農民大魔王様 〜農家から異世界勇者に転生したけど大魔王から魔族の未来を託されちゃったから内政に励みます〜
なろうラジオ大賞2第二十一弾。テーマは『農民』と『大魔王』です。お題コンプリート! ばんざーい!
登場人物が多いから二人脚本には向かないんじゃなかろうかと言う危惧もありますが、声優さんだから一人複数の役でも大丈夫ですよね? そもそも選ばれる可能性の方が低いですし。
選ばれなくても、読んでくれる方さえいれば、この作品の意義はあります。どうぞお楽しみください。
「新大魔王様のおなりです」
会議室の空気が張り詰める中、私は堂々と上座に立つ。
「私が先代を倒し、大魔王となった。諸君の忠誠を期待する」
掲げた大魔王の証に、平伏する魔族の長達。だがその背には不満が見え隠れする。
「では新たな方針を伝える」
こんな空気で上手くやれるのかな。……いや、やらなくちゃ。私は未来を託されたんだから!
「内政をするぞ」
「どういう事ですか大魔王様! 人間界への侵攻は!」
「一時凍結とする。まず北の荒地を開墾し、食糧生産を行う」
「じ、人員はどこから」
「兵士を使う。軍を四つに分け、二つは農業、二つは戦闘訓練を行い、一年毎に一つずつ交代させていく」
「何をふざけた事を!」
やっぱり噛み付いてきた。最前線に立つオークの長。聞いてた通り。
「従わぬと言うのか」
「当然だ! 先代を倒したと聞いたからどれ程の猛者かと思ったら、内政などにうつつをぬかすとんだ臆病者だったとはな!」
「戦いに内政は不要だと?」
「当たり前だ!」
「ならば私と勝負をするか」
「何!?」
「勝てば貴様が次の大魔王だ。侵攻も好きにするが良い」
「良かろう! 受けて立つ!」
「ただし」
私は指を突き付ける。
「勝負は一週間後。その間貴様には野原での野営を命じる。水も食料も武器も全て現地調達で賄え」
「なっ! 無茶な!」
「無茶とは何だ。内政が不要と言うなら、内政でもたらされる物を使用するのは公正ではないだろう」
「うぐっ……」
静まり返る一同。
「前線の将に兵站の重要性など今更説くまでも無いが、それが内政から生まれている事も忘れてはならない」
「……理解、いたしました」
平伏するオークから他の長へと目を移す。
「諸君! これは戦いだ! 剣の代わりに鍬を持ち、人ではなく土を征服する、国を豊かにする戦いだ! 百年先の子孫までの幸福を勝ち取ろうではないか!」
『おおーっ!』
良かった。方針は受け入れられた。人間界に侵攻しているのは、魔界は食物生産性が低く、豊かな土地を求めての事だそうだから、これで戦いを回避できる。
それにしても農家の次女の私が異世界で勇者になって、スキルを駆使して魔王城に忍び込んだら、大魔王は病気で瀕死。
自分が滅びたら魔族は統制が効かなくなって、人間も魔族も大変な事になるって言われたら、まぁやるしかないよね。
幸い農業の知識はあるし、シミュレーションゲームはめっちゃやり込んでたから、内政頑張って、人間界なんか侵攻しなくても豊かに暮らせる国にしていこう!
読了ありがとうございました。
壮大に何か始まりそうですが、別に続きません。オークに兵站と内政の重要性を説きたかっただけです。実際に一週間野外生活をさせて、ヘロヘロのオークをワンパンで沈める展開にしようかと思っていたのですが、字数が足りないので諦めました。オーク、運の良い奴……。
とりあえずお題は全てコンプリートした訳ですが、期限まではまたぽつぽつ書いて参りますので、また是非お立ち寄りください。