一番弟子 エピローグ
遂に名前だけしか出なかったあの娘が現れます。
捕捉注意
これはアキラがまだアキラが失踪する前の時系列でこの時は表向きはアキラの名前は【アキレウス・ブラック】で通っていました。
ガリア城 訓練場
「……つまらん」
「何がですか? 主様。」
「いや、ナミかアリシア目当ての馬鹿共が何か突っかかってくるかなと期待して返り討ちもしくは新技の実験体にしてやろうかと意気込んでいたんだけどまだ、誰ひとりとして来ない……何故だ?」
アリシアの特訓を引き受けたら嫉妬に狂った馬鹿貴族を一掃できると思ったのだがなかなか来ない……今の俺の心境は巌流島で武蔵をまつ小次郎だな。
「……あの、以前素手で豚(宰相のバカ息子)とゴリラ(その取り巻き)二頭を叩きのめしましたよね?その上、素手で剣をへし折って…宰相派の貴族や近衛兵は当事者ですから無暗に絡んでこないと思いますし、国王と元帥の御息女の師でもある主様に突っかかってくる馬鹿はいないのでは?」
「……」
そ、そうだったのか~~!!!
ぐぬう、腰ぬけめ!!それでも貴様ら愛国者か? 負けるとわかってても掛かってくる気概のあるかわいい馬鹿はいないのか!?
「……主様って偶に凄いバカって言われません?」
「いや、アリシアの提案を受けた時、ああコレで馬鹿どもに散々イタズラ魔法を掛けて弄れる!そう思ったんだけど……その後の事はあまり考えてなかった。」
「なんだか、一発屋の旅芸人みたいですよ?」
「あ~あ 仕方ない、代わりに国王の耳をロバの耳になる魔法でも掛けるかどう思う?赤毛の美しいお嬢さん?」
「気付いておったか。流石と言うべきかの…… ブラック卿。」
俺の呼びかけに古めかしい言葉づかいの年若い少女の声のみが返答する。
「俺は貴族でも騎士でも無いけどね?」
景色が歪み、そこに紅いドレスに赤毛の髪を後頭部に編みこんだお姫様然とした令嬢が現れる。
とてもこの風貌からは考えられない程、洗練されたステルスだ。
元、暗部のギルドナイトに所属していたリィーンとアリシア以上の気配遮断だ。
これ程の使い手に思い当たる人物は只一人。
「挨拶が遅れたの……妾の名はエイリアス・ド・マイヤール 察しの通りマイヤール家の三女じゃ。よろしくのぉ 義兄上」
マイヤール家の中でも珍しい燃えるような赤髪の少女…歴代最高の資質を持った秘蔵っ子が俺の前に現れた。
「先ずはステルスで近づいた非礼を詫びよう。 じゃが姫様や姉上の師である者の実力を知っておきたかったのじゃ……。」
「…それで、どうかな?」
「妾のステルスを見破ったのじゃから級第点かの…中々如何して大した索敵能力じゃ。」
なんだか強烈な令嬢だな。
年齢は確かクレアより一つか二つ上の14~5歳だったはずだが……王女のクラリスや大貴族の令嬢で姉のリンやアリシアより偉そうだ。
イメージ的には帝国のわがまま、高飛車お嬢様ってところかな?
「それは、よかった。」
俺は顔には出さなかったが、内心驚愕していた。俺の魔改造で強化された【透視眼】を持ってしてもステータスを看破することが出来ない。
ステータスを隠蔽するスキルか呪い、装備もしくわ俺より実力が上で無いとこうはならない。
さすがこの若さで暗部のトップになるだけは在る。彼女の気配を察知できたのも普段から行ってる源呼吸での索敵……要するに俺の間合いに入ってきたからだ。
マイヤール家の麒麟児か…只のおしゃまなお嬢ちゃんじゃ無いね。
「武勇伝でよく聞く千年以上前の闇の勇者……我らの遠い先祖にあたるアキレウスの名を持つ男に興味が沸いての……一目見たいと思っていたのじゃが……姫様の護衛を姉上に引き継いだ後、アキレウス殿とは不運にも丁度入れ違いで任務でこの国を出ておってな?先日ようやっと帰ってこれたという訳じゃ」
「それはそれは、長期任務お疲れ様です。」
そうして暫く彼女と取り留めのない話しをするが急にモジモジしだすエイリアス。
如何したのだろう?
「……その~なんじゃ。 普段通りの話し方でよいぞ? 父上や姉上から文でどういう人物かは知っておるし、無礼などと騒ぐつもりもない……」
「それじゃ、エイリアスちゃんで……」
「すまぬ。 可及的速やかに前言を撤回したいのじゃが……」
「言質はとったからきけませ~ん。」
そういうと頬を膨らませ、むくれるエイリアス……
「ま、まあ良い、下の姉上が世話になっているしの大目にみるとしよう……妹として改めて礼を言う……多忙故、あえる時間も限られておるが姉上をこの国をどうかよろしくの……」
そう言って彼女はペコリと頭を下げその場を去って行った。
「……どうしました主様?」
「……や、何でも無い、そろそろアリシアが来るころ合いだな……」
何故だか分からない…だが初対面の筈なのに、彼女を見ていて言い知れぬ怒りや殺気の様な感情がいつの間にか俺の中で渦巻いていた。
「師匠~」
不可解な感情に戸惑っている内に、アリシアが来た。
兎に角、今はアリシアの指導に集中しないと…
■ □ ■ □
~調査兵団(暗部)執務室~
「未だ、準備期間中に駒…それも相手の駒に接触するのはルール違反じゃないかい?」
フードを被った子供がカラカラと笑いながら、執務室の主、エイリアスに話しかける。
「何の事じゃ? 妾は世話になっている姉の師に挨拶にいっただけじゃ? ここで逢うのを避ける方が不自然じゃろう?」
「……自分の駒が優秀だからって暇つぶしに僕の駒に接触されちゃ困るんだけど?」
「カカカ、主が涙目で嘔吐しながら召喚した男に興味が沸いての? 良かったではないかェ 醜態をさらしながら召喚した甲斐があったの?」
「それは言わないでくれないかな? それより君こそ、大丈夫? 彼は前世の事を覚えていないけど魂はそうじゃ無いんだから……下手に僕らが接触したら記憶を取り戻して、殺しに掛かってくるよ?事実、それを感じたからこの部屋に逃げ込んだんだろ?」
「フン、怖い物見たさと言うやつじゃ……接触は控えるし駒の成長期間中は手をださん。」
「……君も彼女を完成させる為に余りやり過ぎないようにね……準備期間の間に国が消えかねないんだから……それじゃ、そろそろ僕は帰るよ。」
そう言ってフードを被った子共は亡霊のように消え去った。
「まさか、本当にアキレウスの生まれ変わりとは……カグヤの完成を急ぐ必要がありそうじゃな……」
この半年後、アキラとカグヤ……死神と戦女神は邂逅する。
黒幕登場!
一人、正体判明!!




