終焉の先へ! 咆哮する新世界の王道
「――ハッハッハッハ! 見ろ、ジャック! 貴殿の築き上げた『完璧な秩序』が、今、不確かな情熱の前に無残にも崩壊していく音をッ!!」
黄金の光を纏い、オレは旗艦『エクス・マキナ』のブリッジへと突き進んだ。 迎撃に現れる自動防衛端末の群れなど、もはや視界にも入らぬ。オレが右手を一閃させるたび、物理法則を固定していた座標軸が捻じ曲がり、鉄の巨躯が紙細工のように破砕される。
「……ありえない。個体名フィリップ。貴様の演算能力は、再起動を経て、通常の1.2%まで低下しているはずだ。なぜ、その出力が維持できる」
ブリッジの奥。玉座に座したジャック・ル・マジョールが、信じがたいものを見る目でオレを凝視する。 その背後では、巨大な演算装置が唸りを上げ、世界を再び最適化しようと足掻いている。だが、その光はかつての冷徹さを失い、激しく明滅していた。
「演算だと? 貴様はまだ、そんな矮小な物差しでオレを測ろうとしているのかッ! 英雄とは、0.0001%の可能性を100%の事実に変えてこそ王道! 理論で説明できぬからこそ、奇跡と呼ぶのだッ!!」
「……黙れッ! 感情などという不確定な要素に、世界の舵を渡すわけにはいかない! 全魔導回路、オーバーロードを許可! 概念消去兵器――【絶対秩序の終止符】、発射ァッ!!」
ジャックの絶叫と共に、旗艦全体が眩い白光に包まれた。 それは「意味」を剥奪する光だ。触れた瞬間に、名前を失い、形を失い、存在したという事実さえも宇宙の記録から抹消される。
「フィリップ、ダメ! それに触れたら、今度こそ本当に消えちゃうわっ!!」
背後で叫ぶセラフィーヌ。 だが、オレは止まらない。いや、止まれないのだ。 内側で悠真の理性が静かに囁く。――『行け、フィリップ。論理の壁は、俺が内側から崩してある。お前はただ、あいつの顔面にその拳を叩き込むだけでいい』と!
「ハハッ、了解だ悠真! 往くぞ、セラフィーヌ! 貴殿の涙に誓って、オレはこの絶望の幕引きを全力で拒絶するッ!!」
オレは白光の中に、自ら飛び込んだ。 全身の感覚が消失していく。右手の輪郭が溶け、左足の存在が曖昧になる。だが、心臓の鼓動だけが、かつてないほど高く、熱く、激しく「オレはここにいる」と打ち鳴らされている。
「顕現せよ、全次元の意志を束ねる叛逆の剣! 数式を、運命を、そしてアンドレの絶望さえも上書きせよッ!! **【極限王道・新世界再誕】**ッ!!!」
ドォォォォォンッ!! 消去の白光を真っ二つに割り、オレはジャックの懐へと飛び込んだ。 黄金の魔力に染まった右拳が、彼の鉄の仮面を粉々に砕き、その奥にある「かつての俺」と同じ冷たい瞳を捉える。
「これは、理屈ではないッ! オレたちが、明日を笑いたいと願う『意志』の一撃だぁぁぁッ!!」
バキィィィィィンッ!! 衝撃波が旗艦を突き抜け、天空の雲を丸く吹き飛ばした。 ジャックの旗艦『エクス・マキナ』が、中枢から眩い光を放って崩壊を始める。 ジャック・ル・マジョール。 完璧を求めた設計者は、不完全な熱狂に敗れ、爆炎の中に消えていく。
「……ハッ……ハハ。見事だ、No.9。……だが、忘れるな。真の『絶望のシステム』……アンドレの本体は、まだ秘密の館で……貴様らを……」
ジャックの最期の言葉が、轟音にかき消される。 オレは崩れゆく甲板の上で、駆け寄ってきたセラフィーヌを力一杯抱きしめた。
「終わったのね……フィリップ。私たち、勝ったのね……!」
「ああ。ジャックの秩序は終わった。……だが、見ていろ。本当の戦いは、ここからだッ!」
空を埋め尽くしていた鉄の艦隊が、夕焼けのようなオレンジ色の光となって散っていく。 だが、その光の向こう側。世界の「深淵」から、さらなる巨大な影が、ゆっくりとその姿を現そうとしていた。




