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無難に生きるのが俺のモットーです。  作者: よにー
第一章 氷人族の少女
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第36話 アステリシア国王

もうなんとお詫びすれば……。

本当に遅くなって申し訳ありません。

私の謝罪ではどうにもチープさが拭えないですね……。

もうこの際吹っ切って告知でもしてやろうと思います。


先週コミケに出るということをお伝えしましたが

そのスペースをお伝えしていなかったので宣伝させていただこうと

思います。

C102 一日目(土曜日)東3ホール「コ-23b」にて

「STRAIGHT BANGS」というサークル名で出させていただきます。

ちなみに、「しふい」という名前で活動させてもらっています。

むさくるしいおっさんしかいませんが

もしよろしければぜひお立ち寄りください。


あ、第36話になります。

よろしくお願いいたします。



 城の中にあるとは思えない程の大きな扉の前で三人は再度身なりを確認する。まだ開かれていない扉からは緊迫した空気が漏れ出ていて、部屋の中からのプレッシャーにカイトだけが辟易としていた。しかしそんなカイトに比べてミラとヴィンセントは慣れているのか飄々とした様子だった。


 荘厳な扉をそばに居た兵士に開けてもらい、ミラとカイトはヴィンセントに連れ立って玉座の間へと足を運ぶ。

 

 開かれた扉の先は高い天井から吊り下げられた煌びやかな装飾が彼らを出迎え、壁面を飾る大理石が窓から入る日光を反射していた。視点を下ろすと床に敷かれた一枚の真紅のカーペットが真っ直ぐと最奥まで伸びてこの上を歩けと言わんばかりに主張する。


 部屋の脇を見れば数人の兵士が整列して微動だにせず、静かにじっと前だけを見つめていた。


 そして赤いカーペットが伸びた先には人よりもふた周りほど背もたれの高い椅子があり、大きなマントを羽織った男が一人鎮座していた。そしてその周囲には幾人かの貴族と思われる人物が囲うように立っていた。


 するとヴィンセントが一人先を進んで玉座の前に片膝をついて頭を下げる。


「陛下、アルバートのマスターミラ様と冒険者カイト様をお連れ致しました」

「ご苦労である」


 国王と呼ばれた玉座に座る老齢の男性は手を上げて応えるとヴィンセントは立ち上がり、カーペットの脇の方へ移動した。ミラとカイトもヴィンセントに続いて国王の前へと片膝をついた。


「ご機嫌麗しゅうございます。アルフレッド・フォン・アステリシア国王陛下」


 代表してミラが口を開いて挨拶の向上を述べる。


「久しいな、ミラよ。息災であったか」

「お気遣いいただきありがとうございます。陛下もおかわり内容で何よりでございます」

「うむ、カイトも半年ぶりであるか」

「左様にございます」

「たまにはユフィ―リアのために顔をもう少し出してほしいものだ。そなたはユフィ―リアを救ってくれた英雄なのだからな」

「ははは、お戯れを。私などただ運よく手柄を立てた、ただのしがない一端の冒険者に過ぎません」

「よく言うものだ。この国で最強の冒険者がそう謙遜するでない」


 フッと笑い、口元を緩ませたアルフレッドは言うまでもなくこの国の王。ユフィ―リアの父親である。半年前に起こったユフィ―リア王女誘拐事件の際、解決に動いていた近衛兵と騎士団を差し置いて彗星のごとく颯爽と駆けつけて事件を解決したカイトにユフィ―リアもアルフレッドもカイトにお熱なのだ。現に今アルフレッドの隣で年若き姫がなぜか得意げにぺたんこの胸をふんぞり返らせている。あの小娘、もうカイトが自分のものだと勘違いをしているみたいだ。


