オイラーの自然数和についての解説 図解入り 後編 超弦理論の D=9 は正しいか?
後編です。
前編はこちら↓
https://ncode.syosetu.com/n9603ia/
前編ではS=1+2+3+・・・n=n(n+1)/2 の計算式の齟齬がどこで起こったのかという部分に焦点を当てて図解入りで解説しています。
簡単に説明すると、 n=無限大 2n=無限大 nと2nの両方とも無限大なので n=2n という論法を用いて n:2n=1:2 という比率を計算から除外していたり、他にも省略があったりと、いろいろな問題を n=無限大 を利用して目を逸らさせている、ということです。
このようにオイラーの自然数和 S=1+2+3+・・・(n-1)+n=-1/12 の証明には何かしらの操作が加えられている考えていいでしょう。
それを前提に説明を続けたいと思います。
下は前編で使った図を一まとめのしたものです。
図10 全部入り
引かなかった部分をS2とした場合の S2=3n²/8 + n/4 を除いた部分で説明します。
図11a 説明する範囲
図11b 除外部分
-3S=1-2+3-4+5-6・・・-(n-1)+n ←奇数の場合
-3S=1-2+3-4+5-6・・・+(n-1)-n ←偶数の場合
これをグラフ上に落とし込んでいきますと、
図12 -3S1-2+3-4+5-6・・・の数式でグラフ上に表示される点
これを順につないでいくと、下図のような波グラフになると思われます。
図13 波グラフ
ですが実際は前編で説明したように
S=1+2+3+4+5+6・・・n
-4S= -4 -8 -12・・・4n
(nが偶数の場合最後の数も引かれる)
S=1+2+3+4+5・・・n
-4S= -4 -8・・・・4n
(nが偶数の場合最後の数は引かれない)
図14 nが奇数だった場合の余った面積n の長方形
つまり、n個分という個数を数える自然数という趣旨を汲むなら、偶数と奇数は分けて考えるのが望ましいはずです。
図15 奇数と偶数を分けたグラフ 1
また、前編では 1+1-1+1-1+・・・ というのも出てきました。(グランディ級数と言います)
1-1+1-1+1-1+・・・
図16 グランディ級数
1を個数として数えると1の総数が奇数の場合は+1、1の総数が偶数の場合は0のどちらかになるため
図17 奇数と偶数を分けたグラフ 2
1-1+1-1+1-1+・・・=1/2 は成立しません。
1-1+1-1+1-1+・・・=1/2 を成立させるには、前提を崩す必要があります。
操作できる領域を拡張するわけです。例えばこういう方法です。
図18 奇数 1 、偶数 0 を通る波線グラフ
自然数で言うところの連続性と関数の連続性では、同じ言葉でも意味合いが違います。
(この理屈は後で出てくる 1+r+r²+r³+r⁴+・・・=1/(1-r) という数式の説明でも使います)
◇等間隔に並べられた点が連続している数字(点と点の間には断絶がある) ←自然数の連続
◇滑らかにつながって伸びていく連続性(途切れない線として表現できる) ←関数で表される連続
表現として相応しいかどうかはとりあえず置いておいてください。
要は、図18のように数式を組む時に自然数の領域を実数、あるいは複素数で計算できるところまで解釈の範囲を広げてやるわけです。
(図18は三角関数を使ったグラフ)
それでも駄目なら、さらに複素関数(実数→虚数領域 三角関数はここに含まれる)まで適用範囲を広げるといった操作を加えていますので、自然数という定義からはかけ離れていくことになりますが、ここではそこまでは取り上げるつもりはありません。両者が違うものだということを理解していただければそれで大丈夫です。
自然数の条件を満たしていないならば自然数和の証明に使用するのは不適切であると言わざるを得ないでしょう。
◇自然数なら1-1+1・・・ の 1 の総数が奇数の場合は 1 、偶数の場合は 0 。
