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私警察官。今、ロッカールームにいるの。2



「―――きみだよね? ハンニンは」



 そうツキノさんが指した人物。それは、ハタノ君でした。



「……どうして、僕だと?」



 ハタノ君は、震える声で答えます。



「私も気になるわ。どうして、ハタノ君が犯人だと思ったの?」



 コマツ部長が首を傾げて尋ねます。

 これには私も同感です。別にハタノ君をかばうとではなく、単純に疑問に思います。



「さっき、タダノさんに背後霊がいるって言ったじゃん。そのが、ムジツをシュチョーしてるって」



 確かに言ってましたね。背後霊が私の無実を主張していると。それで、私がひとまず釈放……保釈? された訳ですが。



「そうだったわね。それが?」


「その霊って、どう見てもその人……ハタノくんなんだよね」



「「―――はい?」」



 意図せず私とコマツ部長の声が重なります。

 私の背後霊が、ハタノ君ですって? いやいや



「生きてますよね? ハタノ君は」


「うん。だから生霊いきりょうなんだと思う。タダノさんに憑いてるの」


「生霊……ですか」


「イキリョウって何だ?」



 私の横からダイバが口を挟みます。



「生霊――あまりに人へのシューチャクがすごいと、生きたままその人に取り憑いちゃう事があるの。けどだいたいは、取り憑かれた人も、取り憑いちゃった本人も気づかないんだけどね」


「……何だそりゃ」



 ダイバが理解を諦めたように肩をすくめます。そうですね、気持ちは分かります。



「そんな、僕が……タダノさんの背後霊に? そんなの……それって」



 一方で、ハタノ君はショックを受けたようにワナワナと口元を震わせています。

 その隣で、コマツ部長が口を開きました。


「先生。タダノにハタノ君の生霊が憑いていて、それがタダノに無実を主張していると言う事は

 ―――もしかして、ハタノ君の生霊が、ハタノ君の罪を自供してるって事ッ!?」


「うん。そーゆー事……だと思う」



 コマツ部長の問いに、ツキノさんは頷きました。



「この、ずっと言ってるんだよね。『ごめんなさいタダノさん』『僕のせいで』『全部僕が悪いのに!』……って。苦しそうに」


「っ!」



 ツキノさんの対面で、ハタノ君が息を呑むのが分かりました。



「けど仮にハタノ君がやったとして……ハタノ君はどうやってこいつのロッカーにパンツを入れたの? 鍵が掛かっていたのよ?」


「それなんですけど」



 コマツ部長の質問に、今度は私が口を挟みます。その鍵が掛かっていた問題について、ずっと言いたかった事があるのです。




「―――あの程度の鍵、知識と簡単な道具さえあれば、誰にでも開けられるんじゃないでしょうか?」



「あんた。何言ってんのよ」


「コマツ部長」


「何よ」


「ヘアピン貸してもられませんか? 二本ほど」


「…………」



 コマツ部長は憮然としながらも、自分の頭からヘアピンを二本抜いて私に差し出してくれました。



「どうも」



 と私は受け取ると、一本を適当な所で折り曲げます。



「ちょっと!」


「まぁ見ててください」



 そのまま扉の開いた私のロッカーの隣――ダイバのロッカーに向かうと、その鍵穴の上下に二本のヘアピンを挿入します。上の方のヘアピンをこう動かして……ここで二本を同時にひねれば




 ―――カシャン。 キイィ




 と、誰にでも簡単に開けられる訳です。




「ね?」



「「「「…………………」」」」




 私が振り返ると、全員が固まっていました。中でもコマツ部長とダイバは、犯罪者を通り越して異常者を見るような目で私を……あれ?



「―――『ね?』……じゃねーわよ! 何その変態技術!? ちょっと、怖いんですけど!」


「コマっさん。やっぱ犯人こいつっすよ!」


「だから違いますって。やり方を知っていれば誰にでも開けられるって話です。だから、私以外の人にも十分犯行は可能で」



「あんた以外の誰ができるってのよッ!」

「てめぇ以外の誰にできるっつーんだよッ!」




 コマツ部長とダイバの声が重なりました。あまり広くないここ男子更衣室に、二人の大声が響きます。



「……えー」


「『えー』じゃない。仮にハタノ君が犯人だとして、ハタノ君にそんな事できる訳ないじゃない。……あんた、もうちょっと考えてから物を言いなさいよ」



 コマツ部長にダメ出しされてしまいます。……ううむ。私としては、良い線を行っていると思っていたのですが。



「できませんか? ハタノ君」



「…………できないです」




 持論を諦めきれない私は、真犯人であるとされたハタノ君に直接聞いてしまいます。しかし彼は、硬い表情で首を横に振ります。



「僕が鍵を開ける事ができれば、今頃こんな騒ぎにはなっていません。鍵を開ける事ができなかったからこそ、今、こんな事になってしまっているんです。―――タダノさん」


「はい?」



 ハタノ君は私に目を合わせます。その目は、いつにも増して真剣なものでした。すると




「すみませんでしたっ!!」




 そう叫び、彼は勢い良く頭を下げました。そして、次のように語ったのです。




「―――昨日の夜、僕が間違えて『収納』でタダノさんのロッカーに妹の下着を入れてしまいました。慌てて取り出そうとしたのですが、鍵が掛かっていて開ける事もできなくて。……朝、タダノさんに正直に言って回収しようとしたのですが、モノがモノだけに言い出す事もできなくて。それが、このような騒ぎになってしまい、本当に、申し訳ありませんでしたっ!」



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