秘密の館 ― 創造主アンドレの審判
「――ハッハッハッハ! 驚いたぞ、ジュージュ! いや、この世界の『元凶』よッ! まさかこれほど無機質で、これほど退屈な場所が、オレたちの旅の終着駅だとはなッ!!」
漆黒の空間に鎮座する、物理的な「ジュージュ・システム本体」。その巨大な歯車が噛み合う不気味な律動を前にして、オレは黄金の翼をこれでもかと大きく広げた。 恐怖? そんなものは存在せんッ! 記憶を失い、名前さえも燃やし尽くしたこのオレに残されているのは、ただ一つ――この不条理な設計図を、オレたちの「熱」で真っ赤に焼き切るという意志のみだッ!!
「……フィリップ、危ないわ! その機械から流れてくる魔力、今までの誰よりも……不吉な色をしてる」
背後に庇ったセラフィーヌの声が震えている。だが、その震えさえも、オレにとっては最高の奮起材料だ。彼女を怖がらせる「神」など、このオレが真っ向から否定してくれようッ!
「――来たか。失敗作の王、そして最大のノイズよ」
システム本体の上空。次元の裂け目から現れたのは、光の衣を纏った虚像――創造主アンドレだ。その瞳には、慈悲も怒りもなく、ただ古びた記録媒体を眺めるような虚無だけが宿っていた。
「アンドレ! 貴様がこの世界の作者だというのなら、オレは今この瞬間、貴様に絶筆を勧告するッ!! 100億ノヴァの魔力を奪い合わせ、最後の一人を『世界の消去ボタン』にするなど、王道の欠片もない最低の三流脚本だッ!!」
「脚本、か。……そう見えるのも無理はない。だが、この世界はすでに限界だ。不確定な感情、予測不能な愛、それらが蓄積し、システムの処理能力を超えた。私はただ、これ以上エラーが広がる前に、美しく閉じる(リセットする)権利を貴様に与えたのだ」
「抜かせッ!! エラーだと? ノイズだと? 違うなッ!! それこそが、この世界が『生きている』証拠だッ!! 計算通りに進まぬからこそ、明日は眩しいのではないかッ!!」
オレは右拳を高く掲げた。 システム本体から放たれる、因果律を固定する黒き波動――【虚無の断罪】。触れたものを、存在する前の「無」へと回帰させる神の裁き。 だが、オレは笑った。爆炎の中で、最高にハイテンションに吼えてやったッ!!
「笑止ッ!! オレが救いたいのは、貴様の作った完璧な無ではなく、この泥臭くも愛おしい不完全な世界だッ!! 顕現せよ、全英雄の魂が合致する一撃――**【王道極限・神話打破】**ッ!!!」
ドォォォォォンッ!! オレの黄金の翼が、白銀の雷光へと変じる。 アンドレが放つ「神の論理」を、オレはただの「勢い」と「根性」で真っ向からブチ抜いた。 論理が壊れる音がする。運命が悲鳴を上げる。 ジャック・ル・マジョールを倒し、悠真の知性と融合した今のオレには、見えているぞ。 貴様が完璧だと信じているそのシステム、その深淵に潜む、たった一つの「愛という名の脆弱性」がなッ!!
「セラフィーヌ! 貴殿の『ノイズ』をオレに貸してくれッ! 神の書いた予定調和を、オレたちのハチャメチャな即興劇で上書きしてやるのだッ!!」
「……ええ! 喜んで、私のワガママ、全部あんたに乗せてあげるわ!!」
二人の熱量が重なり、秘密の館が激しく振動する。 創造主の瞳に、初めて「驚愕」というノイズが走ったのを、オレは見逃さなかった。 さあ、クライマックスだッ!! 絶望のシステムを、希望で塗り替える最後の戦いが、今、幕を上げたのだッ!!