◇1-1+1・・・を 1 と 0 の間を一定周期で振動する三角関数と捉えるなら、正弦曲線を描くグラフ上なら、式には出ない数字でもその地点における数字は正しいものと解釈される。
このように範囲の捉え方によって一つの数式が全く違った意味のものに変わってしまうため、その取り扱いには細心の注意が必要になってくるのです。
★余談になりますが、関係のある話なので少しお付き合いください。
1+r+r²+r³+r⁴+・・・=1/(1-r)
※rの範囲 -1<r<1
という公式が知られていますが、この式の適用範囲について少し解説をしていきます。
(『n乗』の小説家になろうでの表記の仕方が分からないので、そのまま(n乗)と表記しています。見づらいかもしれませんがご了承ください)
S=1+r+r²+r³+r⁴+・・・+r(n乗)と定義して、さらに S に r をかけます。
rS=r(1+r+r²+r³+r⁴+・・・+r(n乗))
を作り S から引いて
S-rS=(1+r+r²+r³+r⁴+・・・+r(n乗))-(r+r²+r³+r⁴+r⁵・・・+r(n+1乗))
右辺のr+r²+r³+r⁴+r⁵・・・+r(n乗)が相殺されるので
S-rS=1-r(n+1乗)
r=-1 を代入した場合、2S=1-(-1)(n+1乗) ←(nは自然数)
S=1/2-1/2(-1)(n+1乗) となり、nが奇数の場合は 0 、偶数の場合は 1 になりますから図17の奇数と偶数を入れ替えたグラフができます。
-1<r<0 の場合でnが無限大ならrのn乗は0に収束しますから、nが奇数だろうと偶数だろうと問題にはなりません。ですが、r≦-1の場合は奇数偶数の差がそのまま正、負という結果に反映されてしまいます。
◇Sの範囲はrの範囲が -1<r<1 のとき、1/2<S<∞ (∞は無限大)
rが限りなく1に近づくとき、Sは限りなく無限大に近づき r=1 で無限大に発散します。
rが限りなく-1に近づくとき、Sは限りなく1/2に近づき r=-1 でnが奇数なら0、偶数なら1という値をとり、そして r<-1 では奇数なら-∞、偶数なら∞に発散します。
◇-1<r<1 では1本に収束されていたグラフが、r=-1でnが奇数か偶数かという違いで 0 か 1 となり、さらにここが分岐点となって、それより小さい数では負と正の二方向の無限大に発散します。
図19 1+r+r²+r³+r⁴+・・・=1/(1-r)
◇こういった r=-1 のような値を『特異点』と言います。
ですが、『nが奇数なら0、偶数なら1』という条件付きで『0 または 1 に収束する』という表現は定義されていません。
そのため 0 と 1 の2点のどちらかをとる場合でも『発散する』という表現をします。(数列の極限は①収束する ②無限大に発散する/マイナスの無限大に発散する ③振動する の3つしか定義されていません。そして②と③はともに『発散する』といいます)
限りなく無限大に近づいてから無限大になるもの、あるいは限りなく特定の数値 A に近づいてから A に収束するものと、このような『特異点』を同列に扱うのは明らかに問題があります。
◇必ずグラフ上から逸脱することなく 1/2 に近づいていく『0 方向から限りなく -1 に近づけたもの』と、0か1のどちらかに収束する『r=-1』は明確に違います。よって -1≦r<1 は成立しません。(※あくまで個人的な見解です。数学的に正しいわけではありません)
また、nは自然数であるという条件が付いているため、この条件下では図18のような波線グラフを用いるのは不適切です。
話を戻します。
1+2+3+・・・を今度は計算結果と足した回数で表にしてみるとこんな感じになります。(最初を0+1 として扱い、x=1 の時のyを 1 に置く)
図20 1+2+3+・・・ のドット分布
これらの点は y=x(x+1)/2 の数式で表されるグラフ上に配置されていきます。
図21 y=x(x+1)/2
ですが、あくまでもグラフ上に点があるというだけで、実際には x 方向の自然数上にしか点は置かれません。関数としての連続性が担保されていないため、本来は 図21 のようなグラフを描くことは不適切ということです。
