第5話 宴
夜中に目覚めてしまい、昨日は連続投稿できないと言ってましたが、今日も投稿します。
昨夜の後書きは削除し、また昨日の文中での狩りの人数では、今日の話と辻褄が合わなくなり、4から6人に増やしました。
混乱されたかもしれませんが、ご容赦ください。
集落に帰ると、久しぶりの大量な獲物に待っていた女や子供たちが声を上げる。
「うわー、凄い。」
「こんなに獲物が取れたなんて、久しぶりだわ」
「このお肉、皆で料理した方がいいわね」
「そうよ、今日は皆で、集まって一緒に食べましょうよ」
「それがいいわ。今夜は宴会ね」
「だったら、家から壺を持ってくるわ」
「そうして、あんたの所のは大きいから、皆で食べるのに、重宝なの」
「青物も欲しいわね。誰か摘んできてくれる。」
「じゃあ、子供たちにセリなどを採りに行かせるわ」
女たちは男たちになんの相談もなくさっさと決めていく。
ここのリーダーでもあるサクも今夜の段取りを後で知るのだが「まあ、いいだろう」と追認するしかない。
女たちは見事の手つきで獣をさばいていく。
ただ刃物を使ったのではない。この時代、日本には鉄がなかった。人類最初に鉄器を使いだしたのは、アナトリア半島{トルコ}に住んでいたヒッタイト人と言われる。日本に伝わってきたのは古墳時代のころだ。だから、縄文人は黒曜石を使った。黒曜石とはその名の通り、黒色の石で、火山活動で溶岩が急速に冷えて出来たガラスの一種だ。薄く割れば鋭い刃となる。
これを棒切れに挟んで、包丁のように扱っている。意外に切れ味はいいのだ。
「それにしても凄い量ね」
「イノシシまで狩って来るなんて、思わなかったわ」
「どうしよう、これじゃあ、当分食べきれないわ」
「塩漬けにして、蓄えておきましょう」
おしゃべりをしながら、手を休めない。柏の大きな葉に裁かれた肉が次々と積まれていく。
こうして、宴の準備は着々と進められた。
集落の4家族の全員が焚火の周りに集まった。
男、女、子供を含めて25名の手には、それぞれ木で作られた器がある。あふれるばかりの料理が盛られていた。
また、大人たちの手には、ほとんどが男だが、盃がある。中にはブドウなどを自然発酵させた料理酒。少し酸っぱく、甘みもないが最高の御馳走だ。
「では、今日の収穫とケンの病気快癒を祝って、皆で腹一杯、食べよう」サクの掛け声で宴がはじまる。
久しぶりの肉だ。皆が一斉に肉にかぶりつく。食べることに夢中で、誰もが黙っている。
そんな無言の時間が少し続いた後、隣家のオヤジがおどけて言った。
「ケンの病気回復を祝っての宴だが、今日の獲物はほとんどがケンによって仕留めたようなもんだからな。俺たちはケンにご馳走になっているようなもんだ。」それが話の糸口となる。
「あら、ケンちゃんがほとんど獣を捕まえたの?昨日まで唸って、寝ていたのに。」
「いや、それが今日のケンはとんでもなかったんだよ。矢を放てばすべてが、当たった。」
「うん、今日のケンは神がかっていた。ああいうのを“百発百中”て言うんだろう。」
「ほんと、今日はケンが主役だった、ケン様様だよ。」大人たちが次々とケンを讃えてくれる。
ケンは誇らしいやら、恥ずかしいやら、何とも言えない顔をするしかない。
「ケン。みんながあれだけ褒めてくれている。何か言えよ。」サクの弟、イサが横から言って来る。
ケンにとっては叔父に当たり、何かと可愛がってもらっている。狩りのときも、病み上がりのケンを気遣ってくれた。イサはこれだけ甥っ子の猟が上手いのだから、ケンを大人扱いした方が良いのではと思っていた。引っ込み思案のある甥の尻を叩いてでも、人前で堂々と何か喋れと思った。
「いや、そんな」ケンは口下手なので、こういう人前で話などできない。
「そら、どうした。何か一言話せよ」
「ケンをあまりいじめないで」ラムが助け舟を出す。
「そうか?じゃあ、無理強いはしないが、大人として正面から立ったほうがいいぞ」あっさりと取り消したのだが、少し残念そうに言う。
イサとしてはケンを大人扱いしても良いと思っていたのだが、ラムは母親としての思いからなのか、可愛い息子を子供のままにしておきたいのだろう。
少し酔いが廻って来たのだろう、大人たちの声が一段と張りあがり、笑い声が高くなる。
楽しい宴だった。
「おにい、もっと」黙々と食べていたミイの器は空になっている。今日も膝の上のミイが要求する。
「うん、待ってろ」小さな手から器を受け取り、料理を盛る。
「熱いからな、ふうふうしてから食べるんだ」
言われた通り、ミイが小さな口を細めて、息を吹き付ける。
(ほんとに、かわいいな。やっぱ、ミイには敵わん)ミイの為なら何でもやってあげたくなる。
そんな時だった、ケンの脇腹をつつくものが居た。
「うん、なんだ?」
それは今日一緒に狩りに行った、1才下のツムだった。
狩りは少しでも人手が多い方が、収穫も期待できる。だから大人と一緒に駆けまわれるようになった少年は駆り出される。
それは男として認められる一歩でもあり、大人たちの足手まといにならないよう二人で頑張った。
幼なじみで、喧嘩もしょっちゅうやったし、一緒に弓の練習もした仲でもある。
「明日からまた弓の練習をしたい。付き合ってくれ」真剣な顔で言ってきた。




