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#4賢者殿は異世界介入に着手したようですよ

ちびっことうとう村人と接触。情報と技術は等価交換です。

「殿下!この錬金薬の出どころはどこです!」

「しつこいぞ。森の中に住んでた賢者にもらった!製法も何も私はしらない!」

「しかし…この花は殿下が手に入れたとして、薬の品質がこの国では作成不可能なレベル!」

「はぁ…。魔の森に住んでる賢者殿だぞ、他国からの知識も持っているであろうし何よりも20年以上戦場にも出ていたと言っていた。」

「この製法が確立されれば、他の薬も品質が上がります。疫病やそのほか不治の病とされてるものにも効果が出るかもしれませぬ。

 帝国との戦争でもこの治療薬があれば、兵士の生存率は上がると思います…」

「だからといって、私の恩人を無理やり城へ招くのは私が許可しない!陛下にもそのように進言した。彼女が自ら足を運んでくれるというのであれば客人として招くが、無理に国へ従属させることは絶対にさせない。」

「・・・・」



「勇者ってなんですかね?」

 唐突過ぎるそれに猫と犬がきょとんとする。

「物語的な主人公的なアレのこと?」

「今日行ったディクトリア王国の村の村長さんが言ってたんだけど、勇者っていう職業なんですかね?」

 唸ったり転がったりしながら、訪問した先で聞いたことを話して聞かせる。

「勇者様御一行が現れて国が平定されるらしいよ。勇者って魔王倒したりじゃないんだね。」

 白猫が古い文献に目を通して疑問に答える。

「勇者は、人為的に召喚されたヒューマンである。人族ってことか?召喚は、王国、神皇国のみが行える儀式で一度に呼べる勇者は各々国で1名ずつ。ようは、二人の勇者が国の争いを止めに来るってことね。”世渡し”とは違うもんみたいだな、無理やり”世渡し”させてこちらに呼び寄せるってことか。」

「もしや…帰れるかもしれないってことですか!」

「いやぁ…無理だと思うぜ。大気中の魔力量が少なすぎる、ざっと近隣の町や王都見る限りじゃ穴開けれるほどでかい魔力持った奴もいなかったし、居たとしても技術的に同じ座標に帰れるとも思えんし。仮にレオがおれたちのところでいう”世返し”の魔導術式システム作ったとしても、回収はできないから勝手に使われて色々困ったことが起きそうだ。」

 希望的観測はしない。と現実的なことを述べる猫を見て、レオも頷く。そもそも自分は帰らなくても困らないし、帰ったとしても同じ生活だ。むしろ今の状況を楽しんでいろんな文化を吸収するのも一興。

「帰れない前提のこの拠点だし、これを捨てておくのもあとあとアブナイしね。小人族がこの地で増えていけばそれはそれでちょっと面白い。」

「主の分裂期はいつですかね…?」

「わかんないけど、私の魂なら3,4回分裂しそうですねえ。」


 今日は少し人と接してみようと思います。

「手元にある情報は、ディクトリア王国、モネスティア帝国、リストデア神皇国の3つだな。帝国はなんだか不穏な動きがあるとかで周りの国から警戒されてるらしいから、様子見、神皇国は宗教的な要素が強いので足を踏み入れるのはもう少し情報が揃ってからかな。

 件の王子のこともあるので、初見は王国がいいと思う。」

 ケットの言うことは最もですが、帝国の有する未開の技術とやらが気にはなります。

「ひとまずはディクトリア王国内のはずれの村へ行ってみましょう。うわさ話でも、聞ければいいですね。」

「商材はどうされる?持ってって怪しまれないのはポーション、衣類、革細工この程度かな?鍛冶関係とかアクセサリー関係。金属のものは様子を見たほうが良さそうですがな。」

「今日は、植物の苗と薬草、ポーションにしましょう。小人族にも馴染みがないところなので、おそらく私は幼児扱いされるとおもいますし…」

 そんなに慎重に動く必要もないようには思いますが。じい様の口癖は守ろうと思います。

「身の丈に合わない技術は毒。」

「情勢がわからない上に、帝国が不穏だからなあ。」

「引きこもってても生活はできますが…、面白みに欠けるのでそろそろ出かけましょう。1週間以内には戻ることにします!

