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無難に生きるのが俺のモットーです。  作者: よにー
第一章 氷人族の少女
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第34話 VSマグナボア

投稿が遅れてしまい申し訳ございません。

第34話になります。

よろしくお願いいたします。



 フィリアに依頼の受注処理をしてもらい、俺たちがアステリシアから外へ出て向かった先は、当然幻獣の森でした。


 明るいうちの幻獣の森は普通の森と何ら変わらない。こんな穏やかな森にゴブリンやらでっけぇ蜂やらバケモノ熊さんまでいるなんて考えが及ばない。よくよく思えばラノベの主人公とか順応力やばくない? 普通なら泣くよな?


 まぁそんな恐ろしい森も見慣れてきた。初めて召喚された時は右も左もわからなかったのに……。俺って成長したな! まぁ毎日通ってれば慣れもするか。


 さて、今回の目標であるマグナボアというモンスターはレイナやフィリアが言っていたようにDランクへの昇級をするために討伐が必要だという。

 

 依頼絵からはただのちょっと牙の大きい普通の猪にしか見えない。デスバラッドとどっちが大きいのだろうか。確かあいつは二メートルちょいだったような気がするし、それより弱いモンスターとなればそんなに大きくないだろう。マグナって確か大きいって意味だよな……? これもうよく分かんねぇな?


 と、そんな大きいのか小さいのかよく分からない名前詐欺かもしれない猪を探しながら、俺は森の茂みを掻き分けていた。


「あの、レイナさんや」

「何かしら、無防備に眠る女性の胸をまさぐる変態さん」

「さらっと不名誉な称号で呼ぶのやめてもらえませんか?」

「事実でしょう?」

「…………いやホントすんませんでした……」


 平身低頭に謝罪をするがレイナはシラーっとした冷たい目で俺のことを見続けていた。機嫌が直るのはいつになるのやら。


「で、何?」

「……討伐対象のマグナボアなんですけど、どうやって倒すんですか」


 俺の問いかけにレイナは至極当然とでも言いそうな顔をして口を開いた。


「普通に倒す」

「……ん?」


 ちょっとまて。


「い、いやいや。レイナさんのことだし、ドレッドビーの時みたいな策があるんだろ?」

「無いわ。マグナボアはあの毒草効かないし、私の魔法が使えるなら楽に倒せるけれど今はこのうっとうしい首輪のせいで使えないから」

「さ、さいですか……ちなみになんですけど、マグナボアってどれくらいの大きさなんですか?」

「そうね。全長五メトルくらいはあるんじゃないかしら?」

「五メトル……メートル?」


 おそらく、言語疎通魔法の効果で近しい言葉に翻訳されているのだろう。しかしなぜ伸ばさない……?

 

「あら、メトル分からない? そうね……私で大体一メトルと六十センチだけれど」 

「いやそこは普通なんかい!」

「い、いきなり何?」


 しまった。ついツッコんでしまった。急なツッコミにレイナが怪訝な顔をして少し身を捩る。だってセンチは普通なくせにメートルだけなんでメトルなんだよ。ちょっと、翻訳精度悪くなぁい?


「いや、何でもない……にしても五メートルか、でかいな」

「メトルね」

「……細かっ」


 俺がボソッと呟くと聞こえていたのかレイナが一瞬ムッと顔をしかめる。どちらでもいいんじゃありませんかね? ほら、ファンかフアンくらいのレベルだと思うんだけど。


「で、肝心のマグナボアはどこにいるの?」


 少し険悪な雰囲気になっていたところをスラさんが一刀両断する。


「見つけるのは簡単よ。五メトルもの巨体を隠すなんてできないから必ず痕跡が残る」


 そういうとレイナは周囲を見渡すと何かを見つけたのか、一人スタスタと歩き出す。どこまで行くのかとぼーっと眺めていると彼女は一本の木の前に立ち止まった。


「見て」


 木の幹に触れながらレイナは俺たちを呼ぶ。レイナのもとへ駆け寄って言われた通り木の幹をじっと見てみれば何かしらの硬く大きい物でえぐるように傷がつけられていて少し痛々しい。なんかこういう痕跡を追うってちょっと謎解きみたいで面白いよな。


「ふむ、レイナ刑事これが?」

「けいじ……? え、ええ、マグナボアの痕跡。見た所これは牙で傷をつけたものね」

「ほん、何か意味があるんですかい?」

「あるわよ」

 

 何か意味深な表情でレイナは木に向きなおすとポツリと呟いた。


「縄張り」

「なわばり」


 そういえば熊とかも自分の縄張りを主張するためにわざと木や地面に何か痕跡を残すと聞いたことがある。これがそうなのか。


「じゃあここいらを歩いていたら自然と出くわすってことか」

「いいえ、マグナボアは体の大きさに比例して嗅覚やら視力やらが発達してるの、だから……」

「だから?」


 俺が聞き返しているとなんだか森がざわつき始めていることに気が付く。心なしか地面が少し揺れているように感じる。さらに言えばちょっと空気がピリピリしている気もしてきた。


