おはようございます
『ローズ! 起きて! ローズ!』
デイジーが耳元で叫んでいます。
起きなくちゃ、とは思うものの、目が開きません。
『朝だよ! ローズ! 起きないと!』
「んん……」
昨晩なかなか寝付けなかった私は、なんと寝坊してしまったようです……。うぅ、眠い。
公爵邸に伺うのは午後からですし、もう少しだけ……。
『メイドさんがここに来るよ! それで、さっきからウィルが下にいるよ!』
「ウィル!?」
飛び起きると同時に、大きめのノックの音が響き、返事も待たずドアが開きました。
「お嬢様! 起きてくださいませ! 公爵様がおいでになりました! 早くお支度を!」
私の専属メイドで、姉妹のような存在のアンナ。
ブラウンの髪をキッチリとまとめ、同じくブラウンの瞳を吊り上げています。我が伯爵家は風通しの良い職場なので、メイドであっても遠慮なく意見を言われますし、こうして寝坊も叱られます。
「ご、ごめんなさい! でも、なぜ朝からウィルが? 午後からのお約束でしたよね!?」
慌ててベッドから降り、すぐ湯浴みに連行されながらアンナに尋ねます。
「分かりません、お嬢様が起きるまではお茶を飲んで待つと仰って、若様と歓談されております!」
「ええええ……! と、とにかく寝坊してごめんなさい!」
「私の方こそ、申し訳ございません! 旦那様から昨日はお疲れのご様子だったので、ゆっくり寝かせて差し上げるようご指示がありまして……。こんなことならいつも通りのお時間にお声がけすればよかったですわ……!」
公爵様……ウィルの中で、私は朝もしっかり起きられないような体たらくだと思われたかもしれません。
「悔やんでも仕方がないわ! よろしくお願いします!」
「「「承知しました!!!」」」
いつのまにか部屋に入ってきていたメイドさん達に囲まれ、私は史上最速でドレスと髪を整えました。
応接室に入ると、ウィルとお兄様、お父様で歓談されていたようでした。
私が入るなり、苦々しい顔のお父様が目に入ります。お兄様は面白がっている様子。
あああ、怒られるー!
「お待たせして申し訳ございません!」
先手必勝! 早速謝罪します!
すると、ウィルが立ち上がり、私の元へ早速と来てくれました。公爵家へのご挨拶は午後からだからか、今朝は昨日よりも少しラフな格好です。
「おはよう、ローズ。急がせて悪かった」
胸を見せろと迫った破廉恥公爵様とは思えない程の、爽やかな笑顔! 朝から眼福でございます。
「おはようございます、ウィル。こちらこそお待たせして申し訳ございません」
「約束は午後からだったのだから問題ない。悪いが二人で少し外出したい。良いだろうか?」
予想外の外出のお誘いにきょとんとしてしまいました。外出も出来そうな洋装にしてもらってよかったです!
「は、はい。でもどちらへ?」
ウィルは「転移魔法で飛ぶ」と言うと、私を引き寄せ腰に手を当てました。ものすごい密着度に心臓がバクバク鳴りはじめましたよ。あ、お花も飛んでる! ごめんなさい!
「では伯爵、また午後に」
ウィルがそう言った途端、足元に転移魔法の魔法陣が展開され、私は初めての転移を体験しました。「ひゃああぁ!!!」と淑やかな令嬢らしからぬ叫び声が出てしまったのはご愛敬で……。




