アイボリー/アイロニー
白でもない。
黄色でもない。
ベージュでもない。
部活が終わる。
黒いローファーを鳴らして、ぼくは校門を飛び出した。
胡椒をまぶしたステーキ肉のように、真っ黒の学ランは埃をまとっている。
美しい!
これが青春なのだ。
駅では、働きアリたちが列をなして電車を待っていた。
電車に乗り込んで、ぼくは床に英知が詰まった通学鞄を下ろそうとするが、働きアリたちはそれを許さない。
一日の重みを噛み締めんばかりに、指先は赤く染まっていた。
電車を降りる。
働きアリたちは、女王の待つ巣穴を目指してつかつかと歩みを進めた。
リコーダーのような電子音が心地よく響いている。
信号を待つために、横断歩道の前でぼくは立ち止まった。
素晴らしい!
家に着いたぼくは、「ただいま」の号令をかける。
洗面台へ向かい、石けんで手を洗った。
ゴシゴシ、ゴシゴシ……。
白かったぼくのシャツはアイボリーに染まっていた。
荻野上風です。また詩を書きました。
アイボリー/アイロニー
Written by 荻野上風(Uhakaze Wogino)
・twitter https://twitter.com/Wogino_uhakaze
前作→【それでいいの】
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