確実に負けていたのだ。 油断こそが俺の最大の敵だ。
そう思いながらフェンリルに巻き付く闇撫の実体化した影の手の数を増やし、拘束を強める。
『がぁぁぁぁぁぐぅぅぅぅぅ!!!』
拘束を強めた事でフェンリルの心の悲鳴が【闇撫】の手を伝って俺の脳内に響き、良心がズキズキ痛む。
精神系スキルを有しているマリアもその心の叫びが聞こえているようで俺を見る視線が痛いがここで緩める訳にも行かない。
『殺してやる! その喉笛を噛み砕くだけでは済まさぬ! 四肢を一本ずつ喰らって、ジワジワ溶かすように咀嚼して喰らい殺す!』
ほう、まだ悪態を思う元気はあるとは……手加減しなくても良さそうだな。
「出力アーップ♫」
『ぐあああぁぁぁぁぁ!?』
「ちょ!? 先生、ストップ!ストップっス!!」
Mに目覚めるまで縛り上げてやろうか?
慌てて俺に止めに入るマリアに免じてやめる程俺のS心は優しくありません。亀甲縛りで拘束!
ク! なんということだ。
全然、萌えない……だと?
「先生、可哀想ですよ! 動物愛護団体に訴えられるッスよ!?」
「牛の気持ちを一々、考えていたら焼肉は食えない。」
「お、なんだい、フェンリルを捌くのかい?」
「アデーレさん! 解体ショーはいりません! その馬鹿でかい包丁は締まって欲しいッス!」
『ぐぐぐ! 可哀想だと! 情けなど要らぬ!!貴様ら、一人残さず ぐああああ!!!』
「そっから先を口に…いや、頭に思い浮かべるのは俺にとっては禁句だぞ。生かす理由がなくなるぞ?」
「先生! とにかく! 彼女は私に任せて下さい! 」
「わかった、フェンリルは任せる。 その為にマリアを連れてきたのだしな。」
デスマス口調が消え、マリアが本気で俺に説き伏せた事で、仕方なく拘束を少し緩め、マリアに任せてみることにしよう。
◆◆◆◆◆◆
『わふ~♡ そ、そこに触れるはぁぁぁ~~♡♡』
「ここっすね? ここがいいんスね?」
『あ♡そこ、そこじゃああ♡♡』
マリアが俺を宥めすかし、拘束されたフェンリルをモフモフし始めた事で、ようやく抵抗の素振りを見せなくなった。
というか、さっきからフェンリルの喘ぎ声が【闇撫】越しに響くのをどうにかしてほしい。
フェンリルは尻尾は【混沌の沼】に沈んでいて分からないが露出していれば確実に尻尾を振っていることだろう。
表情に出さず、声を出せずにいるが快楽に溺れかけている。
リアル【なでポ】なんて初めて見たな。
だけど、撫でるっていうより、体の大きい、フェンリルの体をマリアの小柄な体で全身をはい回っている感じだな。
マリアは苦痛では無く、快楽で屈服させる気らしい。
フェンリルには【精神同調】での破魔の効果を持つ骨、頭蓋骨に脳が守られている為、【洗脳】【魅了】は効果が無いが、感覚を共有して、彼女の弱点…つまり、敏感な性感帯を感じ取り、そこを重点的に撫で腰砕けにさせて屈服させるとは勉強になるな。
案外、マリアの契約手段の常套手段なのかもしれん。
『んん♡ 全身がだんだん敏感に~♡』
………てっきり、【精神同調】は契約時は言葉の通じないタイプの魔獣、召喚獣と意思疎通を図るのに用いるのだとばかり思っていたが、強情な相手にはこう言う使い方をするわけか。
マリア、恐ろしい娘!
