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赫奕たる反証 ― 偽りの平穏と、真実の咆哮!

「――ハッハッハッハ! 見ろ、セラフィーヌ! 敵艦が去り、この地には再び眩いばかりの『自由』が満ち溢れている! 太陽の輝きさえも、オレたちの勝利を祝して光度を増しているようだッ!」


 東の聖域「アルカディア」に、オレの豪快な笑い声が響き渡る。  ジャック・ル・マジョールの旗艦を退け、オレは全身に漲る「全能感」を感じていた。一度は霧のように透けかけた彼女の身体も、今は完璧な実体を取り戻している。これぞまさに、オレが描き、オレが掴み取った**【究極のハッピーエンド(アルティメット・フィナーレ)】**の序章だッ!


「……そうね。フィリップが頑張ってくれたおかげで、みんな助かったわ」


 セラフィーヌが、穏やかな笑みを浮かべて頷く。  だが。  その微笑みに、かつてオレを困らせ、翻弄し、予測不能な行動でシステムの理をブチ抜いてきたあの「小悪魔的な輝き」が、欠片も含まれていないのはなぜだ?


「フッ……。どうした、セラフィーヌ? 喜びが足りないのではないか! 貴殿が望んだ『明日』が今、ここにあるというのにッ!」


「そう……そうよね。私、とっても幸せよ」


 彼女の返答は、あまりにも「正解」すぎた。  まるで、オレが求めている理想の答えを、あらかじめ用意されていた台本から読み上げているかのような……完璧すぎて、吐き気がするほどの違和感。


『――緊急警告:王子様、周囲の状況を確認してください。事象の「解像度」が不自然に固定されています。……あなたが発動した力は、彼女を救ったのではなく、あなたの深層意識が望む「静止画」の中に、彼女を閉じ込めてしまった可能性があります!』


「何だと、ジュージュッ!? オレの『王道』が、彼女のノイズを殺したというのか!?」


 その時だ。  青く澄み渡っていたはずの空が、硝子が割れるような音と共にひび割れた。  亀裂の向こうから現れたのは、撤退したはずのジャック・ル・マジョールのホログラム。彼は、嘲笑うかのように両手を広げる。


「気づいたか、No.9。貴様が『未来』を無理やり引き寄せた結果、この場所は現実から切り離された『箱庭』へと成り果てた。そこにいる少女は、貴様の記憶が作り出した残像に過ぎない」


「黙れッ! 貴様の戯言など、このオレが信じると思うか! セラフィーヌは今、ここに……オレの目の前で笑っているッ!」


「ならば、彼女を怒らせてみろ。彼女を泣かせてみろ。貴様の期待を裏切る『ノイズ』を、その人形から引き出してみせるがいい」


 ジャックの言葉に、オレの全身が凍りつく。  隣に立つ彼女は、依然として慈愛に満ちた表情でオレを見つめている。オレがどれほど叫ぼうと、絶望しようと、彼女は「正しいヒロイン」として微笑み続ける。  ……それは、オレが最も愛し、最も恐れた「システムの奴隷」と化した彼女の姿そのものだった。


「――否ァァァァァッ!! オレが救いたかったのは、こんな行儀の良い人形ではないッ!!」


 魂の叫びと共に、オレの魔力が逆流する。  理想の結末などいらない。オレを罵り、オレを突き放し、だが共に地獄を歩んでくれる「本物の彼女」を返せ!


「顕現せよ、真実を暴く叛逆の灯火! 理想を砕き、不条理な現実を呼び戻せッ!! 【真説・世界破壊ログアウト・レガリア】!!!」


 ドォォォォォンッ!!  オレが放った蒼黒い衝撃波が、美しすぎるアルカディアの空を粉々に粉砕した。  書き換えられた「都合の良い世界」が剥がれ落ち、灰色の空と、傷だらけの大地、そして――涙を流しながら、必死にオレの名前を呼ぶ「本物のセラフィーヌ」の姿が、そこにあった。


「……バカっ……バカ、バカフィリップ!! 何を勝手に……一人で完結しようとしてるのよっ!!」


「……ハッ……ハハハ……。ああ、その怒鳴り声だ。その予測不能な罵倒こそが……オレの求める、唯一の光だよ」


 オレは、崩れゆく視界の中で、泥だらけになった彼女の手を強く握りしめた。  理想の幕引きは終わった。  ここから先は、地獄の底を這いずり回ってでも、二人で「本当の明日」を掴み取るための戦いだ。


「さあ、往こうかセラフィーヌ。本当の『王道』は、ここから始まるのだからなッ!!」

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