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2時限目:28歳にして学園1年生になる

なんとも懐かしい長方形の教室のなかには8人の10代の顔。

男性でも女性でもない、少年と少女の群れ。

机越しに、彼ら彼女らは興味津々で僕を見ている。


カッカッと黒板に走らせていたチョークの音がとまった。


「みなさんに新入生を紹介します!」


「徳永衛です。よろしくお願いします」


板書された僕の名前を背後に、サラリーマン時代に培った礼を披露する。


「おっさんじゃん」


坊主頭の少年が聞えよがしに呟く。

カチンとくるが…反論はできない。まぁ、12、13の君らからしたら、完璧におっさんですわな。


「だよな」「どーいうことだよ」


ざわめくなかを、如何にも委員長然とした眼鏡少女が挙手した。


「先生! 質問があります。徳永さんはお幾つなんですか?」


「えーと…」と女先生が僕を見る。


先生さんよ、僕の経歴ぐらい事前に報せが来てるはずだろ?


頼りないなぁ、と思いながら、僕は年齢を言った。


「28歳です」


教室がどよめいた。


「理絵ちゃん先生より、年上じゃんか」


僕は横目で先生を見た。体育教師らしく野暮ったいジャージを着込んでいる理絵ちゃん先生は、23か24ぐらいだろうな。


つーか、うるさい。

私語も8人分となれば、なかなかの音量だ。しかも声が若いから、余計に耳にくる。


「みんな、静かに!」


さっきの眼鏡少女が立ち上がって、クラスメイトを鎮める。


「先生、おかしくないですか? 浮島が出現した20年より前に生まれた人で神業が使える人はいないと授業で習いましたけど」


確かに変だよな。と三度教室がざわめく。


僕も変だと思ってるよ。


パンパン! と理絵ちゃん先生が手を叩いて私語を鎮めた。


「確かにおかしいですが、それは偉い学者先生が調べてくれています」


言った理絵ちゃん先生が、僕を見る。


ん? 僕が視線で「何ですか?」と問いかけると


「趣味とか言ったほうがいいんじゃないですか?」


自己紹介だもんな。合コンの乗りでいいのだろうか?


「え~、趣味は料理です。1人暮らしが長いですから」


「徳永さん、結婚してないんですか?」


おっさんじゃん、とのたまってくれた少年が訊く。


「つい1週間前に彼女に振られました」


僕が腕で涙を拭く真似をすると、ガキンチョ達が大笑いする。


「ですから、理絵ちゃん先生! 僕と付き合ってください!」


片膝をついて、諸手をささげる。


ガキンチョどもは大興奮だ。


さて、理絵ちゃん先生のお返事はといえば


「ごめんなさい」


「ですよね~」


と僕は半分の年齢でしかないクラスメイトどもに向き直って肩をすくめてみせた。


理絵ちゃん先生、なかなか分かっているじゃないか。


大興奮の大笑いだ。


ま、取っ掛かりはこんなもんでいいだろう。


僕は理絵ちゃん先生に指示されて、窓際の最後列という最高の席についた。

現役の学生時代にはついぞ縁のなかった席だ。しょうじき、ちょっと嬉しかったりする。


ちらちら、少年少女が僕を盗み見る。


なんか父兄参観にでも来たみたいだ。


チラ見するポニーテールの女の子に軽く微笑んで見せれば「やだー」なんて黄色い声を上げて隣の少女とキャッキャウフフしてる。

こらこら、そこの男子。睨むなよ。別に君の恋人だか好きな子だかにモーションかけたわけじゃないから。


それにしても、10代ってテンションが高い。


僕も昔はこんなだったのかな?

でも、姉ちゃんには地味男って言われてたし…。


そんなことを疑問に思いながら、僕はどーしてこうなったと頭を抱えたい気持ちだった。

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