「顔をあげ、休んでくれたまえ」


 アルフレッドがそう言うとミラとカイトは立ち上がった。


「して、ピンザッツ伯爵から話は聞いている。誠なのだな?」

「はい」


 ミラは深刻な面持ちでラーヴィンに話したように、アルフレッドへと状況を説明した。





――――――――――――――――――――――――――――――





「なるほど……勇者召喚……しかも前回からまだ二十五年ほどしか経っていないというのにもう召喚できるというのか……」


 深刻な顔でアルフレッドは顎に手を添えて髭をさする。ミラからの説明に周囲のざわつきが冷めやらない。


「はい、何かしらの効率化に成功したか、または強引に召喚を実行したのか……」

「ふむ……ともかく、そのオニツカコーキという少年がこちら側に来てくれただけでも良い収穫だ。他の勇者の情報などは得てはおらぬか?」

「詳しくはまだ……他の召喚された勇者がいることは分かってはいるのですが彼はこちらへ来たばかりで精神的に不安定です。込み入った話は彼がこの世界に慣れてからにしようかと」

「そうか、わかった。それにしてもスライムと共闘してデスバラッドを倒すとは……本当にこちらへ来たばかりなのか?」

「本人はもともと剣術を嗜んでいたようです」

「ホホ、これは期待が高まるな」


 陽気にアルフレッドは笑うと傍に控えていた一人の貴族が口をはさんだ。


「この機会を利用し、ウランドラスへ先手を打つべきです」


 小太りの頭頂部が少し禿げている男はミラたちの傍へ寄ってアルフレッドに進言する。だがアルフレッドは少し渋い顔をした。


「確かに、クレイン子爵の言う通りだ」

「しかし、すぐに行動を起こしてはウランドラスに感づかれてしまいます」


 ミラは紅桔のことも考えてなるべく水面下でことを進むようにしたいと思っていた。先手を取るのは良いことだが、実際の現状は向こうは数名の勇者がいるのに対し、こちらは紅桔が一人。さらにこちらが追加の勇者を召喚するときはウランドラスへの報告が義務となっている。


 内密に勇者を召喚しようにも、条約でこちらの召喚はあっちへと自動的に通報されてしまうのだ。そうなれば事前準備もバレてしまう。国力的にアステリシアは勇者なしではウランドラスに対抗ができないのだ。


「ふむ、となると当面はコーキ一人か。奴らが勇者の育成に尽力しているうちにこちらも勇者の育成をしたいが……」


 アルフレッドは顔をしかめ、目を瞑る。その原因はコーキの特性にあった。クレインはハッと鼻で笑い、


「だが、コーキとやらは風魔法しか使えないのであろう? デスバラッドは倒せても戦争では役に立たんではないか」


 嘲笑うようにクレインは吐き捨てる姿にミラは表情に出さなかったが心の中で睨みつける。その際ふとカイトの顔が視界に入り、カイトの顔は白い目でクレインを横目で見ていた。


「戦争に役立つかどうかは別として、彼は才能に溢れています。このまま冒険者として活動していけばすぐにAランクまで上がれるでしょう」


 ミラが落ち着いた声音で淡々と答えるが眉がヒクヒクと痙攣していた。そんなミラの心なぞ露知らず、クレインはカカっと癪に障るような笑いを上げた。


「冒険者? いやいや、勇者をモンスターと遊ばせるのはもったいない。戦場でこそその力を役立てるべきだ。それに二十年の期間を要するとはいえ勇者は別の世界から連れてこられる。いわば消耗品だ。さらに言えばコーキとかいう小僧の場合ウランドラスが召喚した勇者。例え死んだとてこちら側にダメージは無いのだ、使い潰してしまっても何ら問題なかろう」


 クレインの言葉に周囲の半数が騒ぎ始め、そのほとんどがその通りだというニュアンスの台詞が飛び交う。ここにいる貴族たちはアステリシアの勇者でなければ大事にしないというのか。


