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40 書祖
太和四年(230年)、鍾元常、洛陽にて没す。
その筆は政を動かし、国を導いた。
理を執り、世を執る。
乱世のただ中、彼は知と策を筆に託し、書をもって天下を執ったのである。
その筆跡はやがて、ひとつの書体として結実した。
八分の隷を正し、真に転じたその形は、『鍾繇体』と呼ばれる。
のちの王羲之も、欧陽詢も、その源を鍾繇に見たという。
時は流れ、魏は晋に継がれ、やがて天下は再び統一へと向かった。
その歩みの根底には、鍾繇が刻んだ文字が息づいていた。
乱世の書は人を導き、未来へと橋を架ける。
人はやがて鍾繇を「楷書の祖」と呼んだ。
彼の筆は紙に、史に、書の道に宿り、千年を越えて伝わり続けている。




