秩序の断罪者 ― 鋼鉄の独裁と、穿たれる新王道!
「――ハッハッハッハ! 来るがいい、新秩序の走狗共! 貴様らがどれほど強固な隊列を組もうとも、オレの魂が奏でる不協和音一つで、その鉄の絆など錆びついた鎖に変わるのだッ!」
東の聖域を覆うのは、平穏な朝を切り裂く黒煙と、軍靴の足音。 徴収官たちの背後から現れたのは、これまでの機械兵器とは一線を画す、圧倒的な威圧感を放つ巨大浮遊要塞、そしてその甲板に立つ一人の男だった。
「無意味な咆哮を。世界は既に、アンドレという稚拙な神の手を離れ、我ら『新秩序政府』による論理的統治へと移行した。使徒No.9……貴様という最大のエラーを、今ここで修正する」
男の名は、ジャック・ル・マジョール。 彼は感情の一切を排した瞳で私を見下ろし、その右手を静かに振り下ろした。 瞬間、空が割れるほどの轟音と共に、要塞から放たれたのは**【広域抹消弾】**。触れた場所の物質組成をリセットし、更地へと変える絶望の光だ!
「やめなさいッ! ここには、やっと自由を手に入れた人たちが暮らしているのよ!」
セラフィーヌが魔導杖を掲げ、極彩色の障壁を展開する。だが、ジャックの放つ光は、彼女の「ノイズ」さえも規則正しい数式へと分解し、食い破ろうとしていた。
「ハッ、セラフィーヌ、下がっていろ! 乙女の涙を吸って咲く花など、このオレが認める庭には存在せん! 記憶は失えど、この右手に宿るは神すら穿った叛逆の残り火ッ! 燃え上がれ、オレの全存在――【王道再生・次元断裂】!!」
オレは跳躍した。 重力というアルゴリズムを力づくで捻じ曲げ、迫りくる光の奔流へと真っ向から突き進む! 手の中に具現化したのは、もはや剣の形さえ留めぬ、激しく明滅する蒼黒い「亀裂」の刃。
「オレが斬るのは貴様らの装甲ではない! その傲慢な『支配の前提』そのものだッ!!」
一閃。 空間が硝子のように砕け散り、要塞から放たれた抹消弾が、因果の連鎖を断ち切られて霧散していく。
「……ほう。アンドレを討った力、ただのバグと切り捨てるには惜しい出力だ。だが、その力の代償として、貴様の精神基盤は既に崩壊を始めている。……気づいていないのか? 貴様が叫ぶ『王道』が、世界を救う度に、隣にいる少女の存在を蝕んでいることを」
「……何だと……?」
ジャックの言葉に、わずかな動揺が走る。 見れば、セラフィーヌの手元が、私の放った魔力の余波に当てられたかのように、ノイズ混じりに透け始めていた。
「フィリップ、気にしないで! 私は大丈夫、あんたが勝てば、全部元通りになるんだから……!」
「――笑わせるな、ジャック! そのような揺さぶり、オレの辞書には載っていない! 彼女が消えるという未来があるならば、オレはその未来ごと、この世界を何度でも書き換えるまでだッ!!」
咆哮と共に、私の魔力はさらなる高みへと昇華する。 だが、オレの脳裏には、先ほどまでの快活な響きとは異なる、冷徹な「悠真」の思考が警報を鳴らしていた。
『王子様、出力が危険域です。これ以上の再構築は、世界の解像度そのものを破壊しかねません。……それでも、往くのですか?』
「決まっているだろう、ジュージュ! 絶望のシステムを希望に上書きする、その最後の一行を書き終えるまで、オレの筆が止まることはないッ!!」
第33話。 新秩序政府との決戦、その火蓋は切って落とされた。 記憶なき王と、消えゆく少女。 不条理を斬り裂く刃は、今、自らが望んだ「自由」の深淵へと突き刺さる!




