王道再誕! ラ・シテ・デュ・ゼニスの奇跡
「――ッ、ハッ! ……ハッハッハッハ! 素晴らしい! この全身を貫く虚無感、そして魂の奥底から湧き上がる未知の熱狂! これぞまさに、真の英雄が産声を上げるに相応しい、最高の夜明けではないかッ!!」
瓦礫の山と化した聖地の中心で、オレは吼えた。 頭の中は真っ白だ。オレが誰なのか、昨日まで何をしていたのか、そんな「過去の記録」はもうどこにもない。だが、不思議と不安はなかった。 目の前で涙を流しながらオレを見つめる少女の温もり。その涙がオレの頬に触れた瞬間、オレの意識の深淵で、死に絶えていたはずの魔導回路が猛烈な勢いで逆流を始めたのだ!
「……フィリップ? 本当にフィリップなのね? 私のことも、全部忘れちゃったの……?」
セラフィーヌが震える声で問いかける。 オレは不敵に唇を吊り上げ、彼女の頬を指先で拭った。
「フッ……。貴殿の名も、オレと貴殿が交わした約束も、今のオレには思い出せん! だが――オレの魂が、そしてこの頬を濡らす貴殿の涙が、こう叫んでいるッ! 『この女を泣かせる世界など、オレがこの手で叩き潰してやる』となッ!!」
『――王子様、緊急プロトコル完全再構成! 悠真様が遺した最後の火種が、セラフィーヌ様の感情データと同期……記憶の消失を、そのまま「可能性の増幅」へと置換しました! 今のあなたは、システムのあらゆる制約を受けない、完全なる自由変数です!!』
「その言葉を待っていたぞ、ジュージュ! 往くぞッ!!」
その時、空を覆うジャック・ル・マジョールの残存艦隊が、再起動したオレを排除せんと一斉に牙を剥いた。数千の魔導レーザーが、一点の慈悲もなくオレたちへと降り注ぐ。
「――無駄だ。今のオレに、既存の物理法則など通用せんッ!」
オレは一歩、地を蹴った。 瞬間、オレの背後に巨大な黄金の翼が展開される。それは魔力による飛行ではない。オレが「空を駆けるのが王道だ」と定義したことで、世界が強制的にオレを空中へと押し上げたのだッ!
「食らえッ! 過去を捨て、未来を掴む新星の煌めき――**【王道新生・全壊破砕】**ッ!!!」
ドォォォォォンッ!! オレの拳から放たれたのは、熱量さえも計算不能な純白の衝撃波。 それはジャックが誇る「絶対秩序」の装甲を、まるで紙細工のように容易く引き裂き、空に浮かぶ鉄の巨城を次々と爆華へと変えていく!
「な……何だとッ!? 記憶を失い、演算能力が低下しているはずの個体が、なぜこれほどの出力を……ッ!」
通信回線を通じて聞こえるジャックの驚愕。 オレは爆炎の中を突き抜け、その旗艦へと真っ直ぐに指を突きつけた。
「ジャック・ル・マジョール! 貴殿の計算違いはただ一つッ! 英雄とは記憶で戦うのではない、今この瞬間の『熱』で戦うものだということを忘れたことだッ!!」
ラ・シテ・デュ・ゼニスの空に、再び黄金の光が満ちる。 記憶のない王。 だが、その魂には、100億ノヴァの魔力よりも重い「一人の少女を守る」という本能が刻まれていた。 反撃の狼煙は、今、銀河の果てまで届くほどに高く上がったのだッ!!




