#1賢者殿の住まいはこだわりいっぱいのマイホームなのです。
使い魔がお使い中なので活動基盤について思考する賢者殿。マイホームを設計するのです。
”世渡し”して残念に思っているのはマイホームにもう帰れないということなのです。何しろこだわりにこだわりぬいて建築、改築、増築をして家具に関しても、最強の魔導石を使った魔導エンジン仕様…とても心苦しい。自作の魔導家具だったので材料自体は把握しているけれど、この世界で同じものが手に入るかは不明。
「ひとまず、採掘スキルで魔導石が手に入るのか調査して…ほかにも色々…」
家を作ると一口でいっても材料が必要になります。組み立てる技術はもちろん、細かい設計や基礎などもしっかり作らなくては…そのためには基礎に使うための漆喰やある程度焼けばレンガや食器が作れるくらい上質な粘土が必要です。
「凡庸探索で鉱物資源を漁ってみましょう。考えていても仕方ないですしね。」
行商目的で家を出たので数日分の食糧は問題ありません。空間鞄の中も売り物と食材がぎっちりですスタックできるだけスタックして家を出た私偉いですね!
「ではでは《凡庸探索:対象:鉱物》…。おお!」
鉱石に関してはほとんど変わりがないようですね。運が良いことに、石灰岩やら琥珀やら、珪岩がこのご近所。魔導石も良質のものが眠っているようです。これだけ鉱物資源が豊富なのに、採掘現場がないということはこの世界は工芸に関しては発展途上ということなのでしょう。
金属に関しても、銅鉱、鉄鉱石、銀鉱石…ミスリル、アダマンタイト!! 以前の世界では結構遠出しないと手に入らなかったものが比較的近距離にあるようです。
「時間もあるし、日のあるうちに地形を等高線にして地形を把握しておきましょう。明日にでもクーが戻ったら採掘して作業始めれるように母屋の設計もしてしまった方がいいですね。」
以前のマイホームもこだわり満載でしたが、貴重な金属が今回は豊富に取れるということなので魔導家具に関しては結構無理をしていいものを作ってみたいですね。そのためにはまず母屋が完成しなくては話になりません。
「トイレはもちろん水洗!風呂!シャワー!キッチン!ふかふかの寝床!」
なぜここまで自作にこだわるのかというと、自分は小人族のため人族の職人さんにお願いすると規格が大きすぎて使いにくいからです。
「工房は絶対必要です。あと、獣の解体につかう小屋ですね。そこには燻製の設備も作りましょう。薬を作る薬草を育てるための温室も絶対必要になりますから、ガラスが大量に必要ですね…。」
小人族というのは見た目は人族の4~6歳児程度で成長が止まり、寿命は短くて300年という長寿命な人種でございます。寿命が長いということは魂の質が高いということですが、その分魔力容量が小さくなります。
小人族が独自に発展していったのが巴導術式という巴を根底とした術式学です。巴とは魂のことで、錬金術で作られた本に自分の魂の依り代を作りそれを使って妖精と契約し使い魔として使役する術のことです。契約した妖精によって用途が変わりますが、私の”ケット・シー”、”クー・シー”は各々戦闘もこなし、製作や生活、移動に関してまで幅広く手を貸してくれる頼れる知能のとても高い優秀な妖精です。
私の種族は4~6歳頃までハイエルフの子供とほとんど変わらないため、”精霊の忌子”(エルフの出来損ない)と言われハイエルフからは虐げられています。ハイエルフたちは長寿命ではありますが長くても200年、その代わり魔導術式という自分の体内の魔力を自然界の精霊の力に変換して行使することに長けています。魔導術が使えない私たち小人族はそういった意味でも”精霊の忌子”なのでしょうね。
魔導術式は主に地、水、風、火、雷、氷の精霊の力を行使します。
術式の発動に関しては魔導石という便利な石を使った魔導具があれば私たちでも発動可能です。長い年月をかけて自然界にある精霊の力が結晶化したと言われています。それが魔導石です。その石をさらに応用し魔導家具が作られました。この技術を芯まで研究しつくしたのがわたしであり小人族の技術なので”精霊の忌子”と言われても違和感しか感じません。形は違えど、もたらされる恩恵は同じなのです。
鼻歌を歌いながらも、手はきちんと動かしますよ。チェストから取り出した画板の上で詳細な地形図を作っていきます。ひとまずそれが落ち着いたら、家の設計図ですね、職人魂がうずきます。
「手に入る金属がけた違いに良いので、かなりいい家具が作れそうです。わくわくしますねー!」
この森の土壌を少し掘り起こしてみましたが、粘土の材質も相当良さそうです。
「簡易竈を先に作っておいたほうが良さそうですね。浄化水槽に使う木炭製作やら外壁のレンガも作れますし。」
家の図面を引くなんて久々で、思い切り目新しい設計にしてみたいです!
「水回りは基本1階部分に集中させましょう。排水の浄水槽の配管を埋めるのが面倒ですのでねー。」
独り言です。完全にはたから見たら変な人ですよね、気にしないのが心情です。まあ、周りに人の気配もモンスターの気配もなにもないのですが。
「必要なのは、客室、寝室、リビングダイニング、バスルーム、そして…こだわりの究極キッチン!」
家具の道具は母屋の設計と面積の計算が終わってから考えましょう。
「火を使うのは1階で冬場は暖炉の温風が床下と天井から全館に行くよう設計しておけば、1階の火だけで省エネですね。」
木材だって無限ではありません。不完全燃焼なんてしたらそれこそ面倒ですので、母屋の暖房に関しては一か所が理想的です。
「ひとまず母屋はこれで間違いないとおもいます!配管は腐敗や劣化が怖いので贅沢にミスリル使いましょう!」
さて、設計図もびっしり書き終わりました。夢が満載の贅沢マイホームです。作るのが自分なのでいくらでも我儘できますね!ケットとシーが戻るのは明日になるとおもうので近場の粘土層で粘土を取ってきて簡易竈を作ってしまいましょう。近場にある魔導石も集めて、自然に生えているもので食べれるもの薬草なんかもついでに凡庸探索のスキルで探して食糧確保ですね。
「私の足で探索できる範囲の鉱物と魔導石、植物に関してはチェストに全部入れました。」
とってきた粘土で簡易竈を作ったら、竈の内部に陣を描いて風の魔導石と火の魔導石を置いて明日まで乾燥させましょう。
「さてさて!マイホームも家具も完璧!明日からの作業が楽しみです。」
今日の私の仕事はこれまでですね。明日からがとても楽しみでなりません。私たち小人族は長寿命、悠久に等しいその時間を工芸に採集に使うことは死ぬまでの暇つぶしかもしれません。誰もが見たことのない素晴らしい作品を作り出すのがわたしの夢なのです。
「そのためにはまず、足元から固めねばなりませんから。情報とマイホームはこだわらねばなのです…。」
チェストの中の食事と寝袋で夜を明かして、明日に備えましょう…。
次回、賢者殿、人に遭遇。




