六.~10/14
何度も夜中に目が覚める。すると、死について考え始めてしまう。横で寝ている妻に、気づかれてはいけないと、思うほどにとらわれつつ、短歌を作ることで逃れる。あげく、妻を抱きしめて泣く夢を見る。自分は相当、依存しているのだな、と思う。
スマホのニュースで、癌患者の記事を多く見かけるようになった。増えたのではなく、今まで監視音が薄かったので目に留まらなかったのだろう。癌を己だけの悲劇のように思ってはいけないと、自戒する。もっともそれでも、膵癌は厳しいし、生死は常に自分一人で対峙するしかない問題ではあるのだが。
************
目が覚めて
「待って」と囁く 声を聞き
強く妻を抱く
そこまでが 夢
************
段差前 カート上がらず いた老女に
差し伸べ、焦る 我が腕の細さ
************
最後まで 他人に やさしく いたい見栄
それを失くせば 自分も消える
************
真夜中に 涙が溢れ 目を覚ます
居なくなること 受け入れられず
************
膵癌で 余命を超えた 人の記事
読むと 一日 寿命が延びる
************
カサカサに 乾いた肌に ざわざわと
風紋のような 皺が生まれる