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第二の人生でもわからない



 旅から帰って来ると妹が生まれていた。


 グーテンベルク家待望の長女の名はクリスティーネ・ヘンリエッテ・グーテンベルク。


 まだ落ち着かないからと引き合わせてもらえないが、会える日が楽しみだ。


 出産が終わったことでお役御免になったダニエラはオレと共にオレの部屋へ行く。


 そうして始めたのはダニエラへのお土産お披露目だ。


 オレは嬉々としたのつもりで品を並べていく。


 オレがダニエラに選んだのはハーロルト王国の特産品である淡い薄桃色の天然石で作った砥石。


 ダニエラのナイフ研ぎにと思った物だ。

 もちろんオレの魔法を付与していて、刃に薬品(毒薬でも痺れ薬でも何でもござれ)を塗っても錆びたり曇ったりしないよう、血糊や脂が付いても切れ味が落ちないようにしてある。


 本当はそういう品物としては売っていなかったんだが、ダニエラの使うナイフの材質に合っていたんで手を加えて砥石にした。


 ふふん。こう見えても前世じゃ居合道をしていたし、自分の刀の手入れも自分でしていた。

 だから用途に合わせて数種類揃えてあるぜ。


 しかし、オレの用意した砥石を見てダニエラは顔を両手で覆った。


 ど、どうしたんだ?一目してわかる程粗悪品だったか?やっぱり今世(こっち)じゃ刃物は扱っていないから勘が鈍ったか。

 もしくは主人(オレ)の与えた物とあっては使わないわけにいかないが、思い入れのある愛用の品があったか?


「ダ、ダニエラ。別に今までのを使ってもいいんだぞ?」

 狼狽えてそうフォローすると、ダニエラは震える声で訴える。


 …あれ…何か泣いてる?いや、泣いてないんだろうけど、〝さめざめと泣く〟という表現が似合うような声音と声の震え具合だ。


「…アレク様…私を一体どのように思われておいでなのですか…」


「え?そりゃつ…」


 「強くて頼れるソルジャーメイド」と言いかけると、頭の中に声が響く。 神様ではなく、ニーナの声だ。


『待ちなさい。それを言ったら泣くわよ。

 〝優しくて、オレが一番信頼しているメイド〟とでも言っておきなさい』


 よくわからないが、ここは女性の意見を聞くとしよう。


 オレが言われた通り言うと、ダニエラは顔を上げ、「光栄の至り」と礼をする。


 けど何か、必死にそう言い聞かせて自分を保っているように見える。


 こうなると良く分からないが失敗したらしいとわかり、叔父貴達に言われて買ってきた無難な女性への土産を渡すといたく喜んだ。


 ありがとう叔父貴。流石モテる男は違うね。


 本人はそう言ってないが、爽やかで快活、かつ美男子な叔父貴はさぞかしモテることだろう。


 土産とは別に買ってきた自分用のお菓子とお茶を渡すと、ダニエラはお茶の準備をしてくれた。

 いつもはしないが、土産と言うことで一緒に楽しんだ。


 オレが買って来たのは『シュナフ』というクッキーみたいなケーキみたいな不思議なお菓子と、『グッケル』という特産品のマンゴーのジャムを固めてカステラ生地に包んで砂糖衣でコーティングした、前世のお土産でもらった『かもめの玉子』みたいなお菓子だ。


 いや~やっぱり旅行は帰ってから土産の品も楽しんでこそ、だよな


 旅行帰りのテンションの高さで目が冴えて仕方なかったが、そこは三歳児。

 いかに帰りはニーナのおかげで道中何事も無くサクッと帰れたとはいえ、疲れがたまってか堪らなく眠くなった。


 食べかけのグッケルを手にコックリコックリ舟を漕ぎ始めたオレを抱きかかえ、ダニエラはベッドに運んだ。


「…ご希望ならお土産話は明日聞きますので、どうかお休みください」

「うん。そうする」


 そう言い残すとオレは眠りについた。


 いやぁ。楽しかった。また冬にでも行きたいな。




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