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ダンジョンで死なない優しい世界  作者: 黒髪石榴
MPポーションの罠
1/9

プロローグ

ここは横浜ダンジョンB2Fのボス部屋前

私、凜花は、未踏の3B到達に向け、必死にMPアップポーションを飲み干していた。ここに来る半日の間に4Lは飲んでいるため、お腹はたぷたぷだ。さらに、ボス戦に向けて追加の1Lを詰め込んだ。


「うっぷ...この状態で走り回ったら吐きそう..」


腹見せスタイルの軽装のため、すらりとした美脚に似合わないぽっこりお腹が目立つ。幸い他の挑戦者は居ないため、突き出たお腹をさらけ出している。


「(魔法で瞬殺できなかったら負確だな〜)」


今から半年前の2023年1月、日本中で一万を超えるダンジョンが発生した。ダンジョンでは魔物が現れ、それらを倒した人間はレベルアップが可能である。

ダンジョンにはボス部屋があり、そこを突破すると次の階層に行ける。しかし、ダンジョン発生から半年、最高攻略階層は2階層(B2F)である。その原因は、魔物が強すぎる事、そして一階層のスライムを倒した報酬だけで月収20万をこえるからである。


凛香は数少ない攻略組の一人だった。ここ川崎ダンジョンには数百万人ほどの探索者がいるが、攻略者は数千人程度だ。一攫千金を狙う者は、今時珍しいギャンブラーか、夢を追っても痛がられない少年少女だ。


凛香は魔法スキルを持っていることと、巨乳美人探索者ということで一時期注目を浴びていた。しかし、MPを持つものは報告されておらず、魔法も使えないということで世間の目はすぐに離れた。

そんな中、とある女性探索者が凛香に持ち掛けたのは、開発したMPポーションの人体実験だった。

魔法を使える可能性があるなら、と二つ返事でMPポーション10本を受け取りダンジョンに挑んで今に至る。


「さあ、行きますか!」


凜花は気合いを入れてコボルトジェネラルが待つB2Fボス部屋に乗り込んだ。


「いくぞー!火魔法くらえ!!」


「グルッ??」


凛香の手のひらから勢いよく非魔法が飛び出したが、効果はいま一つ。そして、魔法一発でMPは底を尽きた。


「はい、詰んだ~!」


ポーションでたぷたぷの腹を抱えて、ボスの攻撃をよけられるわけもなく、あっさり惨敗してしまったのだった。

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