気持ち
~遡ること30分前~
俺は、目が覚めて病室にいることに気がついた。そして背中に痛みが走り何があったのかを思い出した。
「…はぁ。まさか、刺されるとはな…。美姫ちゃんに怒られるだろうな。」
…ん?今…俺なんていった?親のことよりさきに美姫ちゃんに怒られる?それじゃまるで俺が意識してるみたいだ。俺の中の黒い感情が表に出てくる。
(どうせ、あいつも裏切るよ。都合のいいように利用したりするためだけに俺に近づいたんだろ。)
はぁ…やっぱりいつもこいつがいうことは同じだ。俺は心の底ではもしかしたらもう誰も信用なんてできないかもしれない。考えがまとまらない。外の空気を吸いたい…。ただその一心で俺は、治療器具を外し…点滴のついたポールとジャケットからあるものをもち外へと向かう。後ろがなにか騒がしくなってしまっているが俺の耳には入らなかった。そうだどうせなら空が近くで見える屋上がいい。傷口は痛み出しているがそんなことどうでもいいくらい俺は外へと出たかった。搬送されたときにジャケットも持ってこられていたためポケットに入れたまま忘れていたあるものを片手にようやく俺は屋上へついた。そこにはなぜか泣き崩れている美姫ちゃんがいた。俺は、それをみてなぜだか無償にあの子の涙を止めたいと思った。この気持ちって…なんだっけ。
~現在~
「どうしたの?そんなに泣いて。せっかく可愛いのに勿体ないよ。」
俺はわざととぼけるようにいう。美姫ちゃんはなぜかはわからないが俺の方をみてハッとしている。
「…え?は、春樹さん?…春樹さん…春樹さん!!」
すぐさま我にかえり涙を拭き俺に抱きついてきた。背中にまわされた手が離さないと主張するかの用に強張っている。前に感じた温もりと同じだった。背中にまわされたてのあたりから激痛が走ってあぁ…俺生きてるんだなとどうしようもないことから実感してしまう。。どうも刺されてから調子がおかしい。だがそれよりさきに俺はここへと来た目的を果たす。
「ちょっと…痛い!あとそれよりさきにやりたいことあるから少し離れててもらえるかな?あと…これからみることは他言無用で!」
「え?なに…するつもりなんですか?」
呆気にとられている美姫ちゃんをはた目に俺は、あるものを取り出す。それは、数ヵ月前にやめたはずだった、煙草だった。ベンチに座りおもむろに箱から取り出しお気に入りのジッポで火をつける。相変わらず美味しいと思ってしまうのはなんでかはわからない。それをみた美姫ちゃんは
「な、何してるんですか!?ここ禁煙ですよ!?それに煙草吸ってたんですか!?というか怪我!!」
「ゴメンゴメン。禁煙なのはわかるけどこれ一本だから見逃して。誰も来ないしさ。やめたはずだったんだけと急に吸いたくなってね。二人だけの秘密だよ?」
煙草をふかしながら空を見上げる。今日も星は綺麗だ。そんなことを考えていると美姫ちゃんは横へと座る。
「…もう…一本だけですからね?あとそれが終わったらすぐ病室帰りますよ?いなくなってて心配したんですから!!」
「あはは…ゴメン。ちょっとぼんやりしてたから何をしでかしたかはわからないけどたぶんそんだけ焦ってるのをみると俺は誰にも言わず出てきたんだな。」
苦笑しながら目をみて言ってるとだんだん可笑しくなってきて二人して笑ってしまう。楽しいと思ってしまう。こんなときなのに、こんな体なのに思ってしまう。俺なんかがこんなに楽しい時間を過ごせてしまっていいのだろうかと考えてるとぽつりと美姫は言葉をこぼす。
「…会えなくなるんじゃないかって考えちゃったんですからね…。ここまで気になるようにしちゃったんですから責任とってくださいよ…。」
「そんな大袈裟な。それにあんまり思わせ振りなことは言わない方がいいよ。」
こぼれた言葉を聞いた俺は驚いたけど難なく返すことができた。冗談でいってるだけそう感じていた。でも美姫は違った。ふて腐れたような顔をしてすぐに立ち直り真剣な面持ちである言葉を…紡いだ。
「思わせ振りなんかじゃないです…。私…春樹さんのことが好きなんですよ!!これが私の本心です。今回のことでよくわかりました。春樹さんが辛かったら私も辛いし、辛いときは甘えさせてあげます。いっぱい慰めてあげます。笑ってるときは一緒に笑ってあげます。もう一度…いいます。私は…春樹さん…あなたが大好きです!」
走り出した気持ちはもう止まらない…止まれない。