「俺が考えてもいい?」
あの人が好きだった。
無知で、愚かなわたしに呆れることなく何でも教えてくれた。わたしが死ねばよかったに、死んだってよかったのに、あの人はわたしを庇って死んでしまった。
柊唯のクローンであるわたしの寿命は、そんなに長くないのに。そのことを知っていたくせに、わかっていたくせに、それでもわたしなんか庇った馬鹿な人。
誰よりも明日に、夢を見ていた人。
「生きろよ」
ばか。
あなたがいないと意味がないのに。
あなたがいたから、あなたがいるから――――――。
どうしようもないわたしは、下原紬と生きていたかった。
■■■
どこかで見た光景だった。
結城君唯が銃を構え、隣には紬が馬鹿みたいに立っている。
あぁ、そうか。
あの時と同じだ。
知っている俺の体は、勝手に動き出していた。
紬に照準があっている銃の前へと躍り出れば、照準通りに俺の腹に弾が撃ち込まれた。不思議と痛みはなかった。痛すぎて、痛いことが理解できなくて、痛みよりも溢れ出る血の熱さに驚いた。
それから、どんどん冷えていく血にやっと痛みを覚えた。
腹が痛むほどに、壊れたラジオのように頭の中で、紬の声が再生されていく。
「これ、おいしいから食べてみて」
「はい、あーげたっ!」
「ごめん、ごめん」
「星が好きなんだ」
「なんでこんなところにいんの?」
「眉間に皺ついても知らねぇぞ」
「はじめまして」
「昨日に、今日に閉じこもってちゃダメだよ」
「一緒に明日を探し行こうよ」
「辛くても、痛くても、怖くても、」
「結は結だよ」
「名前ないの?」
「シンプルな罵倒が一番傷つくんだってば!」
「星を見てみたいんだ」
「明日が欲しい!」
「そこに君がいてくれたら嬉しい、かな?」
「お前、その顔で生まれたことを感謝しろよ」
「俺が考えてもいい?」
「なっんでだよっ!?」
「ツンデレ……? いやツンギレ、むしろツンドラを目指せ」
「……それじゃあ、」
「――――――糸へんに吉で、結にしよう! 俺とお揃い!」
「――――――俺も糸へん一字だから、お揃いだな」
本当に、馬鹿みたいだ。
たったそれだけのことで、わたしは、俺は、どうしようもないほどに――――――下原紬を。




