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好きだ(ウィル視点)


「ローズ!! ローズ!!」


 妖精界と思われる場所に入れたが、居るのは呑気に飛び回る妖精ばかり。ローズの姿はどこにもない。妖精の力に満ちた世界で、普段通りの魔法も展開しづらいが、わずかにローズの魔力を感じ取りその方角へ進んだ。


 入り組んだ森の道を抜けると、開けた草原に出た。そこに、探し求めていた人がいた。


「ローズ!!」

「っ! ウィル……!!」


 泣いた瞳を見て驚く。横にいるのは、やけに神々しい人型の妖精だ。土の妖精王かもしれない。もしかして無理矢理連れ込まれたのか?!


 駆け寄ると妖精王がローズを引き寄せた。密着する二人があまりに絵になるほど美しく焦る。


「ローズを返せ」

『この娘は我が貰う』

「だめだ! ローズは私が妻にする!」

『娘はずっと泣いていたと私の家臣が言っているが?』

「!!」


 ローズが泣いていた……その事実に言葉が詰まる。もしかしてローズは私との結婚が嫌になってしまったのかもしれない。


「……ローズのことは、必ず幸せにする。私が、ローズでなければだめなのだ」

「頼む、妖精王」と頭を下げた。


 すると、弾かれたようにローズがこちらへやってきた。


「……ローズ……!」


 思わず彼女を抱き止める。ローズは妖精王の方に向き直ると、「アース様、お気遣いありがとうございます。私、帰ります」と言った。


『また遊びに来るとよい』


 その声と同時に、私たちは光に包まれた──。



 土の妖精王のもとから庭園へ戻ると、ローズは泣いていた。そうして恐れていた言葉を聞くことになってしまった。


「婚約を、破棄してください」


 雷に打たれたような気分だった。陽気な天気だというのに、豪雨に打たれているかのような衝撃。体中から力が抜けていく。魂が消えていきそうだ。


「……何故だ?」


 やっと動いた口からは、女々しく縋り付くような声が出た。彼女は下を向き、口をぎゅっとつぐんでいる。手を握りしめ、泣きながら、何かをこらえながら、言葉を選んでいるようだった。そうしてやっとその小さな唇が紡ぎだしたのは、私が切望していた言葉だった。


「ウィルが、好きだから、ですわ」

「!!」

「キズモノにしたという同情で結婚していただくのは申し訳ないと、ずっと思っていたんです。だから、あの、王女様へ気持ちを伝えてきてください。私とのことは無かったことに──」


 そこまでしか聞けなった。彼女をかき抱く。悲鳴のような声がしたが、問答無用に力いっぱい抱きしめた。何故そんなことを言うのか理解できない。私は君に捨てられるのをこんなにも恐れているのに。


「……好きだ」


 ぴくっとローズが反応する。そうして今やっと自分が初めて想いを伝えているのだと気づいた。しかし一度口に出すと止まらなくなった。


「王女は魔法使いとして尊敬しているだけだ。君への想いとは天と地ほど違う」

「君が、ローズが、昔から好きだった。君を傷つけてしまう前からずっと」

「君を傷付けてしまって、魔法を極め制御出来る力を身に付けてから迎えに行こうと決めていた。時間がかかったが、私は、ずっと君だけを想って生きてきた。好きだ。愛している。君だけだ」


 畳みかけるように想いをぶつけた。言葉を選んでなんかいられない。彼女の顔を覗くと、頬が薔薇色に染まっていた。うるんだ瞳を見開いてふるふると震えている。


「嘘ではないぞ。……遠征で会えなくて、どれほど辛かったか。いつの間にか使用人達とも仲良くしているし。幼い頃も美しかったが、今の君はとても美しい。誰かに取られないか心配でたまらない」

「お、王女様の方がお美しいです!」

「私にはローズが一番輝いてみえる」


 ローズの手をとり、キスをした。アイスブルーの澄んだ瞳から、美しい水滴が一粒流れた。


「頼むから他の女のところへ行けと言わないでくれ。君のそばに居させてくれ」

「ウィル……」

「私と結婚してほしい」


 ローズは信じられないという顔をした。何をそんなに誤解していたのか。いや、自分のせいであることは明らかだ。何せ今まで気持ちを伝えてこなかった上、ここ数日は彼女を避けていたのだから。


「結婚は嫌だろうか?」


 ふるふると首を横に振る。可愛い。思わず微笑むと、ローズも泣き笑いになる。


「好きだ」


 この先何度でも伝えよう。傷痕を消し去っても彼女が私を選んでくれるように。

そう心に誓いながら、私は彼女の唇に自分のそれを重ねた。

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