十六、~2/12
癌の進行は止まっていると思われる。重粒子の成果はまだ確認はできないが、悪い徴候は何もない。
一方で、抗癌剤の副作用はますます厳しく、手足の痺れや倦怠感に悩まされる。まぁ、生きていればこそのぜいたくな悩みだと思って、耐えるよりない。
区の行政功労で顕彰して貰えるらしいが、表彰式は欠席する。抗癌剤スケジュールもあるし、癌でやつれた顔で、あまり人前に出たくない。地域の子どもの為のボランティア活動が顕彰の理由で、元気ならまだまだ続けていたし、授章ももう少し先の話だっただろう。
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手、足、腹、力入らず
仰向けで
唇で歌う 見果てぬ夢
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浅くなる呼吸 くらり立ちくらみ
やっぱり死ぬの?
今さら あわてる
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旧友と 久々に会う
元気か、と
言い出しにくい
俺は癌だが
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十年後 私が見ない風景に
君の笑顔が あるならいいな
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面倒で
抗癌剤を 言い訳に
表彰式は 出席辞退
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So Much in loveなんて 歌いつつ
40年の 思い 照れつつ