うん、思ってみたかっただけだ。
取り敢えず、堕ちるのも時間の問題だろうから、後はマリアに任せて現在は既に契約状態のフェンリルをどうするかということを考えるとしよう。
当初の目的である契約はできず、召喚獣の弱体化は成功し、大元の力の源である爪と牙を破壊した以上、召喚される分身であるフェンリルの爪、牙も失っているだろう。
例え、今、帝都に攻め込まれようが、カグヤや俺の精霊化を防ぐ手立てが消えた以上、容易に返り討ちに出来る。
『耳は耳はダメ~息を吹きかけるな~♡♡』
……勇者か、海賊王か、駆除屋か知らんが、大元のフェンリルがやられた事実を経路を通じて知っているはずだが、駆けつけようものなら、その時こそ、彼女たちの出番だ。
大精霊に匹敵する 水と雷(風)の召喚獣を二体契約し、魔物、魔族、高位の竜をも従える【悪魔使い】マリア。
【五将】随一の怪力に加え、山や森でも戦いの達人アデーレ女史。
同じく【五将】エレノアと肩を並べる魔術師にして【銀狼の牙】の【氷の魔女】アニの三人が迎え打てる。
アドバンテージであった破魔効果を持つ、戦力を封じた上に、七英雄の一人、鈴木を弱体化させ、捉えたのも大きい。
召喚者側が何を企むんでいるかは不明瞭な部分があるが、それは後で鈴木氏から聞き出せばいいし、戦争の方も先延ばしにできただろう。
と、それより、ナミに念話で連絡を取らないと……
フェンリルを封じた以上、もう、大丈夫だしなナミとの経路を再接続し念話を試みる。
『もしもし? 俺だ俺? 俺だ俺だ俺だ~~』
『……詐欺ですか?』
いえ、ギャグです。いや、不謹慎だったな。 スマン。
まぁ経路は契約した俺とナミの間にしか無い固有回線でつながっている。 コレはマリアやヨッシーにも盗聴することも、回線に割り込むことできない。
俺以外、つながらない。
いつもの小芝居ができるなら帝都の方は攻められていないらしい。 安心したが少し引っかかるな。
『ハァ、その様子ですと無事、フェンリルと契約したようですね?』
『いや ちょっと事情があってだね、倒しはしたが、まだ契約していないんだ。』
『?』
『既に契約された後だった。』
『詳しく話してください。』
『かくかくしかじか』
『成程、まるまるうまうまというわけですね?』
便利な言葉だね?
『はぁぁぁぁぁぁ~~~♡♡♡』
「う~んだいぶ凝っているッスネ?」
『そういうわけだからこっちに来てくれ。』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
事情を話すと、ナミとテレサ、後、セイラも俺の影を通じて来てもらった。
ちょっとやってもらいたい事があったしな。
待機していたマリア達と合流し捕獲したフェンリルの処遇について俺はこの世界を巻き込んだ七英雄通しのを争いを打破する為の考えを述べてみた。
「【既に結んでいる契約を破棄させることは出来ないか?】」
時が止まった。
誰もが絶句し、俺に視線を向けるが俺の発言を理解するまで、数秒間要した。
そして時は動き出す。
「つまり、今からこの狼娘を寝取ろうと? 殺しますよアキラ?」
「アルジサマ? ……モギマスヨ?」
「NTRッスね! 分かるっス!!……それなんてエロゲ?」
『んん♡ ああ♡♡ ………━━━━!!♡♡♡』
「……ある意味、狼より狼。……獣姦?」
「ウチの大将に殺されたいのかい?」
「ちょっと待ってくれ! 誤解だ! そんなつもりは毛頭もないから!」
時が動き出した瞬間、視線と言葉のナイフでメッタ刺しにされた。
どうやら、俺の普段の行い ……というより、【ガリアの最も長い一日】での一件から俺に対する認識に女たらしという烙印が張られている為、他の人間なら兎も角、俺の発言の場合、より深い意味で取られる。
つまり、彼女たちには俺の発言はこう捉えられたということだろう。
「【ぐへへ、この女寝取るにはどうすればいい?】」
……うん、なんだその下衆い発言は、こんな男が目の前にいたら、俺も滅多に使わないスキル【首狩り】【心臓穿ち】の*コロラド殺法でオーバーキルで始末するね!
俺の発言を深い意味で取り勘違いした女性陣から今迄向けられた事のない冷たい視線で見られた。
一部の業界じゃご褒美かもしれんが俺にとっては命の危険というか、ナミとテレサの発言に至っては二重の意味で死んでしまうし、カグヤに知られたらマジで命がないから冗談にならない。
何だか、ナミと再契約して拘束が強まったフェンリルも顔を真っ青にして俺を見ている。
『既に契約している相手がいるにも限らず、自信の契約下にしようなんて行動が寝取る事と、どう違うんですか?』
怒ってる……ナミさんが怒っておられる。
「違う、誤解だ! そうではなくてだな!」
俺は彼女たちの誤解を解くべく、話した。
命、押しさもあるが俺の名誉の為にも冗談を交えずに話した。
俺は寝取るとか略奪愛とかそんな欲望や願望は無い。
無い!
