賢者対賢者 その1
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◇賢者◆
全ての魔法を行使できる魔法使いを指す称号
知力・精神力共に高く、相反する黒魔法と白魔法を完全に使いこなせる。
高位の賢者は外と内の魔力を自在に使いこな為、擬似的な精霊化状態《源呼吸など》になる為、理論上、精霊魔法を精霊因子も無しで使える様になる。
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魔術師は、詠唱に時間が掛かる欠点を補うために使い魔か、前衛の戦士に詠唱の時間を稼いでもらう必要がある。
長所は術のシステムが身に付いていれば無限に応用性が聞くこと、秘薬、呪具、魔石があれば自信以外から魔力を得ることが出来る為、状況次第で無限のスタミナとパワーを得ることが出来、天災級の魔法が放つ事が出来る長所がある。
そして全ての魔法を使いこなす賢者にして詠唱時間という弱点を克服した二人の戦いは魔術師の概念を覆す事になる。
「【魔法開錠】」
アキラがその魔法の【言霊を口にしたと同時に、多種多様な黄金の鍵が虚空に浮かび上がり、次々とエレノアに向かって矢の様に殺到する。
シーフの開錠スキルを魔法化し、魔法障壁、封印、魔力の術式を「錠」に見立てて「開錠」つまり解除するアキラの新魔法である。
アキラの観察眼、洞察眼も加わり、ただの一本でも魔法障壁に当たればたちまち開錠され、残った黄金の鍵に蜂の巣にされるだろう。
「風よ!」
それに対してエレノアはすかさず、詠唱では無く精霊に呼びかけて効果を発揮する精霊魔法を行使して(風精霊に囁いた)自身の周囲に風を巻き起こして黄金の鍵を全弾、弾き飛ばす。
詠唱では無く、精霊と意思を通わせ契約することで行使できる高等魔法【精霊魔法】を使い、風の精霊がエレノアを守ったのだ。
しかし次の瞬間エレノアは【瞬動術】でその場から離れる。
離れたと同時に代わりに風精霊の体にいくつもの穴が空き、そこから血濡れの透明の鍵が現れ、風精霊の体を構成していた魔力を霧散させ、実体化を開錠した。
━━不可視の魔法攻撃。
アキラは【魔法開錠】を囮にして、ステルスを自分自身では無く、魔法自体にかけて透明にした本命の【魔法開錠】の黄金の鍵を放ったのだが、周囲に吹き荒れた風を通して見えずとも空間で感じ取ったことで難を逃れたのだ。
猟兵のステルス能力、開錠能力を黒魔法に応用しての攻撃、しかも【投擲】のスキル補正で発射速度、命中精度が高い新魔法でエレノアに容赦無くせめて立てる。
そして【投擲】された透明の鍵は次の布石、わざと回避できる逃げ道を残し、瞬動術を使わせ、誘い込み、自信は【縮地】でソコに突進し、逃げた先に合わせて右拳を繰り出す。
だが、エレノアも誘い込まれたのは承知だったのか、襲い来る拳に対して臆することはせず、アキラを見据えながら迎撃態勢をとる。
格闘術、接近戦においてはアキラに分がある。 だがその利点、弱点を理解しているエレノアは今度は召喚魔法で成人男性の背丈と同じ大きさの魔物の右腕を部分的に召喚し、襲いかかる。
「!! 器用な真似を!」
毒づき!左手でガードするも、巨大な質量を持った右腕はアキラを容赦なくガードの上から殴りつけた。
アキラ自身の【縮地】とエレノアの【瞬動術】の速度が加算され、召喚獣の腕力以上の力でたまらず吹き飛ばされてしまう。
建物の壁に激突する寸前、アキラは背後に白魔法の障壁を展開、障壁に柔軟性を加えて衝撃吸収マットの様にして衝撃を逃がし態勢を整えた。
其れを見届けたエレノアは召喚した右腕を打ち消し余分な魔力消費を抑え、次の攻撃に備えた。
ここに至って両者にダメージは無い。
本人達にとってはこれでも小手調べに過ぎないのだが建物の窓から観戦している者達はあまりにも高レベルな戦いに唖然としていた。
七英雄のアキラはシーフのスキル【隠密】【開錠】【投擲】を魔法に応用し変幻自在に責め立て、五将軍のエレノアは状況に応じて最適な魔法を使いこなし、全ての攻撃魔法に対処し、最後の一撃に至ってはアキラに競り勝ったのだ。
「へ~召喚獣のブレスや、魔法攻撃を召喚するんじゃなくて体の一部を召喚したんだ。 結構できるッスね。 あの人。」
「・・・・・・それよりもエレノアがアキラの読みを上回っての攻撃をしたのが驚き・・・アキラ、もしかして本調子じゃない?」
同じ召喚魔法を会得しているマリアはエレノアの部分召喚技術の練度に感心し、アニはアキラに何か違和感を感じて首を傾げる。
そして当事者の二人は攻撃の隙を伺いながら、軽口を飛ばす。
「以前の君より、遥かに上達したようだな。」
「貴方に敗北したおかげですわ。その点に関しては貴方に感謝していますわ。」
一見、エレノアが優勢に見えるが、実際は違う。
アキラは真祖の吸血鬼であるテレサと対峙した際に自身に【魔改造】で強化した魔力抗体を体内に仕込んでいるため、真祖の呪力をも弾き返す抗魔力を持っている為、通常の魔法攻撃は通らない。
その為、物理攻撃か大精霊クラス、天災クラスの魔法、神秘の攻撃でないと効果は無い。
その事実を事前にカグヤから聞き及んでいたエレノアは自身の手札の大半を失った状態で戦わなければならない事を理解していたため、召喚魔法による物理攻撃でアキラに攻撃をする手段をとったのだ。
欲をいえば今の一撃で勝負をつけたかったのだが、生身で生き延びるという点において逃げ隠れ、奇襲を得意とするアキラにとってあの程度の攻撃では効果は無い事が証明されてしまった。
かと言って手持ちの魔物や使い魔を召喚しても死神の異名を持つアキラを相手では一撃で葬られるか、契約関係を上書きされて奪われかない。
七英雄 【鉄人】の鈴木が飛竜の死骸を操ったアキラに倒されたのはまだ、記憶に新しい。
自身が記憶している膨大な量の知識を照らし合わせてアキラに効果のありそうな魔法が無いか、そして新たに効果のある術式を構築しながら決闘に望む分些か不利になる・・・
そう賢者である冷静な自分が義憤に燃えた自分の熱を覚まし、冷静に勝つための手段を模索し始め、同時に並列思考で、口頭では無く、頭の中で詠唱する無詠唱スキル【思考呪文】で次々魔法を唱え、溜めて行き次の攻撃に備えた。
「魔法の装填は済んだようだな?」
その言葉にエレノアは内心ギクリとするが何とか表には出さずに住む。
━━見透かされている。
アキラは魔改造で強化した眼力の特性ゆえ、エレノアが遅延呪文で魔法をストックしていることに気付いたのだが、其れを知らないエレノアにとっては驚愕した。
「そちらの準備が出来た様だし第2Rと行こうか 【源呼吸】発動!」
賢者と死神の戦いは未だまだ、終わらない。