 そのことにミラは憤慨するが何とかこらえる。この場を荒らすような真似は避けたい。王の御前だ、煮えたぎるような激情を抑えつつ冷静に対応しなければいけない。


 だが、ミラが耐えることができても付き添いの男には耐性が無かったようだ。


「今の言葉、本気で言っているのか?」


 静かに怒気を孕んだカイトの声にクレインは少し仰け反った。いつもお茶らけているとはいえ、凄んでみればその整った顔立ちは一瞬で豹変する。


「ッ……冒険者風情が貴族に歯向かうのか」

「貴族? 今の言動に貴族らしさなんて微塵も感じなかったよ?」


 この場にいる全員がひりつく空気に思わず固唾を吞む。一触即発の空気にミラは待ったをかけた。


「やめろ、カイト。ここはギルドでも酒場でもない、玉座の間だ。不敬罪に問われかねん」

「……でも」

「今は我慢しろ。ここで騒動を起こしてはいかん」

「……ごめん」


 ミラの制止でカイトは吊り上がった目元をゆっくりとおろしていく。気が付けばカイトを中心にうっすらとだが魔力の渦が形成されていた。あと一歩止めるのが遅ければカイトは手を出していたかもしてない。カイトもまだまだ若いということだろうか。


 そんな緊迫した空気が緩和されていき誰もが心の中でほっと一息をつく。見ればクレインは膝をガクガクと震わせており、彼に同調していた貴族たちは黙りこんでしまっていた。


 カイトは自分で豪語していたりと胡散臭さはあるが、その実力は冗談抜きで強い。ミラやヴィンセントがいるとはいえし激昂してあばれでもしたら手が付けられないだろう。冒険者というのは血の気が多くていかんとミラはため息をつく。


 不意にミラの視線はアルフレッドの傍にいたユフィ―リアの方へ行く。その瞳に捉えた姿は眼をかっ開いてギリギリと歯軋りをしており今にも噛みつきそうな勢いだ。王女がしてはいけない顔をしていることにさらにため息が止まらない。


 隣で座っていたアルフレッドが困った顔つきで一つ咳ばらいをし、ユフィ―リアは咄嗟に外行きの営業スマイルへと元に戻った。


 ミラもアルフレッドと同じように咳ばらいをして、仕切りなおす。


「ともかく、彼を戦争に出すかどうかはまだ決めないでいただきたい」

「……ほう、その理由は?」

「……私の我儘です」


 するとアルフレッドは急にガハハ!!と声を出して笑い出した。ミラから出た台詞とは思えなかったのかアルフレッドは腹を抱える。その姿に周りの貴族はきょとんと見たこともない光景を目にしたような顔を晒していた。


「なに? ぬしの我儘とな? これはおもしろい。良かろう、コーキを戦争に参加させるかどうかは一旦保留としよう」

「光栄にございます」


 ミラはまた膝をついて頭を垂れて最大の敬意を示し、そしてそのままミラは口を開いた。


「王のご厚意に応えるべく、一つ私から提案がございます」

「ふむ、述べてみよ」

「先も進言した通り、この件はなるべくウランドラスに気取られないよう事を進める必要がございます。しかし、同時にアステリシアだけでは解決の難しいことなのは重々承知しております。なので、私とカイトでウランドラスと敵対している獣人の国、リードへ赴き密約を交わそうと考えております」

「……リードか……難しい交渉になるが、任せてよいのだな?」 

「はい、お任せください」

「ならばその手腕、見せてもらうとしよう」


 アルフレッドはゆっくりと立ち上がり、近くの従者に持たせていた剣を手に取って抜くとミラへと剣先を向けた。それと同時にカイトもミラと同様に膝をついて頭を下げる。そしてアルフレッドは心を震わすような低い声を張りあげた。


「ギルドアルバートのマスター、ミラ・エンフィールド並びにカイト・ウォーバーンに我が真名アルフレッド・フォン・アステリシアの名を以て言い渡す! ウランドラス帝国の脅威を退けるべく、獣人の国リードへ赴き、協定を交わすことを命ずる!」

「御意」

「期待しておるぞ」


 頭を下げつつミラは一人思考に耽る。そう時間もかけていられない。紅桔とレイナのこともある。なるべく早めに事を済ませてしまい、早々に戻らないと。というか紅桔のことが心配でたまらない。ただでさえウランドラスの勇者という不安定な立場に氷人族の奴隷、もはやトラブルの塊でしかない。そんな右も左も、なんなら前も見えていないような少年を自身の目の届かない場所へ放置するのは気が休まらない。


 ついに三度目のため息を心の中で吐き、この先が思いやられると一人、心労に苦しむのであった。




次週はコミケ真っ最中なのでお休みさせていただきます。

なので次回投稿は8月20日予定です。

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