魔法談義?
筋肉痛!
でも更新!
日刊ペースに戻します!
よく、異世界人達が現代知識、アニメ、漫画、ゲーム等を参考にした魔術、剣術を使うが、この世界の住人も逞しいもので、彼らに頼らずとも日々、魔法技術に磨きをかけている。
アキラ達、七英雄が召喚される前から既に、通信魔石、転移魔石、ギルドカード、道具袋、遠見の水晶、撮影機、映写機、蓄音機の代用になるものも発明されているのが良い証拠である。
この世界の技術、文明を加速させている異世界人だが、この世界の文明の下地が無ければここまでの発展はなかったであろう。
そして、ヴァルキュリア帝国にも主君の為、帝国のために日夜、魔法学を研究する学問の徒がいた。
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帝都 宮殿内食堂内 テラス
ソコに、金髪を縦ロールにした神々しい美少女と、黒というより、濃紺に近い髪を短く切りそろえたどこか神秘的な美しさを持つ美少女が食後のお茶を楽しみながら話に花を咲かせていた。
しかし、金髪の令嬢は、ヴァルキュリア帝国の大幹部【五将軍】の一角にして【筆頭魔術師】・【賢者】の称号を持つ【戦乙女】
【エレノア・L・V・エーデルワイス】
対するは、紺髪の少女もここ一年で急激に力を付けだしたガリアの超新星・【銀狼の牙】に所属する黒魔法のエキスパート・【氷結の魔女】
【アニ・スコールハート】
傍から見たら、見目麗しい美少女達のお茶会だが、彼女たちの実力は竜すら超え、天災クラスであり、話す内容は美食の会話に偽装?した魔術の研究と探求である。
最も、アニが真に熱意を持って語るのは当然、美食の話であり、話の内容も料理に関することばかりなのだが、魔術は料理、絵画、学問、文学、医術、そして料理にも通じる部分がある為、会話が成立し、魔術の神秘、自身の研究成果を軽々と口にする物では無いと思っているエレノアは、【錬金術は台所から生まれた】という格言から料理の調理法、味付け、材料などを暗号にして話しているのだと解釈し、その会話から魔術的要素を拾い、解読に努め、アニの魔術師としてのレベルの高さに噂に違わぬ高位の魔術師であると畏怖と尊敬の念をとっていた。
例えば、彼女たちの最初の魔法談義?の内容はコレである。
「・・・南国から取り寄せた果肉を牛の乳で混ぜ合わせた飲み物が最高だった。また飲んでみたい。」
「アニさんがそう、仰るのならとても美味なものなのでしょうね。」
(内容から察するにこれは新しい秘薬の調合方法、それも果肉を使う事から死神が作ったガリアの秘薬に近いものと推察できますね。
しかしこう単純に話すわけがない、裏の更に裏を読まなければ・・・
南国・・・魔法陣を描く際に南の方角を重要視するということでしょうか?そして果実は古くから、知性や生命の象徴として取り扱われる神秘の物でしたね。しかしシン国の生命の実や十字教の知恵の実とは違い酸味のある果実ということは別の効果のある物の筈?それともその果物を発酵させるという暗示でしょうか?そして牛の乳は生命の象徴・・・いいえ、確か東方では牛は方角を表す意味でもあった筈・・・・・・このお方、我が国秘伝に当たる東洋魔術にも精通しているというのですか?)
