再誕の号砲 ― 記憶なき王と、鋼鉄の徴収官!
「――ハァーッハッハッハ! 見ろ、セラフィーヌ! 今日のオレの薪割りは、もはや芸術の域! 物理法則さえもがオレの斧に跪き、木材が自ら割れることを志願しているようだッ!」
抜けるような青空。管理衛星の監視網が消え去った「東の聖域」に、オレの快活な笑い声が響き渡る。 あのアンドレとの最終決戦から数ヶ月。世界の理を上書きした代償として、オレの記憶は依然として真っ白なままだ。だが、そんなことは些細な問題! オレの魂に刻まれた**【究極の騎士道】**が、記憶がないなら毎日を伝説に塗り替えればいいと囁いているのだッ!
「はいはい、芸術的なのはいいけど、その割った薪で早くお湯を沸かしてよ。お昼ご飯のシチューが作れないでしょ!」
腰に手を当てて呆れ顔を見せるのは、桃色の髪をなびかせるセラフィーヌ。 オレが何者で、過去にどんな罪を犯したか。彼女は多くを語らない。ただ、記憶を失ったオレの隣で、太陽のような笑顔で共に歩み続けてくれている。
「フッ、承知した! 乙女の空腹は世界の危機! **【神速・湯沸かしの儀】**を執り行おうではないかッ!」
『……王子様。いえ、悠真。あなたの魔力出力、相変わらず無駄が多すぎます。薪割りにそんな高密度のエネルギーを付与しないでください。地形が変わってしまいますよ』
空中に浮遊するのは、かつての監視端末、今はただの小言の多い相棒となったジュージュだ。 平和だった。アンドレという呪縛から解き放たれ、人々は管理されない「不自由な自由」を謳歌していた。……だが。
「――全イナクティフに告ぐ。貴殿らの『自由時間』は、たった今、終了した」
突如、聖地の静寂を切り裂いたのは、冷徹な機械音声と、空を覆い尽くす巨大な影だった。 見上げれば、そこには旧帝都の技術を接収した軍事浮遊艦。そこから降り立ってきたのは、漆黒の重装甲に身を包んだ男――新たな敵、**【徴収官】**の一団だ!
「管理社会の崩壊によって生じた混乱を収束させる。これより本居住区を『新秩序政府』の暫定統治下に置く。抵抗する者は『社会不適合者』として再教育の対象とする!」
「なっ……何よ、今更! せっかく自由になれたのに、また管理されるっていうの!?」
セラフィーヌが怒りに震え、魔導杖を構える。村のイナクティフたちが怯え、悲鳴を上げる。 その光景を見た瞬間。 オレの胸の奥、空っぽだったはずの「王座」が、激しい怒りによって再起動した!
「――おい。鉄クズの代弁者共。貴様ら、大きな勘違いをしているようだな」
オレは手にした斧を投げ捨て、一歩前へ出た。 記憶はない。だが、この拳が、この魂が、弱き者の涙を許さない。それがオレの、不変不滅のプログラムだッ!
「この世界は、オレとこの乙女が……そして数多の意志が、神の指先から奪い取った『自由』だ! どこの馬の骨とも知れぬ秩序などという薄汚い数式で、再びこの空を縛れると思うなッ!!」
ドォォォォォンッ!! オレの背後に、失われたはずの**【覇王の極光】**が爆発的に吹き上がる!
「行くぞ、セラフィーヌ! 第二部の幕開けは、傲慢な新秩序への鉄槌からだッ! 顕現せよ、オレの魂の片鱗――【再構築・星砕きの剣】!!」
オレの手の中に、以前よりも荒々しく、より力強い蒼き魔力の双剣が形作られる。 徴収官たちが一斉に銃口を向けるが、遅い!
「ハァーーーッハッハッハ! 記憶はなくても、オレの『王道』に一切の曇りなし! 貴様らの管理を、今ここで粉砕してやろうッ!!」
平和は破られ、物語は新たなステージへと突入した。 記憶なき王と、意志ある少女。 二人の「叛逆と再構築」の旅路が、今再び、号砲と共に始まったのだッ!