 その違和感をスラさんも感じていたのかレイナの肩から飛び降りるとボンッと煙を出してマッスルフォームに変身した。


「コーキ!! 何か来るよ!!」

「まじか」

「ほら来た」


 ドドドドドッ!!!と物凄い物音の方を見やると、木をなぎ倒しまさに猪突猛進で俺たちの方へ突っ込んできていた。しかし俺が想定していたより、もっと巨大だった。


「でか!? いやでっか!?!?」


 突進するだけで木をなぎ倒す膂力に一歩一歩が大きくヤツの体重に耐えられないのかドドドと大地が悲鳴を上げている。そして極めつけは雄々しく反り立つ二本の巨大な牙が道を塞ぐ森の木々を突き刺し根元から容易く引き抜いていく。


 全く止まる気配のない暴走特急肉弾列車は猛スピードで確実に俺たちを捉えていた。


「ちょちょちょ!!来てる来てる!!!」

「ほら逃げるわよ」


 俺とレイナが引く態勢をとりかけているとスラさんが一人、マグナボアを前に立ちはだかると受け止めるつもりなのか腕を前にして構えだした。


「お、おいスラさん!? 流石に無理だって! 相手が大きすぎる!」

「大丈夫だよコーキ。ボクたち、デスバラッドと戦ったんだよ?」

「負けたけどな」


 俺の余計な一言にスラさんが一瞬こっちを見て睨んできた。ごめんやん?


「……本当に大丈夫? Eランクと言ってもそれなりに強いわよ?」

「大丈夫だよ、見ててレイナ。コーキよりカッコいいとこ見せてあげる」

「え、なんで俺を引き合いに出すの?」

「……スラさんはもとからカッコいいわよ」

「ありがとう!」


 なんだこいつらイチャイチャしやがって。ならば見せてもらおうか。マッスルフォームになったスラさんの性能とやらを。


 俺とレイナは巻き込まれないように少し離れ、物陰に隠れてスラさんを見守る。猛烈な勢いのまま突進をしてくる巨大猪に対し、スラさんは静かに待ちの姿勢をとった。


 ピリピリと空気がひりつき、両者の距離は急速に縮まっていく。轟音を響かせながら突撃してくるマグナボアにスラさんはゆっくりと深呼吸をして集中する。


 そして完全にマグナボアがスラさんを捉え、さらに巨体を加速させるとその頑強な矛である雄々しい牙をスラさんへ突き刺そうとした。


 それをスラさんは見切り、身体を一瞬翻すと、牙の間に立った。そして筋骨隆々の腕でスラさんは二つの牙を脇に抱え、マグナボアの勢いを殺し、土が盛り上がるほどの力で踏ん張った。


 滑りつつも徐々にその勢いを失速させ、マグナボアは停止した。


 その光景を見ていた俺とレイナは感嘆の息を漏らした。


「おお……すげぇ……」

「スラさん、流石ね」


 完全にお互いの力が拮抗しているのか、マグナボアは何度も足を滑らせて前に進もうとするがそれをスラさんが許さず、ググっと力を入れてマグナボアを制止させていた。


「二人とも今だよ!」


 スラさんの合図に俺とレイナは一斉に駆け出す。レイナは抜剣し、俺はそのままいつでも抜刀ができる構えで茂みを突き抜ける。


「まずは足を止めるわよ!」

「了解した!」


 宣言通りレイナは低い姿勢をとりつつ流れるような剣捌きでマグナボアの後ろ脚の腱を切断する。すると自身の体重に耐えられなくなりマグナボアはドシン!と態勢を崩した。それを見計らい、俺は瞬時に風を纏って加速し、スラさんが牙を支えているヤツの前足を狙う。


 二刀一心流抜刀術「疾風(はやて)


 鞘から引き抜かれる刀身は俺の身体と同じく風を纏い、人が出せるとは到底思えない速度で抜き出される。


 その寸劇はまさに一閃。レイナが腱を狙って切ったに対し、俺の場合は丸ごと一本、大木のような獣足をバターのように斬り裂いた。


 外見では切れたかどうかも分からないが刃の通った箇所からブシュ!!と生暖かい血飛沫がスプリンクラーのように爆ぜる。


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!


 けたたましい雄叫びのような悲鳴が木々を揺らし、痛みに抗おうとマグナボアは大きく首を振った。すると牙を掴んでいたスラさんはそのまま上へ放り出されてしまった


「おわッ!!?」


 マッスルフォームとはいえスラさんの体重は俺たちより少し重くなった程度だ。上方向へ持ち上げられれば容易く投げ飛ばされる。


「スラさん!!」

「ボクはだいじょーぶ!」


 高く放り投げられたスラさんは空中ですぐさまマッスルフォームを解除し、近くの木の枝へ瞬時に触手を伸ばすと、収縮して着地した。


 グゥオウ!!グオオオオ!


