お引越しですか
婚約式の後は、公爵邸に戻り食事会が行われました。両家の親達は楽しそうにおしゃべりしています。
「石の中にお花が咲いてるなんてとっても素敵よね~」
「カタリナちゃんもそう思った? これは今度のお茶会でお話しなくっちゃ!」
「新しい流行になる。花入り魔法石を販売するのも良いかもしれないな」
「はははっ! 早速商売の算段か。引退したと言えど流石ですな前公爵」
前公爵様もお父様と歓談されていて、過去のわだかまりが解けてよかったと安心いたしました。
私は、なんだか歓迎されているかのような雰囲気に混乱しております。魔力を流すことさえ難しく感じるような不出来な嫁で良いのでしょうか……。
ウィルは……、私の目の前に座り、私を見つめています。
何故でしょう。どこか私に変なところがあるのでしょうか?見たことのない穏やかな微笑みを浮かべてこちらを見つめるウィル。目が合うたび嬉しそうに笑みを零すので、私は混乱しています! ご飯の味なんて分かりません!
私がウィルの視線で困り果て、赤く縮こまっているのを満足そうに眺めています。
その視線に気づいたお兄様も、「おい、ローズ。あれ、ウィルで合ってるよな?」と不思議な質問をしてきました。私にも分かりません!
「アークライト伯爵、少しよろしいでしょうか」
ウィルが突然発言し始めたので、皆が話をやめ注目しました。
「私達はまだ婚約したばかりではありますが、ローズを公爵家の嫁として迎える為、淑女教育を受けてもらう必要があります。彼女に毎日こちらへ通ってもらうのは、危険も伴いますし、こちらに居住を移してもらいたいのですが。いずれこの屋敷に住むことになりますし」
えええ! 私公爵家に住むんですか? 婚約者なのに?
いえ、たまに聞きますよ、結婚前から同居。ありますよ、そういうこと。
しかし私がですか?!
「承知いたしました、公爵様。ですが、私達もこの子との別れを惜しみたい。月末にこちらへ越してくる形でいかがでしょうか」
お父様も私の淑女教育が必要なことは予想していたのか、流れるように月末で、と提案しました。
月末ということは、あと二週間位かしら……。
「……いや、来週末だ」
「!」
その場に居た全員がきょとーんとしてしまいました。来週末!? 何故でしょう、そんなに急いで取り掛からないと公爵家の嫁として不十分ってことですか? もうなんだかそれなら婚約破棄寸前な気もしてきますよ? やっぱりわたしじゃ不釣り合いということですよね?
「婚約したことを発表するパーティも開きたいのよ~! ローズちゃんを早く自慢したいし! だからなるべく早めに越してきてほしいの。もちろんダリアちゃんもいつでも遊びにいらしてね」
カタリナ様が急ぐ理由を補足してくださいました。婚約披露パーティ。あぁ、やってる貴族いますね。というかよく開催されますね。みんなでお祝いしますねぇ……その主役? 私?
ちょっと無理かもしれません。多くのご令嬢に命を狙われそう。
赤くなったり青くなったりする私をよそに、私のお引っ越しは来週末になることが決定されました。




