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第二の人生は面倒です


 あれからというもの、母上様はオレに愛情を注ぐようになった。

 それはオレにとっては幸せな事なのだろう。


 …けど、あれだね。母親だと自覚したらしたで面倒臭い。


 しかも本当に可愛がるだけで、躾も何も使用人任せだ。言うなれば人形やペットを可愛がる感覚に近い。


 オレも兄貴もまだ小さいからこれでいいんだろうが、大きくなってからでもこうだと、どうしようもないダメ人間になるぞ?

 もしやと思うが、兄貴が甘ったれの泣き虫坊主になったりしたらオレが教育しよう。


 あと、母上様はオレの部屋の様子を見てオレに容姿に対してのコンプレックスがあると勘違いしているようだ。

 だが、そんなことはない。


 親父や母上様の写真や肖像画を伏せて置いていたのは、眺めても気分のいい物じゃなかったから。


 兄貴と映っている写真は飾っていたのは、そうしないと部屋に来た兄貴が泣きそうな顔をするから。


 自分の肖像画をまとめて置いておいたのは、自分の絵を飾るとかナルシストじみていてゾッとしなかったからだ。


 とはいえ、そう勘違いされてもいくらか仕方ないと思う。


 父親は銀髪青目、母親が金髪緑目、兄が金髪青目とキラキラしい中、オレは茶髪黒目だ。


 元日本人のオレとしてはこの位が丁度いいんだがな。


 母親は貞淑な女性との評判で浮気して出来た子供とも思われないし、問題は無い。

 …それに、つい先日オレが父親の子供とはっきり認定されたしな。

 今まで疑ってたのかよ、とかはもう突っ込まない。


 魔力検査の時にわかったんだが、オレは魔法を使うと髪と目の色が変わる。


 魔力を体に漲らせると、黒に近い灰色の髪に、青より深い瑠璃色の瞳になる。


 瑠璃色の瞳は父方では数代に一度生まれるらしい。

 だから父方の血を引いている、というわけ。


 …ちなみにオレ以外に魔法を使って変身する奴はいない。

 神さん曰く「ちゅうにびょう心をくすぐるじゃろ?」だそうだが、微妙だ。

 変身するならいっそ(ドラゴン)に……いや、やめとこう。「わかった」ですんなりされても困る。



 そんなこんなでここ最近は色々とごたついていたんだが、やっと平穏を取り戻した。


 その矢先の事だった。



 昼下がりにおやつの前に兄貴と庭で遊んでいると、母上様がやって来た。

 それ自体は最近はそう珍しい事ではない。

 ただ、母上様は手紙を手にして戸惑ったような顔をしていた。


 母親大好きな兄貴がトタトタと駆け寄って「母様どうしたの?」と聞いても曖昧に首を傾げる。

 パンパンとズボンの土を払って歩み寄ると、母上様の目はオレに向けられた。


 かつての冷たく、寄せ付けないような目と違い心底オレを心配しているような目だ。


 一体何があったと母上様の手にある手紙を見ると納得した。


 その手紙はオレに宛てた手紙で、送り主は王城だった。

 そんな大層な手紙が送られる理由は一つしかない。


 オレは先日の魔力検査の時に、神官の爺さんからけったいな予言の該当者に違いないと認定されてしまった。


 …ああ。そういや両親には黙っててくれって頼んだけど、国王には黙っててとは頼んで無いわ…


 本っ当あの爺さんウチの神さんと同じだな!!良かれと思って色々と手回ししてる!!

 いや、嬉しいんだよ?実際それで助けられたこともあるし。

 ただ、オレの人生変えかねないことは事前に打診して欲しかったなぁ!!


 ってか爺さん!!あれから毎日茶ぁ飲みに言ってんだから、その時に打診してくれよ!!


 そんなこんなを脳内で声高に叫ぶと、いくらか落ち着いてきた。


 うん。こうして送られてきたってことはもう断れる段階じゃない。こうなったら肚括って行くしかない。


 そう思いオレは母上様を見上げる。


「わかりました。王城へはどなたがお連れ下さるのでしょうか」

 まさか兄貴が連れてく訳ないよな。

 オレが落ち着いて見せたことで冷静になれたのか、母上様は首を振る。

「いいえ。お祖父様にお連れいただきます」

「……お祖父様……。ですが、お祖父様はここ数年寝付かれたままでは?」


 親父の父は往年は遣り手の政治家だったそうだが、数年前に倒れてからは寝たきりだ。


 だから祖父さんの肩書を借りて親父にでも連れて行ってもらうのか?と思ってると、思ってもみない相手を上げられた。


「いいえ。母様のお父様です」


「……え……」


 ウチは伯爵家。そして母上様の生家は公爵家だ。

 どう考えたって身分が釣り合っていない。


 舞踏会で出会って恋に落ちた二人は周囲の反対を押し切り結婚し、その時に母上様は母方の祖父さんからは勘当されていたはずだ。

 だからオレ達も祖父さんに会ったことが無い。


 え?初めて会う祖父さんに連れてかれる先が、未知で警戒してもし足りない王城?

 それどんなムリゲ?


 ………これは突然の腹痛か何かになるしかないかな……


 そう後ろ向きな考えをしていると、母上様はまさかの退路を断ってきた。


「…今日よりお祖父様の家に預かってもらい、王城でのマナーを教えていただくことにしました」


 母上様ぁ!!アンタも余計な手回しするんかいぃ!!


 本当勘弁してくれよ!!どんどんハードルが上がって来るよ!!



 とはいえ悲しいかな。こっちはまだ三歳児。親や周囲の意向に振り回される年頃。


 オレはその翌日に身の回りの品を持たされて母方の家に送られた。


 ドナドナド~ナ~ド~ナ~


 …本当、もう。勘弁してくれよ色々…




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