「・・・・・・風呂上りに冷やした状態で飲むと効果的。」
(!! やはりポーション? この場合、風呂上りとはのぼせた状態、つまりバーサク状態を回復させる効果を持つというのですか? 熱を覚ますとはそういうことですね? フフフ、しかし魔導の秘奥がこんな日常会話の中に隠れているとは誰も思わないでしょうね。)
アニは単に、言葉の通りアキラが以前作ってくれたミックスジュースの話をしているだけなのだが、エレノアはアニを過大評価しすぎて勘違いを起こして深読みしすぎ、ミックスジュースを新たな高等な秘薬のレシピであると思い込み、アニの自慢話?を智謀を尽くした高度な知能戦・挑戦と受け取り、不敵な笑みを浮かべて茶を楽しんでいる。
結果的にコレがエレノアの探究心と向上心を刺激し新たな魔法薬・魔法・理論を作りだし、そのお礼にと食事に誘われるのだからアニにしても利益がある。
実際、エレノアの思惑も外れてはいるがソコは魔法に関しては帝国随一を誇る才媛。
この会話がきっかけで本当に鎮静効果のある薬品や魔法を創りだしてしまい、この結果が余計にアニに尊敬の念を抱くという悪循環?を生み出していた。
アキラ争奪戦の報酬である【満漢全席】【中東フルコース】【ゲレマニア流バイキング】など美食を堪能し、後は帰るだけであったアニもエレノアが何度も豪華な食事をご馳走してくれるので、食費を節約出来るだけでなく、アキラやガコライも逃げ出す、何時間もする美食の話を聞いてくれるエレノアに好意的な感情を持ち、得難い友人として付き合うのであった。
そして本日も、表向き、お茶会に偽装した魔術談義?に花を咲かせているのであった。
「氷結粉砕・・・ですか?」
「・・・そう、薬を調合する際、一度凍らせてから砕いて煎じれば効果の高い医薬品が作れる。」
今日は珍しく、料理等の暗号?を使わない、アニに首を傾げるエレノアだったが、自分が思いつかなかった薬の製法に好奇心が勝り、疑問に思いながらも、続きを促すことにした。
「盲点でしたわ、確かに凍らせてから砕けばより細かくする事ができますわ。」
「・・・それと戦闘中に飲むこと、平時でも病人や弱ったもの、子供が服用することも考慮に入れて、苦味を取り除き、蜂蜜か果汁を混ぜて飲みやすくする必要がある。 これはガリアでは常識。」
肥えた舌を持つアニは自身が見て、嗅いで、食べた食品からある程度レシピを再現することが出来る程の味覚を持っているので、散々アキラから強奪して食べた携行食糧、ミリ飯、ポーションを舌で記憶してそこから再現し、自分なりにアレンジしたものやオリジナルの薬品、料理を創作するに至ったのだ。元々の知能の高さと魔術師としての技能もあった以上、薬師、魔術師としての腕前でアキラを超えるのも道理ではあった。
・・・因みにこの事実を知ったアキラが進んでアニに手料理を振舞う事になり、その真相をガコライは知らず、ヤキモキする事になるのだが、それはまた別の話である。
アニとしては何時もと変わらず美味しい食べ物、飲み物としてアキラが作った美味しいポーションを美味な飲食物として分類して話していたのだが、コレが結果的におかしな騒ぎを起こす要因になってしまう。
「確かに、あのガリアの秘薬は効果も高く、飲みやすい様にされていましたわ。 ですが、よろしいのですか? 製法は秘伝とお聞きしましたが? まさか、アニさんが製作者なのですの? てっきり死神が作ったものとばかり思っていたのですが?」
流石にその薬をアキラが作ったことは有名であるし、最近では劇として取り扱われているので民衆でも知っている。 当然エレノアも知っていた。
(ハッ!もしや、真の製作者はアニさんであってあの死神が力づくで製法を聞き出し、我が物としたのでは!? これは表立って告白できないアニさんが、親友の私に暗号で伝えようとしたのでは!?あ、あの魔族め~~!!)
付き合って未だ、一週間ばかりの友人がアキラに泣く泣く、新薬の製法と名誉を横取りされた光景が脳裏に浮かび上がり、義憤に燃えるエレノア。
(しかもその製法を我が物にする為に自身を悲劇の主役にして、民衆や世論を見方に付けるとはなんて周到で汚いやり方・・・あの魔族が考えそうなことですわ!!)
実際、アキラの外道ぶり、用意周到さを身をもって体験しているエレノアはそのアニの悲痛?な告白を受け取り、目に涙を薄ら浮かべ、アニの手を両手でしっかりと握る。
「アニさん! 貴女の想い、確かに受け取りました! 不肖! 私、帝国五将軍・・・いいえ、アニさんの親友エレノアとして貴女の力になりますわ!! 何時でも相談してください!!」
「・・・・・・? ありがとう。」
(・・・・・・そんなにあのポーション飲みたいのかな?)
「確か本日、あの憎き魔族がカグヤ様と一緒にやってくると連絡を受けています。 フフフ、前回は不覚を取りましたが、私を以前のままと思わないことね アキラ! アニさんの親友! エレノアが諸悪の根源を今日こそ滅ぼしてくれますわ! 覚悟しなさい! オーッホッホッホッホ!!!」
窓が割れんばかりの肺活量で高笑いするエレノア。
帝国の義憤に燃え上がる勘違い天然魔法少女?は今日も平常運転である。
かくして、アキラの悪い予感は見事に的中していたのであった。
勘違い物です。




