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伯爵家のみんなといただきます

 伯爵邸に戻ってから、メイドのアンナが激情して大変です。


「ああ! お嬢様の純白ドレス! 公爵家御用達のドレスデザイナーならば、それはそれはお綺麗でしたでしょうに! 見たかったです! でも、本当はっ! 私がご準備して差し上げたかったぁぁ!!!」


 床に転がらないで! お顔をあげて! 涙を拭いて! メイド長が白い目で見ていますよ!


「アンナ、ごめんなさい! 見せてあげられなくて……」

「お嬢様のせいではありません! 公爵様ったら、衣装まで準備万端とかやりますね! ……それよりも! 来週末にはここを出ていかれるだなんて……!」

「アンナ……」


 声を上げて泣くアンナに駆け寄り、抱きしめました。私も怒涛の展開に振り回されてうっかり婚約式まで終えましたが、まさかこんなに早くこの家から出ていくことになろうとは思いもしませんでした。この温かな家族と家族同然の使用人の皆様と離れ離れで暮らす日がくるなんて……!


 そして当然、私が手入れしている庭園も、温室も、今まで通りにはお世話できないでしょうね。


 気づけばメイド長も、ほかのメイドの皆さんも、涙ぐんでいます。寂しさがこみ上げてきます。だけど、泣くよりも、皆に笑ってもらいたいです。


パン! パパパパパパパパパ!


 メイド一人ひとりに可愛らしい黄色の花を出しました。


「感謝の気持ちのミモザのお花です。今までたくさんお世話をしてくださってありがとうございます。これからはお父様やお母様、お兄様をよろしくお願いいたしますね。皆、大好きよ!」

「お嬢様……!」


 アンナをはじめ、メイドの皆さんに囲まれて、やっぱりしばらく私達は涙を流したのでした。


「ズビッ、ズズズ……お嬢様、私、公爵家にお供させてもらえるよう、奥様にお願いしてみます! 公爵家の使用人の皆様もいい方ばかりですけれど、油断は禁物ですし!!」


 ひとしきり泣いたあと、アンナがそう言い出してくれました。何の油断が禁物なのやら私には分かりませんが、アンナが一緒に来てくれるのならば、とっても心強いと思い、私は大賛成しました。


***


 その日の夕食は、お父様の指示で、使用人の皆さんも含めて全員で食べることになりました。メイドたちと泣いた私を気遣ってくださったようです。


 我が伯爵家は使用人にも手厚く家族のように接することをモットーにしておりますので、特別な日はこうして全員で食事をするのも珍しくはありません。


「ローズが公爵邸に行けば、なかなか会えなくなるかもしれないなぁ」

「あらどうしてですか? お父様」

「公爵様は独占欲が強そうだからね。可愛いローズを閉じ込めるつもりじゃないか?」

「あはは! ありえますね! お父様!」


 レオンお兄様、笑い事ではありません! つ、つまりは、私が外に出すには恥ずかしい嫁だから、外には出さないということですよね。さすがに監禁まではいかないにしても、軟禁状態のようなものなんでしょうか? 庭のお手入れくらいはさせてもらえるとよいのですが……!


「私はカタリナちゃんに会いに行って、今度は結婚式の衣裳づくりかしらね~。婚約披露パーティのドレスは実はもう着手してるし!」

「は、はやーい……」


 なんだか知らないところで色々準備されていたようです。私の軟禁計画。


「……公爵様はお嬢様を大切にしてくださるんでしょうか」


 シェフのカールが不安そうに言うと、次々と皆が発言していきます。


「ご婚約を申し込まれた時も、公爵様はローズ様に見惚れていらっしゃいましたし、恐らくもうメロメロかと」


 執事のミハエルが言いました。きっと勘違いだと思います。私がウィルに見惚れておりました!


「とってもお似合いですもの」

「お二人が並ぶと絵画のようでしたわ」


今度はメイドのケリーとジーンがそう言うと、「公爵様も素敵ですけど、お嬢様はとびきりお綺麗ですからね!」とアンナが自慢気に付け足しました。

 ちょっとお父様、頷かないで! メイド長も! 身内の贔屓目ですよ!


「婚約式が終わった途端、早速イチャイチャしてたんだからー! 皆にも見せたかったわ!」

「ちょ! お母様!?」

「前公爵様に『羽目を外さないように』って叱られてたもんなぁ」

「お兄様っ!」


 お母様とお兄様の発言にあたふたしていると、メイド長が涙ぐみながら「お嬢様がお幸せなら何よりでございます」と言い、みんな次々と、「よかったですねぇ、お嬢様!」と祝福してくれました。


 もしかしたら婚約破棄されて出戻るかも、とは言い出せず、皆さんの話題の的が私ばかりで恐縮してしまった私は、黙々と夕食を口に運んだのでした。


最後までお読みくださってありがとうございました!

明日もまた投稿しますので、よかったら読んでください!


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