 身動きが取れないことと痛みからかマグナボアは錯乱し、なんの意図もなしに首を大きく振り回す。その荒ぶる牙が木に当たり倒れてゆき、危険と判断した俺とレイナはマグナボアから距離をとった。


このまま弱るのを待つのは正直よろしくない。手負いの獣ほど危険なものはないからだ。あの巨大な牙と巨体が無作為に暴れるのはかなり危険だ。レイナもそれをよく知っているからか俺を見ると大きく口を開いた。


「牙を切って!!」


 レイナの叫びに瞬時に反応し、駆け出す。


 暴れ狂う牙は捉えることが難しいがそれは牙先の話。根元はまだ追える。


 あの時、スラさんを投げた時と同じ要領で瞬間的に風を圧縮して足に纏い、一気に解き放つ。走るよりも早く、空を飛ぶ隼のように駆け抜ける。暴れ狂う猪は時間をかけると厄介だ。早々に終わらせるべきだ。


 だから一回。それで決める。


 瞬速でまっすぐ飛びつつ、身体を翻しながら回転をかける。力はいらない。ただ遠心力に任せて刀を振るう。


 マグナボアは近づいてくる俺のことなんて気にせず首を動かし続けていたからか疲弊して一瞬だけ動きが鈍る。その隙を逃さず、狙いを定めて一振りで二本の牙に刃を通す。


 スパッと軽快な音と共にマグナボアの牙は切り落とされ地面に叩きつけられた。


 まるで辻斬りのごとく駆け抜け、かっこよく着地を決めようとするがこういう魔法を使うのは初めてなのだ。つまり、魔法を使い始めて日が浅い俺が扱うには難しすぎた。


 着地をしようと地に足を付けた途端勢いがありすぎてツルッと滑り、背中を強くうちつけてしまった。そしてその勢いのままゴロゴロと転がって木に体当たりをかます。


「ぐえっ!!」

「コーキ!」

「だ、だいじょうぶです……」

「よくやったわ!」


 牙が完全に切り落とされたのを確認して暴れ狂うマグナボアへレイナは駆け出す。すると何をしだしたかと思えばクルクルと剣と身体を回しながら一気に詰め寄った。回れば回るほど加速し、始めはブンブンとなっていた音が徐々にヒュンヒュンへ代わり、最終的には形容しがたいほどの速度で剣が回っていた。


 そして、遠心力が最大になった剣を流水のように回し、マグナボアの瞳目掛けて強く振り下ろした。


 ザバンッ!!!


 グオオオオオオ!!!


 レイナの渾身の一撃が効いたのかマグナボアが苦悶の叫びを上げる。完全に動きが止まり、マグナボアはグゥと唸る。だがまだ事切れていない。今は痛みに悶絶しているだけで慣れてきたらまた暴れ出す。


「スラさんトドメ!」

「むっ!」


 レイナの指示にスラさんはすぐさま応えて木の枝から大きく飛び上がると空中でまたボンッ!と煙を出してマッスルフォームへ変身し、そして空中から落下する速度を利用して加速しながら拳を構えた。


「ムラァァァァアア!!!」


 高所からの重力落下とスラさんの溜めた拳がマグナボアの脳天に突き刺さる。


 ドゴォ!!!!!!


 大地を揺らすほどの一撃にマグナボアは悲鳴を上げる間もなく完全に沈黙した。


「ふぅ……」


 すると力が抜けたのかスラさんはマッスルフォームを解除しポンとマグナボアの頭に乗っかり、地上へと降りる。


「へ、へへ……やったな」


 頭と足が逆さまになりながら俺はにへっと笑う。そんな俺にレイナは近づいて手を差し伸べて来た。俺は彼女の手を取り立ち上がるとパッパッと土埃を取り払う。


「なんとか倒せたわね。それにしても無茶しすぎよ」

「レイナさんが切れって言ったんじゃん」

「確かに言ったけど……あんな風に突っ込むなんて思わなかったから……」

「いやぁ……つい……」

「つい、であんなことできないわよ……」


 レイナは腕を組んでため息をつく。おや、俺の戦い方はお気に召さなかったみたいだ。まぁ俺自身ちょっと無茶な戦い方したと思ってます。


「でも助かったわ。無茶なやり方とはいえあの牙を切り落としたんだもの。すごいわ」


 お? 珍しくレイナが俺のことを褒めてる? いやぁ嬉しくなっちゃうなぁ!


「それに、いい状態のまま討伐できたから報酬も期待できるわよ」

「えっ! もしかしてパンケーキいっぱい食べれる!?」


 スラさんはキラキラと目を輝かせてぴょんとレイナの肩に乗る。


「ええ。スラさんも大活躍だったし、いっぱい食べれるわよ」

「やったぁ!!!」

「ほ、ほどほどにな……?」


 ふふっと柔らかく微笑んでレイナはスラさんを撫でる。


「ご褒美の前にこのマグナボアを解体しないとね」

「うん!」

「……で、できるの?」

「できるわよ。あなたの持つ牙を切り落とせる武器ならね」


 ニヤっとレイナが笑い俺の持つ刀に目を落とした。いや、これ解体用の道具じゃないからな?


 そんなやり取りをしながらもレイナの指示を受けながら俺たちはマグナボアの解体を始めるのであった。


次週の更新は諸事情のためお休みさせてください。

なので次回投稿は7月23日とさせていただきます。


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