五. ~10/10
抗癌剤で体力を削られたのか、入院中の運動不足で足が弱ったのか。とにかく脚力の衰えが気になる。だから何も用事が無くても歩く。こういう無目的の散歩は、あまり経験がない。そして、驚くほど簡単に疲れる。
それでも、体力を維持することが、抗癌剤治療の継続には不可欠だから、いわば生きるために歩く。と言うほどの壮絶な覚悟はないけれど。
副作用が強いと、不安が増す。なかなか、いかに生きるかなんて考えてられない。でも例えば今回の一首目はお気に入り、だなんて考えてたりもして、やり過ごしている。
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衰えし 足を叱咤し 踏み出せば
上る坂 皆 黄泉平坂
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血液の値で 一喜一憂せず
言い聞かせても 心は揺れる
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四日は苦 四日は不快 あと六日
薬剤投与が また巡りくる
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腕に顎、横隔膜も、胃も、尻も、
ぶら下がってる 体のだるさ
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怖すぎて 息が詰まって 逃げたくて
逃げ場がなくて ここで生きてる
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聞き慣れぬ コツコツという 歯ぎしりに
妻の疲れと 惧れを思う