走れ
俺は今走っている。ただひとつのことを考え息を切らし、病み上がりの体にムチをうってはしっている。その理由は…
(メッセージ受信 みどり)
たすけて
ただこれだけが綴られた無機質な文字盤。海斗にはそれを悟られないように俺は走っている。俺があいつを助けるなんて馬鹿げてる。そんな風に海斗が笑っているような気もしたが俺には関係がなかった。あいつが俺を頼るときはいつもギリギリだ。だから嫌な予感しかしていない。
「…って、たすけてという文字だけで俺はなんでこんなに焦ってんだよ…。ちくしょ。」
悪態をつきながらも俺は速度をあげていく。本来なら…あいつがいるところなんて知るよしもない。だが…直感ではあるが…あの場所に…俺を裏切ったあの場所にいるような気がするんだ。もしそこにいるのなら助ける。そこにいなければ杞憂だとして俺は助けるつもりはない。先日見た…あいつの体についていた傷跡が俺を苛立たせる。焦らせる。走り続けているせいでもあると思うが動悸もおさまるところをしらない。また倒れることになるかもしれない…それでも俺は行かなければならなかった。
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私は今あの場所に呼ばれていた。かつて…大好きな人を裏切りその人を狂わせた場所。もう行くことはないだろうと思っていたけどそこに呼ばれてしまったのだから仕方ないよね。私がその場所につくとあの人は…とても不機嫌そうにそこで待っていた。
「…よう。遅かったね。どうせあの男のところによってたんだろうけどね。おかしいな…。なんで僕を頼ってくれないんだろ。死にたくなってきた。」
口ではそういってはいるが明らかにこちらのやったことにきれている。
事態はとんでもない方に転がっていこうとしていたのであった。