スモーキング
特になし、只の思いつきであります。
煙草、それはヒトを惑わせてやまない異物。
それは時にヒトを狂わせ歪ませる・・・と。
私は喫煙室で煙草を灰皿に押し付けながらスマホにそう打った。
私は町の片隅で小さな煙草屋を営んでいたものだが、それは既に過去の話。今は只の職無しの老害さ。
苦い思い出を思いだし、ケースから一本出して、火を付ける。
灰色の煙がくねり立ち、慣れた刺激臭を放つ。
それを口に運び、煙を吸い込む。
フゥーッ・・・。薄くなった煙が口から放たれる。
・・・私の店は、妻が居なくなってからどんどんと売上が落ち、やがて客がほとんど居なくなり、店はなくなってしまった。
(惜しい女をなくしたよ・・。自慢の妻だったのになぁ、もう一度会いてぇもんだ)
私は再び煙を肺に吸入させた。酷く心地の悪い快感が頭を侵食する。
職柄これとは切っても切り離せんが、何度吸ってもこの感覚だけは、ダメだ。
蝦蟇のように口を開け、煙を気に逃してやる。
立ち上って行く煙の色が目に染みるなあ、今日は。
ブルルる・・手にした端末が振動をする。
画面を見ると、無機質な文字がディスプレーに写っている。
メール 1通 題名 今度の日曜
ロックを開け、メールを見る。
・・・どうやら旧友からの物らしい。
“今度の日曜 時間があったら 私の家に来てくれ
煙草の品定めをして欲しいからね 待ってるよ”
返信として了解、と打つ。
やっと予定が入った、暇だったんだ。
私は二本目の煙草を消し、ポケットに仕舞って外へ出た。
ドアを開けるとゆらりと煙が揺れ、外に出ようとする。
(お前さんたちはここにいるんだ、外に出ちゃあいけないよ。)
念じてドアを閉めた。
さて、行こうか。
湿った靴を鳴らしながら私は歩み始めた
如何でしたでしょうか?
私めは煙草を吸いませんが、あの。
ゆらりゆぅらりと揺れる煙は良いと思いますね。
では、また何処かで