 旅の準備はチェストに!準備開始です!」


「おやおや?見ない子だねえ。お使いかい?」

「はい!村で困ってる人を助けてきなさいとじい様が(昔)言っていましたので…。」

 猫と犬は本の中に戻って様子を見ている。

 村の状態は一見平穏そうに見えるが、すれ違う人の顔色があまり良くないように思われる。

「この村の方たちは、元気がなさそうですね。」

「聡いお嬢ちゃんだねえ。この村は畑が戦で使い物にならなくなっちまってね近くでとれる小物の動物と自然に生えている野草で何とか食いつないでいるんだよ。」

 ふうんといった様子で辺りを見回す。確かに村の周りには開墾されたと思われる土地が一面に広がっていた。しかしそこに作物に見えるようなものは一切なく、村自体に活気がなかった。

「ご病気とかお怪我されてる方はおりますか?じい様から(昔作り方を習った)薬をいくつかもってきています。」

「おやまあ!ちょっとそれじゃあ村長のところへ連れて行ってあげよう。」

 気さくなご婦人はレオの手を引いて村の奥へと案内する。村としては規模は大きく一つの戦があったとしても立て直しが効かない規模ではないように思うが、何かあったのか、知識が不十分なのか戦後の後処理といういものがされず放置されている。

 見たままで言えば、若者の手もそこそこあるように思うが…。そんな思考を走らせているうちに、村長の家の前までやってきた。

「長!旅のお嬢ちゃんが、お話があるってさ。入るよ!」

 ご婦人は家の扉を開けて大きな声で村長に了解を得る。

「家人には聞こえてると思うから中に入ってちょっと待ってな。私は仕事があるから戻るね。」

 にこやかに去っていくご婦人に手を振り、扉の中に入る。ちょうど家人と思しき若い男性が奥から出てきた。

「おや、ほんとに小さいお嬢さんだ。お使いか何かかな?村の子ではないようだけど。」

 物腰は柔らかいが、何か鋭いものを感じる。

「私はレオニード・D・リオンと申します。色々私情は伏せますが、困っていることがあれば手を貸したいと思い村々を回って(行く予定で)います。」

「ん?君は…生きた年月はいくらだね?」

「40まで数えましたが、それ以降は忘れました。」

 笑顔でそう答える彼女にいささかの不穏を感じてか、眉間にしわが寄る。

「そう、身構えないでください皆さんが『魔の森』と称する森で暮らしている小人族というい種族でこの地ではあまりなじみがないようですが

 外界との交流をするために出てきた身です。」

「そうか…。疑うような視線を向けてすまなかった、とりあえず客間で話をしよう。名乗り遅れて申し訳ない俺はダン・ティディという。」

 ストンと腰を下ろしても、レオには足がつかない

「はは。人族規格では少し家具も大きいかもしれないが、落ち着いて話はできそうかな?」

「お気遣いなく!座り心地はとてもいいです。」

 ソファーに張られている別珍の表面を撫でてその品質を確かめながら応答する。

「突然ですが、『異界』というのはご存知ですか?不躾に突拍子もないことを聞いて申し訳ないのですが。」

「『異界』とはまた…。似たような伝承というか、歴史はあるよ。『勇者召喚』というものがあってね、何百年かに1度王国と皇国が各々1名ずつ召喚して国家間の争いを鎮め世界を平定するという話だね。逸話というよりは、巡ってくる現象にちかい。」