……戦力の強化を目的に召喚獣を集める事を考えたが現状、仮契約を含め、大精霊四柱(光、闇、火、水)、召喚獣三体(風、水、闇)(俺がアキレウスと考えれば三体)と、召喚獣、大精霊の計一四柱の内、半数を占めている。
仮に土の召喚獣であるフェンリルを今回の件で契約できれば過半数を超えるし何より七英雄の一人である鈴木氏を弱体化させ、且つその力を封じた魔結晶がある為、そのまま此方に戦力だけを奪いとったことになる。
戦争を止めるには圧倒的な力量差で一瞬で終わらせるのが効果的だが、俺たちは殺し合いをしたい訳じゃなく、あくまで平穏無事に過ごすか、この世界から去ることが目的だ。
世界征服をしたいわけでも何でも無いのだ。
それに、大精霊と契約できない召喚者側からすれば、召喚獣が俺たちに対抗する手段だったろうが肝心の七英雄が残り三人になった時点で奴らの狙いが変わる可能性が出てくる。
俺、カグヤ対策に大地の召喚獣【神狼】との契約を急いだが彼女を抑えた以上他の召喚獣を求めるだろうが現在、残っている他のフリーの召喚獣は恐らく火、光、元素の三体だ。
そのうち、火は帝都本陣にあり、光は俺が黄泉の入口で倒した以上、空席の筈だ。 ということは残された召喚獣は元素だが、大精霊ともに行方がわからないし、仮に抑えていたにしてもさして脅威では無い。
問題は契約した召喚獣を奪われる事。
マリアが裏切るか、殺されれば召喚獣が二匹とも向こうの陣営に持っていから形成が逆転しかねないのだ。
『くぅ~ん、沼に沈んだ体も撫でて~~~~♡♡』
「泥越しにマッサージって何だか、泥パック見たいで気持ちいいっすね?」
……そうなれば、土、水、風の召喚獣が抑えられ、これで万が一残りの召喚獣も揃えられたら俺たちの勝目は格段に低くなるのだ。
「今、思えば、神狼と契約して真っ先にカグヤや俺を狙うより表向き、敵対状態にあるブリタニアのマリアとフリーのヨッシーを帝国側の人間である鉄人か駆除屋がフェンリルと契約して襲った方が自然だろう。」
その発言にさっきまで、マッサージ?をしていたマリアの表情が一瞬、凍りつき、俺とフェンリルを交互に見る。
「じゃ、じゃあもし、召喚獣の捜索にウチが来なかったら……夏休みに先生と行動を共にしていなかったら……」
今、撫でられて、恍惚の表情を浮かべる堕ちかけの犬コロを従えた七英雄の誰かに殺されていたかもしれないな。
あくまで憶測に過ぎないが、それは鈴木氏に尋問して情報の裏付けを取ればいいが、間違っていないだろう。
それに、マリアは召喚者側に騙されていたとは一度は向こう側であったし結果的に裏切った訳だから切られる理由も明確だ。
マリアは固有スキル【精神同調】による読心、洗脳、情報収集など幅広い能力に加え、召喚獣、魔族、魔物の軍勢を操る魔力量に至っては俺とカグヤを大きく超え、【精霊化】の対極にあるスキル【魔物化】も使えるようだが、今回の相手になるとまずい。
本体のフェンリルに直接【精神同調】で話し合いに持ち込もうにも神狼は他の召喚獣と異なり、牙、爪(恐らく皮膚も)骨に破魔の力を持つ召喚獣だ。
頭蓋骨に守られた脳にお得意の【精神系】のスキルが一切通じない。
だからこそ、マリアを守る為(ヨッシーの心配をこの場にいる誰もが心配していない)にもここでフェンリルをどうするかに話が戻る。
殺すか、再契約するかしかない。
だがフェンリルの本体に止めを刺せば、それは自分勝手に戦いを強要させる召喚者と変わらない。
フェンリルは伝承では精霊を食い荒らす魔獣と語られる一方、霊山の例脈、土地を管理し、豊穣の神としても祀られている。
殺すのは初めから論外だ。
土地が荒れるし、結果的にアースに住む人々が苦しめられる事になる。
戦争を起こすのと同じくらいに人が死ぬ大飢饉が起こりかねない。
再契約つまり、他人との契約を破棄させるしか手段が思いつかなかったんだ。
NTRって言われても仕方ないなコレは。
『き、気持ちよすぎて、おかしくなる。 これ以上はおかしくなる~~~~♡♡♡』
その前に、恐怖を打ち消すために無心にモフってるマリアを止めないと、契約前にフェンリルの脳が快楽で焼ききれるな。
さっきから会話や思考の合間に闇撫で越しに聞こえてくる嬌声も止めんとな。




