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第7話:歪みの空間迷路

烈風のインパクト


第7話:歪みの空間迷路


野生の悪魔どもを蹴散らした俺たちは、紫の雲が渦巻く魔界の奥地へとさらに進んでいた。

だが、そんな俺たちの前に立ち塞がったのは、見上げるほど巨大な黒い石壁で造られた、先がまったく見通せない『巨大迷路』だった。

「何だこれ……。ガミジンの城に行くには、ここを通るしかないのか?」

俺が不気味な石壁に触れようとした瞬間、氷華が「待って、触らないで」と手を制した。

「ここはただの迷路じゃない。空間を支配するガミジンの魔力が満ちているわ。おそらく、普通に歩いても永遠に出口には辿り着けない『空間の無限ループ』よ」

「マジかよ。それは面倒くせえな〜」

レンが指先で水の弾丸を遊ばせながら眉をひそめる。

実際、試しに俺が少しだけ角を曲がって進んでみると、ほんの数十秒歩いただけで、なぜかレンたちのいる元の場所へと戻ってきてしまった。空間そのものがねじ曲がっている。

俺たちが頭を抱えていると、後ろからポリポリと小気味良い音が響いた。

「なーんだ、そよ風くん、そんなちっぽけな迷路にビビってんの? だっさー!」

姉のゴスロリ少女がペロペロキャンディを口から離し、不敵にニヤリと笑う。

「そうなの。ウチらの頭脳と能力があれば、こんな迷路、ただの遊び場なの」

妹のパンク少女もポテチを齧りながら無表情に言い放ち、2人で同時に前に出た。

「じゃあ、ウチらの超天才的な攻略法を見せてあげる! いくよ妹ちゃん!」

「うん、お姉ちゃん」

姉が手を掲げた瞬間、空中にきらきらと光る硬質なアメの結晶がいくつも生成された。

彼女はそれを、自分たちが通った曲がり角の壁に、次々とガキィン!と深く突き刺していく。

「ただ歩くだけじゃ空間がループするからね! こうやってウチのアメを道標(ルート)にして、空間の『繋ぎ目のバグ』を見つけるんだよ!」

「なるほど、目印をつければ、どこの空間がねじ曲がってるか一目で分かるってわけか!」

レンが感心したように声を上げる。お菓子を使った、あまりにもトリッキーな空間追跡だ。

しかし、歩みを進めるほどに迷路の歪みは激しくなり、ついには目の前が行き止まりの巨大な石壁に塞がれてしまった。アメの道標もここで完全に途切れている。

「あーあ、行き止まりじゃん。やっぱりダメか……」

俺が落胆しかけた、その時だった。

「誰が行き止まりって言った? 道が無いならさ、作ればいいじゃん」

妹ちゃんが口元でピンク色の風船ガムを、今度はこれまでにないほど巨大に膨らませた。

「『チューイング・ボム:メガバースト』」

ぷっと吹き飛ばされた巨大なガムの爆弾が、行き止まりの石壁にべったりと張り付く。

「下がって。……爆発するの」

次の瞬間、ーーードガァァァァァ!!

道場での爆発とは次元が違う、鼓膜が破れそうなほどの大爆破が轟いた。

凄まじい爆風と煙が晴れたその先を見て、俺は目を見開いた。

ただ石壁が壊れただけじゃない。ガムの凄まじい爆破エネルギーによって、ねじ曲がっていた空間の壁そのものが強引に吹き飛ばされ、その向こう側に、禍々しい黒い尖塔――三魔神ガミジンの居城がはっきりと姿を現したのだ。

「うそだろ……空間ごと爆破して近道を作ったのか……!?」

「ふぅ、顎疲れた。お姉ちゃんアメちょうだい」

「はいはーい、よくやったねー!」

何事もなかったのようにお菓子を食べ始める双子の背中を見て、俺はまたしても完全に圧倒されていた。こんなふざけた能力なのに、やっぱりこの2人、バリくそに強ぇ……!

「よし、道は開けたぜ。ガミジンの野郎を引きずり出しに行こうか!」

レンが銃口を城に向け、氷華もまた静かに魔力を高める。

双子の力で迷路を突破し、ついに俺たちは最初の三魔神の城の前に立った。

すると、開かれた城の門の奥から、

「ギィィィィ……!」

と不快な音を立てながら、これまでとは比べ物にならない威圧感を放つ巨大な悪魔が姿を現した。ガミジン直属の門番だろう。

「何だよ……こいつ。デカすぎだろ」

俺が思わず気圧されていると、

「関係ない。ただ倒すだけ」

と、隣で妹(パンク女子)の方が無表情に、冷淡に言った。

その言葉を合図に、氷華が鋭く片手を掲げた。凄まじい氷の冷気が悪魔を襲い、その巨大な足を瞬時に凍りつかせる。

しかし、その悪魔が少し力を入れただけで、絶対のはずの氷は、

「パキィィン!!」

と派手な音を立てて、一瞬で粉々に割れてしまった。氷華の氷を力技で破るなんて、格が違いすぎる。

「チッ、ならこれならどうだ!『バン!バン!』」

レンの鋭い銃声が響く。指先から放たれた超圧縮された水の弾丸は、悪魔に触れた瞬間、激流の『鎖』の形へと姿を変えた。水の鎖が悪魔の太い腕と巨体をがんじがらめに縛り付け、その動きを完全に停止させる。

「迅、今だ!!」

レンが叫ぶ。

「おおおおおッ!!」

今だ。この瞬間のために、俺はあの極上地獄門で死ぬ気で筋トレと体の使い方を叩き込んできたんだ。

足の裏で大地を掴み、腰を回し、すべての体重と回転のエネルギーを右拳のたった一点へと乗せる。厳十郎さんの教えと、レンの『シュッとやってパンッ』の感覚が、今、完全に一つに噛み合った。

「喰らいやがれぇぇッ!!!『そよ風砲(インパクト)』ォォォッ!!!」

―――ドッパァァァンッ!!!!!

魔界の空間そのものを爆裂させるような、凄まじい烈風の衝撃波が拳から放たれた。水の鎖で固定された悪魔の胸の核(コア)に向けて、目に見えない空気の杭が真っ直ぐに突き刺さる。

衝撃波が突き抜けた瞬間、巨大な悪魔の体は、内側からの圧倒的な圧力に耐えきれず、砂細工のようにボロボロと音を立てて崩壊し、黒い霧となって霧散していった。

「はぁ……はぁ……っ!」

腕の骨は軋んでいない。肉体が、完全にこの烈風の威力に耐えきっていた。

門番の悪魔が消え去り、城の奥へと続く道が完全に開かれた。

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