叛逆の進軍 ― 鉄血の秩序と、吼える新世界!
「――ハァーッハッハッハ! 素晴らしい、実に見事な『不完全さ』だッ! 泥を噛み、涙に濡れ、それでも明日を罵る……。これこそが、数式には決して描けぬ人類最高の輝きよッ!」
灰色の空を切り裂き、オレの哄笑が荒野に響き渡る。 偽りの箱庭を粉砕した代償として、全身を焼き付くような激痛が走る。だが、その痛みこそが「生きている」という証だ。隣で不機嫌そうに、しかししっかりとオレの腕を支えるセラフィーヌの熱が、冷え切った魂を再燃させる。
「いつまで笑ってんのよ、このバカ王子! ほら、前を見て。歓迎会の準備はもう終わってるみたいよ!」
彼女が指し示す地平線の向こう。そこには、ジャック・ル・マジョール率いる新秩序政府の主力艦隊が、黒い鉄の壁となって立ち塞がっていた。
「――全軍、最終警告。No.9、及び最大級のノイズ。貴様らの存在は、もはや再編不能な『汚染』と断定した。これより、物理的な消去プロセスに移行する」
ジャックの冷徹な声が、空間そのものを震わせて響き渡る。 瞬間、要塞級の浮遊艦から放たれたのは、存在を否定する最悪の光弾――**【絶対秩序の裁き(ジャッジメント・オーダー)】**だッ!
「フッ、因果を固定するだと? 貴様ら、オレが誰だと思っている! オレは真実の果てに、すべての数式を『上書き』すると誓った男だッ!!」
オレはセラフィーヌを背後に庇い、ボロボロになった右手を天へと掲げた。 魂の最深部、統合された二つの人格が火花を散らし、新たな力の奔流となって溢れ出す。
「顕現せよッ! 絶望の雲を払い、未踏の明日を切り拓く反逆の翼――【王道再誕・境界破壊】!!!」
ドォォォォォンッ!! オレの背後から噴出した蒼白き魔力が、巨大な光の翼となって展開される。迫りくる裁きの光弾を、オレはただその片翼を振るうだけで霧散させた。
「その通りだ、ジュージュ! セラフィーヌ、オレに掴まっていろ。この鉄の壁など、オレたちの物語の『表紙』にすらなりはせんッ!」
「言ったわね!? だったら、その艦隊のド真ん中まで連れていきなさいよ!」
「ハハハ! 最高の提案だ! 往くぞ、セラフィーヌ! 貴殿と共に歩む道こそが、この世界の真なる王道だッ!!」
オレは翼を強く羽ばたかせ、光速を超えた突進を開始した。砲火の嵐を斬り裂き、旗艦『エクス・マキナ』の防壁に、文字通りオレ自身が「楔」となって打ち込まれたその瞬間――。
(……ッ!? なんだ、この感覚は……。脳内に、オレが棄てたはずの設計コードが逆流してくる……!?)
旗艦との物理的な接触。それがトリガーとなり、かつての悠真が構築した「管理の論理」が、今のオレを「エラー」として激しく拒絶し始めたのだ。
「ぐっ……あああああッ!!」
「フィリップ!? 嘘、身体が透けて……!?」
オレたちは旗艦の深部へと突き刺さり、光の中に呑み込まれていく。 勝利の咆哮は、不気味なノイズにかき消された。 この先に待つのが、己の過去という名の地獄であることも知らずに。




