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私警察官。今、女子トイレの前にいるの。1



「大丈夫でしょうか? ツキノさん」


「どうでしょう。だと良いのですが」


「…………」




 私とハタノ君、それとダイバの三人は今、女子トイレの前でツキノさんを待ちます。


 気持ち悪いと入って行ったきり、暫く待ちましたが一向に出てきません。我々男三人に、時々利用しに来る女性職員のいぶかしげな視線が刺さります。



「それにしても、最低でしたねあの男。殺されるべくして殺されたんだと僕は思います」



 ハタノ君のいきどおりに、腕を組んで目を閉じていたダイバが薄目を開けます。おっと



「おいてめぇ「同感です。……と、言いたい所ですが」



 私はえてダイバに被せるように口を開きます。



「殺人は犯罪――重罪です。警察官である我々が『殺されるべき』とは、決して口にして良い事ではありません」



 私の台詞、説教ですね。に、ハタノ君はハッとしたように顔を上げます。



「確かに、そうですね。僕の失言でした。すみません」


「まぁ気持ちは分かりますから。次から気を付けるようにしましょう」


「……チッ」



 謝罪を述べるハタノ君の横で、ダイバが舌打ちを鳴らします。……はぁ。この場で怒鳴られるよりかはマシですかね。



「犯人は十四歳の少年で、被害者――タニオカ氏に性的虐待、を受けていたのですよね? その事が、恐らく動機になったのだろうと」



 気を取り直すため、私はそう口にします。



「であれば、情状酌量の余地は認められるのではないでしょうか? 未成年という事でもありますし」


「そう、ですよね」


「…………」



 情状酌量が認められるか否かは裁判所の判断であり、その判断をどう取るかは犯人次第です。

 そもそも、まずはその犯人の少年であるミキヤ君を見つけ出さない事には始まりません。無事だと良いのですが。


 結局の所は気休めに過ぎない私の台詞に、ハタノ君は頷き、ダイバは再び目を瞑ります。



「しかし、分からないのですが」



 話のついでに、私は気になった点を二人に尋ねる事にします。



「性的虐待と言っても、犯人は少年――男ですよ? タニオカ氏はオカマというわけではなく、普通……ではありませんでしたが、男らしかった気がします」


「「……?」」



 で? と問うような視線を二人が向けてきます。






「―――オカマでもない男が好き好んで男を抱くとか、気持ち悪くないのでしょうか?」






 私の素朴な疑問に、二人は何とも言えない表情を浮かべました。



「それは……」


「知らねぇよ。けど、そういう奴もいるんだろ? 穴さえあれば男でも何でも良いっつうケダモノみてぇな変態が」



 言葉を濁すハタノ君に代わるようにして、ダイバが仏頂面で答えます。



「つーかよ。男を抱かせる違法風俗店があるって噂は、テメーだって聞いてんだろ?」


「ええまぁ。噂だけは」



 私は首を傾げながら一応の首肯を返します。



「普通のに比べて料金が格安だからな。廃れねぇんだよ。そういう所は」


「そうなのですか? 私はてっきり、小金持ちのオカマの人が、仮初かりそめの恋愛を楽しむために利用するのかと」



 そっちの道の特殊な世界なのだろうと思っていました。どうしても、コマツ部長のご尊顔が思い出されてしまいますね。




「そういうソフトな(・・・・)需要だけなら、まだ良いんだろうけどよ」




 そう言って、ダイバは溜息をつきます。



「それでもやっぱり普通に女抱く所よりか需要はねぇ。男相手なら多少乱暴に扱っても壊れねぇっつう事で、実態は何でもござれ(・・・・・・)だそうだ。それこそ、縄とか鞭とか蝋燭とかな。征服感がハンパないんだとよ」


「え゛……そうなの、ですか?」



 ダイバの話に、思わず眉をひそめてしまいます。男であるからこそ、余計に歪んだ欲望の捌け口になってしまうという事でしょうか。


 事実なのだとすると、本当に酷い話があった物です。



「と言うか、妙に詳しいですね。ダイバ。あなた……まさか」


「ーーッ! 俺じゃねぇ! 情報屋に聞かされた話だッ!!」



 ダイバは顔を真っ赤にし、私の疑惑を否定します。



「それにあくまで噂の話だ! その違法娼館が特定できりゃ、俺が真っ先に取り締まってやるッ!!」


「ですよね。ハハ」



 ダイバらしいですねと私は肩を竦めます。少し……いや、かなり安心しました。



 と、そのタイミングで、ドスドスと特徴的な足音が聞こえてきます。

 制服姿の巨体の上司――コマツ部長が、額に汗を光らせながら戻って来たのです。




「フゥ……。あんた達、先生の様子はどう?」


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