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庭師を目指します

 婚約者といきなり同居かと思いきや、早速別居生活がスタートしました!


 初日から、白薔薇とともにウィルから手紙が届くようになりました。手紙は簡潔で、ウィルらしい美しい文字で綴ってあるのですが、『ローズに会いたい』とか『君をまた抱き締めたい』とか、顔から火が出そうな恥ずかしい言葉ばかりで、返事に困ってしまいます……。

 仕方がないので、その日あった出来事や淑女教育の進捗等を出来るだけ簡潔に書いてお返事しています。


 それ以外は困ったこともなく、私とウィルの婚約披露パーティーも先延ばしになり、快適な毎日を過ごしています。

 お義父様もお義母様も優しく気遣ってくださり、使用人の皆さんもきめ細かくお世話をしてくださって、とても居心地が良いです。

 公爵家の使用人の皆さんは、主人の爵位に恥じない教育がなされており、佇まいも優雅で品があります。また、私のような新参者に対しても皆さん親切にしてくださるので、あっという間に皆さんが大好きになりました。


 伯爵家のみんなほど気安いやり取りはできませんが、公爵家で働く方々と私は積極的に話すようにし、少しずつ顔とお名前も覚え、仲良くすることが出来ています。


 連日の淑女教育は、意外にも順調に進んでいます。公爵家の家庭教師の方々も大変驚かれていました。伯爵家で幼少期からしごかれていたせいでしょうか。

 一般的な教養や礼儀作法はもちろん、伯爵令嬢に果たして必要かと思われるような、外国語の勉強や、馬術、剣術、ハレック王国の歴史など、とことん詰め込まれてきました。魔法の素質がないので、他の努力でカバーできそうな分野を極めさせようとしたのでしょう。

 お父様に感謝せねば! 過去の家庭教師の皆さんもありがとうございました!


 さて、本日の淑女教育は一日お休み。アンナと公爵家の庭園をお散歩しています。

 公爵家の庭園はとても広く、実家の倍くらいはありそうです。東屋もあり、ティーパーティも出来そうな広さ! 素敵すぎます!

 あわよくば、この庭園のお世話をする庭師になりたい!


 そんな願望を心に持ちながら、隅々まで見学するつもりで歩いていると、初めて見かけるご年配の男性がいました。使用人の皆さんの顔は覚えたつもりでしたが、庭師さんでしょうか。色とりどりのパンジーを植えていらっしゃる途中です。


「初めましてこんにちは。少し見学させていただいてもよろしいですか?」


 声をかけると、手を止め、麦わら帽子を少しだけあげてこちらをじっと確認し、ふいっと目をそらされてしまいました。


「……貴族様が何の用じゃ」

「もしよければ、わたくしにもお庭のお世話をお手伝いさせてほしいのです」


 お義父様とお義母様には了承を得ています! 意外にも淑女教育がトントン拍子に進んでいるので、空いた時間は庭手入れを手伝いさせてほしいというと、お二人とも快諾してくださいました!

 

「ふんっ。庭の手入れなどできるわけがなかろう」


 やはり、こんな小娘が素晴らしいこのお庭のお手入れに参戦するなど、おこがましいことですよね……。

 しかし、私もお花が大好きです!ここでそうですかと引き下がれません!


「アークライト家のお庭はご存じで?」


 このあたりの庭師さんなら必ずやお耳に入っているはず。


「あの名高い優美な庭じゃな。わしは直接見に行ったことはないが、庭師仲間がさんざん騒いでおったから知っておる」

「申し遅れました。わたくしはローズ・アークライトと申します。あの庭園を仕上げたのはわたくしですわ。庭師はわたくしです!」

「はぁ?」


 お爺様が素っ頓狂なお声を出してやっとこちらを見てくださいました。そこでポンっと花を出します。「お近づきの印に」と小さなブーケにして渡しました。


「ほう。魔法で花を。……ではその伯爵家の庭園も魔法で?」


 挑戦するような、値踏みするような視線で私に質問を投げかけます。試されている、と肌で感じますが、淑女たるもの、笑顔を崩しません!


「いいえ、お花は出せますが、庭園のお花は全部手作業でお世話しておりましたわ。土の栄養を少し魔法で良いものにしてあげたり、雨風の強い日は加護をつけたりしましたが、基本的には種や苗を土に植え、花が咲くまで間引きしたり虫が来ないように工夫したり、雑草を抜いたり。わたくしは花の妖精が見えるので、声を聴きながら、望むままにお世話していました」


 お爺様は私の話を神妙に聞いていたかと思うと、徐に立ち上がり、「……こちらに来ておくれ」と私を別の場所へいざないました。


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