極光の再臨 ― 砕け散る沈黙と、王道のフルスロットル!
「――ハハハハハ! 素晴らしい! この『秘密の館』に満ちる絶望的な魔力、まさにオレという真打が暴れ回るに相応しい舞台ではないか!」
私の咆哮が、無機質な回廊を震わせる。 先刻まで胸の奥にこびりついていた「真白悠真」という名の迷いは、今や跡形もなく消え去っていた。今の私を突き動かしているのは、彼が死に際に託した「否定のコード」と、物語をハッピーエンドへ強制連行する**【不滅の英雄意志】**のみだ!
「フィリップ……あんた、本当に全部忘れちゃったの……?」
背後でセラフィーヌが声を震わせているが、私は振り返らない。今の私にとって、彼女は「救うべき可憐なヒロイン」という絶対的な記号だ。その認識だけで十分。余計な感傷は、剣を鈍らせる不純物に過ぎん!
『――事象同期完了。フィリップ人格、完全覚醒。魔力出力、計測限界を突破! 王子様、正面に大規模な「静寂」を確認。……来ますよ、あなたの因縁が!』
ジュージュの警告と同時に、前方の空間が漆黒の闇に飲み込まれた。 音もなく、光もなく、ただ「死」という概念だけが凝縮されたその場所から、あの男が姿を現す。
「……また会ったな、不合理の王」
ジャック・ル・マジョール。 漆黒の翼を広げ、感情の一切を排した瞳で私を見据える、処刑人の再臨だ。
「フッ、ジャックか! 貴様のその暗気臭いツラ、そろそろ見飽きていたところだ! この館の頂へ行く前に、貴様という名の『バッドエンド』を完膚なきまでに粉砕してやろう!」
「不可能だ。この領域……**【無に帰す終焉の回廊】**においては、あらゆる熱量は否定される。お前の輝きも、ここで凍りつく運命だ」
ジャックが剣を抜く。瞬間、周囲の温度が絶対零度まで急降下し、私の蒼き魔力さえもが結晶化して砕け始めた。だが、私は不敵に笑い飛ばす!
「凍りつくだと? 笑わせるな! オレの魂は、千の太陽よりも熱く燃え盛っているのだ! 見せてやろう、完全体となったオレの真骨頂を! 全開――【極光王道・創世の翼】!!」
ドォォォォォンッ!! 私の背中から、純白と蒼が混ざり合う巨大な光の翼が展開された。 ジャックの展開する「無」の領域を、圧倒的な熱量と存在感で内側から焼き尽くしていく!
「なっ……領域を、力技で押し返したというのか!?」
「力技ではない! これは、消え去った一人の男が遺した『意地』という名の数式だ! 往くぞ、処刑人! 貴様の剣では、今のオレに傷一つ負わせることはできん!」
私は空中を蹴り、光の一閃と化してジャックに肉薄した。 ジャックの放つ無数の**【断罪の黒刃】**を、私は一切避けない。左手の甲で弾き飛ばし、右拳を彼の胸部装甲へと叩き込む!
「喰らえ! 【覇道葬送・次元粉砕】!!」
轟音! ジャックの身体が弾け飛び、館の強固な障壁を何枚も突き抜けていく。だが、奴もまた使徒。空中で体勢を立て直し、漆黒の翼から無数の羽弾を放ち返してきた。
「しぶとい奴め! だが、それでこそオレが倒すに相応しい宿敵というものだ! セラフィーヌ、見ていろ! これこそが、君を未来へと導く王の背中だ!」
私は輝きを増し、さらに加速する。 内側では、かつての私の記憶がリアルタイムで燃焼し、力へと変換されている。 ――初めて笑い合った日。 ――共に見た夕焼け。 ――彼女の指先の、淡い温もり。 それらすべてが消えていく。だが、その喪失感さえも、今の私には最強の燃料だ!
「ジャック・ル・マジョール! 貴様の『静寂』を、オレの『咆哮』で上書きしてやるッ! 最終奥義――【王道完結・極光の一撃】!!!」
館の階層全体を飲み込むほどの巨大な光の柱が、漆黒の死神を飲み込んでいった。