例えるなら、似たようなグラフでも、
◇y軸が (Qty)(個数を表す省略形)あるいは(個)など、個数を表す単位で、x軸が(箱) (列) などの個数をまとめた単位になっている場合なら自然数を表現しています。
◇速度を求める式のような、例えば y軸が (m) (メートル) のような長さで x軸が (t) のような時間を表す単位だった場合なら、両者とも途切れることのない連続した存在であるため、関数で表されるグラフ上にあるすべての点できちんと成立する数値になっています。
☆ではここで図19と図21を見比べてみてください。
注目するべき点は横軸の単位です。
図21の1+2+3+・・・nのグラフでは変数を x としていますが、実際の単位は自然数です。
図19の1+r+r²+r³+r⁴+・・・=1/(1-r)のグラフでの変数は r つまり実数です。解を求める式に自然数 n は含まれておりません。
先程からさんざん計算領域についての説明を繰り返したのは、つまるところこの前提の違いを理解してもらうためでした。
☆ではそろそろまとめに入りたいと思います。
1+2+3+・・・+n=-1/12 (nは無限大)という数式の証明において、
①計算式から必要な要素を除外しては正しい答えは得られない。
②単位の定義を逸脱した式を当てはめても、それは違う答えを求める式であり証明に用いるには不適切である。
③証明に適用範囲外の数値を代入してはいけない。
①②③はそれぞれ
①:ラマヌジャン総和法を用いた証明。
②:振動アーベル総和法を用いて導きだした答え。
③:ゼータ関数を使った証明。
に対応しています。
いずれのケースでもどこかしらに不備があり、正しく証明なされていないことがこれまでの説明でお判りいただけたかと思います。
以上により、オイラーの自然数和 1+2+3+・・・n=-1/12 は未だ証明がなされていない。
というのが私の結論です。
(※ただし、あくまでも個人の考察であり見解ですのでご了承ください)
☆以上の考察を踏まえた上で、素粒子論の諸説あるうちの中でも有力な説であると言われている『超弦理論』を見てみましょう。
理論を詳しく知りたいという方は専門のサイトを見てもらいたいのですが、ここでは必要な部分のみを取り出して説明することにします。
◇超弦理論では11次元論という時空間で世界は構成されていることになっています。
説明は省略しますが、その11次元という数字を導き出すのにオイラーの自然数和 1+2+3+・・・nという式が組み込まれています。
Dは次元のことで D=9 空間9次元+弦1次元+時間1次元の合計11次元です。
光子の質量を求める式
0=2+3(D-1)*(1+2+3+・・・) (※1+2+3+・・・=-1/12 として代入)
↑
(ここにあるこれがオイラーの自然数和です)
この 1+2+3+・・・という数字は振動数を表していて、すべてを足し合わせたものが粒子が持つ総エネルギーになり、光子はその質量がゼロである・・・という数式で、式に組み込まれている D というのが次元の数になります。
振動数自体を一つ二つと捉え、速さや振動の大きさは考慮していないようなので、これはやはり純粋な自然数と捉えるべきでしょう。
ならば1+2+3+・・・+n (nは無限大)は -1/12 ではなく n(n+1) で求められる答えの方になるはずですから無限大に発散しますので、数式として成立しません。これでは理論として破綻してると言わざるを得ませんよね。
D=9 という仮説自体を否定する気はありませんし、ロマンを掻き立てる興味深い仮説だとは思いますが、次元を説明する理論としては不適切であり、これではない新たな別の理論を用意した方が賢明ではないかと思っています。
☆以上で私の考察を終わります。
ここまでご覧くださりありがとうございました。
※あくまでも個人の考察ですので鵜呑みにはしないでください。
評価していただけると嬉しいです。