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第二の人生も楽しみましょう



 目を覚まし、身を起こすと大きく伸びをする。


 …あー。やけに眠い。やっぱしこの体って疲れやすいなぁ…


 何か夢を見ていた気がするが思い出せん。思い出そうとすればする程、手の中から水が零れ落ちるように取り逃がしていく。


 …諦めるしかないか…


 頭を掻いてそう結論付けると、ふと兄貴と視線が合った。

 いっそ青ざめたように見える位顔を強張らせてる。


 どうした?


「ああ。起きたの?」


 その言葉に現実に引き戻された。


 あ。そうだオレ…


 固まっていると、背後から抱きすくめられた。


「ふふふ。捕まえた」


「………キャッチアンドリリースですよ」


「いいえ。捕えた得物を逃がすなど、馬鹿のすることよ」


 オレの耳元で女神様が囁く。


「私の事はニーナと呼びなさい」


 …オイオイ…ナターリエ(ほんみょう)の要素が欠片も無いぞ。


 どうして人生初の添い寝という、前世でもついぞ体験しなかったシチュエーションを経て不穏でしかないんだよ。もう少しときめかせてくれよ。


 だが浮かれていられる状況でもないんで、慎重に切り込む。

「……そう呼んだら、どうなる?」

 女神様は口元に蠱惑的な笑みを浮かべる。


「私の寵愛を与えましょう」


 …それ、最強クラスの神様からの守護じゃないか。ウチの一族への神様からの過保護も多分それにあたる


 …こういう好意は下手に断ると厄介だ


 オレは頭を掻き、やれやれとため息をつく。

「わかった。オレは何を捧げればいい」


「あの(もの)に対するのと同じだけの敬愛を」


 …オレ個人どころか一族血族、それどころか伴侶まで数代に亘って守って来た神様に対するものと同じだけの、ねぇ…


「…随分と安く見積もられたもんだな」


 思わず目が据わり、眉根を寄せてしまったが、相変わらず女神様は微笑んでいる。


「あの(もの)は貴方の血筋を愛した。

 でも私は貴方自身を愛す。

 釣り合うか否かは判断に任せるわ」


 ある血筋への肩入れと、ある一個人への肩入れね。

 どっちが上とか考え出すとキリが無い。


 オレは息を吐き、先程までの剣呑さを引っ込めて片目ですがめるに留める。

「…ところで、これから先私に好ましく思う神が出来ても、人の娘に惹かれても許しますか?」


 前世でも「神様大好き」と言いながらもオレは他の神様とも仲良くなった。

 一番好きだったのは八幡神。

 あの神様ザ・軍神って感じで格好いいんだよね。


 不敬とも不実とも取れるオレの言葉を聞いた女神様は満面の笑みだ。


「構わないわ。それが貴方達の気質らしいから」


 そうだね。日本人はいいとこ取りの民族だ。

 和洋折衷とかその最たるものだ。


 うん。それならオレには何ら異論はない。


「これから頼みます。ニーナ様」

「様は要らないわ。ニーナで」

「そうはいきませんね。……周りの神官(かたがた)も同じ意見の様ですよ?」


 オレ達の周りではオレにギリギリと歯噛みする神官方が。


 …そりゃぁね。自分達が崇め奉ってきた神様が子供に、それも他国の人間と親しげにしていたらそりゃ面白くないわな。


 それからはよその神様に気に入られた時の恒例で、ひたすら頭を下げ、どうかオレについてこの国を出ないように頼み込んだ。

 途中からニーナの気の無さに神官達も一緒になって必死に頼み込み、どうにかこの地に留まってくれることになった。

 オレを見守るついでにこの近辺の国も見守るかと思いきや、オレの事はピンポイントで見守っとくって。


 …アハハ…頼もしいなぁ…


 いい加減兄貴もこの成り行きについていけてなくて意識飛ばしかけてるし、神殿どころか御本尊まで目の当たりにしたんで早々に立ち去ることにした。


 正直、このままいると何かこの国に有利な協定取り結ぶのに利用されそうだし、何よりお土産買ってない。

 母上様達はどうせそう喜ばないだろうけど、一応念のため持って帰った方がいいだろう。

 ぞんざいな扱いされると癪なんで、適当に拾った貝殻とか花とかで手を打とうか。


 オレが力を入れるのはダニエラと祖父さんとグスタフ爺だ。それに、生まれてくる予定の妹に買うってのもいいな。


 生まれる前に性別が分かるはずも無いけど、オレはスキャン(やってみたらエコーみたいな使い方が出来た)で妹と知っている。


 オレは固まっている兄貴を引き摺り、叔父貴を急かして土産屋に向かった。


 グスタフ爺はお茶とお菓子で、祖父さんは何か珍しい剣で。

 ダニエラと妹はどうしよ~かな~


 オレは修学旅行のノリでお土産を選んでいった。


 やっぱり感謝と身近さで一番力を入れたのはダニエラなんだが、オレの土産を見て兄貴は「…え…」という顔をしていた。

 叔父貴はただ笑っていた。


 良く分からんが、「それもいいけど、一応別のも用意しとけ」と強く勧められ、無難な装飾品(メイド服のカフスボタン)と美容品(温泉の入浴剤とか洗顔料)も買っておいた。


 お土産も買ったし、さぁ、帰ろうか我が家に。



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