「それは、呼ばれる側の世界というのは指定されているのですかね?」

「今残っている文献だと、呼ばれた『勇者』言うものに関しては各々別な世界から来ているようで、文化や技術にも斑があるようだよ。」

 ほおっと口を開けて少し考える。

「では、狙って召喚するというよりは無作為に呼ばれるということですね。」

「そうだな、ある時は軍略に優れたものが現れたり、技術の優れたものが現れたり色々のようだ。」

 無作為ということは、無理やり魔力で次元をこじ開けて人を呼んでは情勢に有益な『使い方』をされているようだ。

「超自然現象として次元を渡ることが稀にあるというのはご存知ですか?」

「話には聞いたことがあるのだが、実際にその人物に会ったことはないな。国の重鎮として召し抱えられたりしているのではないかな?」

 なるほど、”世渡し”という認識がひろく伝わっているわけではないが、現象としては確認されている。しかもこちらから次元をこじ開けることができるが座標の指定などはされず無作為に網にかかった人物を引き入れているようだ。

「さて、こちらからも質問をしてもいいかな?」

「もちろんです。」

「何故そんなことを聞くのかな?」

 村とは言え、さすがというか勘がいい。

「信じるか信じないかはダン殿の自由ですが、私が渡ってきたモノだからです。ここは私の知っている土地に似ているけれど違う土地、ゆえに情報が欲しかったのです。」

「目的はそれだけ?この場で俺に私情を教えたのはなんでだ?」

「いえ、情勢が不安定といういことを小耳にはさんだのでお手伝いできることがあればと思い外界との接触をしはじめました。この地の技術や国のこと他の大陸のことなど私は事情に乏しいので、信用できる人に私を知ってもらって情報収集と私の技術提供をしようかなと。」

「…。」

「先ほどのご婦人に『ご病気やケガの方がいないか?』と尋ねましたらここに案内されました。この屋敷にはあなたを含めて家族が6人はいらっしゃるようにお見受けしますが…。」

 ガタリと音を立てて、ダンの座っていた椅子が後ろに転げた。

「俺の父親だ…不治の病でもう長くはないといわれている。良くも悪くも、家長として家は俺が継いでいて村に関しても村長の権限は俺が持っているが、まだ死ぬのには早い父なのだなのに…。」

「落ち着いてください。お父様に会わせてもらってもよろしいですか?この地は錬金に関しての技術がとても乏しいと聞きました。もしかしたら私の持っている治療薬で治るかもしれません。」

「は…?不治の病だといういのに?そんな…!」

「それはこの地においてですよね?少なくとも”私がいた世界”では治療が不可能な病はありませんでした。適切な薬と適切な処置ができれば拾える命はあると思いますよ。お父様のことがあって、村の復興が遅れているとなればそれを知ったお父様も悲しみますしお怒りになりますよ。

自分より村の人たちの生活を守るのが先だろうと。」

 ダンははっとしてレオを見据える。

 今まで何度も王都から医者を呼んだが、誰一人として病気について回復の糸口は見つけられなかった。誰一人として回復するという言葉は口にしなかった。魔法師も同様だった。

「高名な魔法師にもできなかったことができるのか?」

「回復の領分は魔導術ではなくこの地にはない巴道術式の得意とするところ。私はその巴導術式において高等戦闘職を習得しております。戦場でのけがの治療、病気の治療には知識があり、経験があります。錬金の技術もこの地にあるものとは雲泥の差のある技術も持っているつもりです。

 お手伝いはさせていただけますでしょうか?」

 あくまでも選択肢は相手にゆだねて納得してもらえる条件を出す。それでなければ意味がない。

 無理やり恩を売りに来たわけではない、情報と交換して技術提供。今日は十分に過ぎる情報をもらえた、その対価を受け取るか受け取らないかは相手に選択肢がある。

「わたしは恩を売りに来たわけではないのです。知らない世界の情報をあなたは私に教えてくださった。その等価交換としてお父様を直させてほしいのです。」

 この地に溶け込み人々に受け入れてもらうには相手に選択肢をゆだねる。それを『軍師』はよく知っている。

「わかった…!父を…!たのむ…。」

 力強くも消え入るようなダンの声色を聞いて励ますように笑みを浮かべる。

「はい!手を尽くさせてください!」

次回はちびっこ賢者の家に侵入者(?)現る

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