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箱庭  作者: 梅木しぐれ
11/13

「俺が考えてもいい?」

 あの人が好きだった。

 無知で、愚かなわたしに呆れることなく何でも教えてくれた。わたしが死ねばよかったに、死んだってよかったのに、あの人はわたしを庇って死んでしまった。

 柊唯のクローンであるわたしの寿命は、そんなに長くないのに。そのことを知っていたくせに、わかっていたくせに、それでもわたしなんか庇った馬鹿な人。

 誰よりも明日に、夢を見ていた人。

「生きろよ」

 ばか。

 あなたがいないと意味がないのに。

 あなたがいたから、あなたがいるから――――――。



 どうしようもないわたしは、下原紬と生きていたかった。



 ■■■



 どこかで見た光景だった。

 結城君唯が銃を構え、隣には紬が馬鹿みたいに立っている。

 あぁ、そうか。

 あの時と同じだ。

 知っている俺の体は、勝手に動き出していた。

 紬に照準があっている銃の前へと躍り出れば、照準通りに俺の腹に弾が撃ち込まれた。不思議と痛みはなかった。痛すぎて、痛いことが理解できなくて、痛みよりも溢れ出る血の熱さに驚いた。

 それから、どんどん冷えていく血にやっと痛みを覚えた。

 腹が痛むほどに、壊れたラジオのように頭の中で、紬の声が再生されていく。

「これ、おいしいから食べてみて」

           「はい、あーげたっ!」

      「ごめん、ごめん」

   「星が好きなんだ」

               「なんでこんなところにいんの?」

     「眉間に皺ついても知らねぇぞ」

 「はじめまして」

                     「昨日に、今日に閉じこもってちゃダメだよ」

             「一緒に明日を探し行こうよ」

                       

                  「辛くても、痛くても、怖くても、」

    「結は結だよ」

           「名前ないの?」

                  「シンプルな罵倒が一番傷つくんだってば!」

  「星を見てみたいんだ」

               「明日が欲しい!」

                      「そこに君がいてくれたら嬉しい、かな?」

       「お前、その顔で生まれたことを感謝しろよ」

    「俺が考えてもいい?」

                             「なっんでだよっ!?」

「ツンデレ……? いやツンギレ、むしろツンドラを目指せ」


                  「……それじゃあ、」




「――――――糸へんに吉で、結にしよう! 俺とお揃い!」

「――――――俺も糸へん一字だから、お揃いだな」




 本当に、馬鹿みたいだ。




 たったそれだけのことで、わたしは、俺は、どうしようもないほどに――――――下原紬を。







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